52 三十四階層へ
いつも通り魔法を放ってから俺はマッスルエイプに肉薄し斧を振り回す。
モモは魔法を撃つとすぐさまキングエイプの方へ行き頭上に魔法を撃つ。
チラッと見えたユキが少し寂しそうなのは気のせいだろうか。まあヒヨコの表情なんてわからないが。なんとなくそんな雰囲気がした。
「モモ!こっちは倒したから下がってくれ!そいつとは一対一でやりたい」
「わかりましたー!頑張ってくださーい!」
モモはすぐさま離れ、ユキがいるとこまで行く。
さてと。以前は逃げ回って、急所を攻撃しまくってやっと倒せたが…今はあんまり脅威に感じない。
吠えるキングエイプに近づき斧を振るう。
「ギャァア!」
「あの時はレベル1で今じゃ87だからな…。そりゃ一対一なら苦戦はしないか」
キングエイプは腕を切られ叫び、片手でを振り回しながら近づいてくる。振り回している腕もはっきりと視認出来ているし、その速度に身体もついていける。斧を振り上げもう片方も切り落としその勢いを殺さず、首目掛け斧を振る。
「圧勝、だな」
「お疲れ様でした!」
「やっぱり強いわね。お疲れ様」
「ああ。レベル1でもなんとか勝ったんだ。今苦戦することはないと思ったが思ったよりあっさり倒せたな」
というか斧が手に馴染む。最後、自分でもわかるくらいそれまでとは違い流れるように斧を振れた。
ステータスを見ると【斧術】のレベルが上がっていた。一つ上がるだけで違いがわかるもんなんだな。
「ドロップは【怪力】でしたよー」
「んー…一応拾っていくか。さてキングエイプとも戦えたし、もうこの階層に用はないしとっとと移動しようか」
「はい!」
「ええ」
その後は飛行しながらマッスルエイプとたまに出るキングエイプを倒し、モモと一緒に水を撒きながらビックファイヤーフライを倒していく。
「やっと見つかった。時間かかったな…」
スキルペーパーも他のドロップも特に目新しいものはなかったし、ホタルを水を掛けて落とすのも飽きてきたしで、本当階段が見つかってよかった。
「それは仕方ないわよ。二十九階層までよりも階層の面積が増えているもの。だいたい二倍くらいの広さになっているわよ」
「は、初耳です!」
モモが知らない事が多いのか、モモとユキで与えられている知識が違うのか。後者ならユキが知らないことをモモが知っている、ということになるが…どうなんだろうか?
「とりあえず行こう。んで階段内で少し休憩するか」
階段を降りていき、次の階層に入る手前で座って休む。
そこまで眠くはないんだが、腹減った。再生のおかげで餓死はしないのだろうが…空腹を感じるということは飢餓感は感じるんだよな?それは嫌だな…。
「大地さんどうしました?寝なくて大丈夫です?」
「ああ。眠くはないんだが…空腹がな」
「そういえば…全然食べてませんね。時間的には丸二日ほど。というか寝てもいませんし」
「え!?だ、大丈夫なの!?流石に再生持ちでもそれは無理なんじゃ…」
「肉体的には死ぬことはないでしょうけど…普通なら精神状態がおかしくなりますね」
「そ、そうよね?大丈夫なの?発狂したりしないのかしら?」
「しないわ。どうしようもなく飢餓感を感じたらそこらへんの魔物にでも齧り付くわ」
「確かに消える前の魔物なら実体がありますし、食べることはできますが…魔物の踊り食いですか…流石ですね!」
こいつは人のことをなんだと思っているんだ?何が流石なのかもわからんわ。
「別にそこまでじゃない。ただまあさっさとダンジョン攻略してちゃんと調理された肉とか魚を食いたい」
「地上ですね!私も地上に出るのは楽しみです!美味しいお菓子とか食べてみたいです!」
「地上ね…」
「どうした?」
「私には地上の知識がないのよね。地上の生き物、人間やヒヨコとかの動物の知識はあるのだけれど、文化とかそう言ったものはないのよ。知っているのはここが日本ってくらいかしら?」
「そうなのか?なら見てのお楽しみだな」
「ええ。楽しみにしておくわ」
「見てのお楽しみなら私もあまり詳しく話さない方がいいですね!」
モモは知っているがユキは知らないのか。やっぱり与えられる知識が違うんだな。それぞれに専門分野があるのかね。
「そういえば、ユキは【種】ってスキルは知っているか?」
「固有スキルのよね?私も気になっていたの。それを聞いてくるってことは大地もモモちゃんも知らないのね?」
「ああ。ユキもわからないのか」
「ごめんなさいね…。私もそれは知らないわ」
「本当なんだろうな。じゃあもう一つ。ここまで迷宮妖精にはモモとユキ、後は俺が見てないもう一体。三体しか見ていないが…少なくないか?」
「基本的に迷宮の浅いところで生まれるみたいですよ?ですので十階層あたりまでなら結構いるんじゃないですかね?」
「それもあるけど、まだ迷宮ができて数日しか経ってないからってのもあるわよ。迷宮も一気にそんなたくさんの妖精を生み出さないんじゃないかしら?」
「そうなのか。ならこの先妖精に会うことはほとんどないってことか」
「まあ少なくはなるでしょうけど一体もいない、なんてことはないと思うわよ?私達みたいに下の方で生まれる個体もいるし」
「なんですか大地さん。私達だけじゃあ不満なんです?」
「そんなことはないが、他の属性の妖精とも契約出来れば強くなれるだろ?」
「まあそうですが…」
ヒヨコ以外の妖精を見たいし…。こいつら見た目は普通のヒヨコと大差ないしな…。白いヒヨコだっているし。それよりもヒヨコサイズの犬とか、空中を泳ぐ魚とか見てみたいじゃないか。こんなこと言ったらモモがうるさいから言わないけどな。
「大地何か失礼なこと考えてない?」
「なんも?さて、寝れそうにないし休憩終わりだ。とっとと移動しよう」
「了解です!パパッと行きましょう!四十階層以降なら食べ物をドロップする相手もいるでしょうし!その前に木の実があるエリアがあるといいですね!」
「あれ甘すぎんだよ…」
「まあ次は石壁の迷宮みたいだけどね」
「ああ」
まあ三十四階層の様相はもう見えるからな。階段がすぐに見つかればいいんだが…。まあユキが一定範囲なら探知?感知か。感知できるから前よりは多少は階段も見つけやすいだろう。
次はモモ視点での話を載せる予定です。




