42 二度目の宝箱
ドロップアイテムである宝箱を開ける。中には……。
「これって…ジャケットか?赤茶だし…ミノタウロスの皮のジャケット?」
「ですね!」
ミノタウロスのジャケットか…。なんか複雑だ。あの喋るミノタウロスの皮なのだろうか…?いや、倒したら消えるんだから違うよな?ダンジョンが作ったアイテムってことだよな?
なんかモヤモヤとするが、ジャケットを広げてみると胸ポケットもあるし、左右にもポケットがある。今来ているキングエイプの時にドロップした毛皮の半纏と見比べる。
「ミノタウロスのジャケットの方が防御力が高い、か?」
「まあそりゃあ三十階層のボスですし、二十階層のボスのドロップ品よりはかなり優れていると思いますよ」
独り言のつもりだったがモモからお墨付きを貰った。
まあ普通に考えればそうか。でも意外と柔らかいんだよな。金具も特にないし、皮だけで作られているのか…。
新品の革製品ってガチガチってイメージなんだが…。まあ防御力が無くとも、見た目的にも、ポケットもあるし、意外と柔らかいので着やすそうだし毛皮の半纏よりは色々と優れているな。劣っているのは防寒に関してだけかね?
俺は毛皮の半纏を脱ぎ、赤茶のジャケットを着る。うん、こっちの方が動きやすそうだな。半纏は丈が長いから少し動きにくかったといえば動きにくかった。
「この半纏はここでお別れだな。敵からの攻撃をどれくらい軽減してくれていたのかはわからないが世話になったな」
「それなりに軽減していたと思いますよ?まあ切れている部分もありますし替え時じゃないですか?」
「だな」
赤茶のジャケットを取り出した宝箱を覗くとまだアイテムらしきものがあった。
ピンポン球…のようなビー玉?それとスキルペーパーか?
「あっ!スキルオーブじゃないですか!当たりですね!!」
宝箱を一緒に覗き込んだモモが耳元で喚いた。煩いわ。
「なんでそんな嫌そうな顔してるんですか!」
「耳元で喚くかないでくれ。煩い」
「ひどい!?喚いてませんよ!」
「それはいいが、スキルペーパーじゃなくオーブ?」
「良くないです!」
スキルオーブ…なんか聞いたことあるな。キングエイプの時か?モモがなんか言ってた気がするんだがなんだったかな。
「無視!?」
「スキルオーブってなんだっけか。前に聞いた気がするんだが」
「もう!無視したり煩いなんて言う人には説明してあげません!」
「…………じゃあいいや」
「なんで!?そこはごめんって言うとこ等だと思うんですが!?」
「煩かったのは事実だしな」
「むむむむむ…。じゃあ本当に教えてあげません!」
放っておけばそのうち忘れて機嫌も直るだろうし…放置でいいか。
スキルオーブってことはスキルペーパーと似たようなもんだよな?なら手に取れば覚えられると思うんだが…変なスキルじゃないことを祈って手に取るか、モモのご機嫌を取ってスキル名を教えてもらってから取るか…。なんか謝るのは癪だし…変なスキルじゃないことを祈るか。
「ちょっ!なんで無視してスキルオーブを取ろうとしてるんですか!」
「だって教えてくれないんだろう?」
「む……。わかりましたよ!教えます!私の役割を取らないでください!」
「なら頼んだ」
「もっと優しくしてくれてもいいと思うんですけど…」
なんかぶーぶーと文句を言いながら宝箱の中にスキルオーブを見に行くモモ。
………きっと、ありがとうって言って頭を軽く撫でてやったらすぐ機嫌直るんだろうな…。
「あ…」
「モモ?なんだった?」
「え、えーっと…。ハズレスキルです!つ、使わない方がいいです!」
「……本当か?どんなスキルだ?」
「あ、あの…あ、あれです!名前を口にすることすら憚られるようなスキルです!」
なんだ?いや、嘘をついているのは確実なんだが…俺に使わせたくないスキル?なら正直にデメリットを言えばいいし。使われると困るスキル…以前言っていたヒヨコを殺したくなる呪い…スキルか?いや、ダンジョンフェアリーを殺したくなる呪いって話だっけか?とりあえずそんなスキル…だったとしてもちゃんと言ってくるだろ。その上で使わないでくれと言ってくるはず。
じゃあなんのスキルだ?
「俺かモモに悪影響が出るようなスキルなのか?」
「そ、そうです!その通り!よくわかりましたね!じゃあこのオーブは放置していきましょう!」
………これ以上聞いても答えなさそうだしとりあえずスキルオーブの隣にあるスキルペーパーの詳細聞くか。
「じゃあそのスキルペーパーは?」
「あ、えっと。こっちは【怪力】スキルですね」
「【怪力】?【腕力上昇】じゃなくて?」
「【腕力上昇】は常に腕力…腕の筋力というか力が上がるスキルです。【怪力】の方は魔力を使って任意で発動するスキルですね」
「ん?【身体強化魔法】の腕力版か?」
「んー…。【怪力】は魔法ではないですから【身体強化魔法】よりも魔力の消費量は少ないですし、効果も腕の力だけですのでその分上昇率は高いはずです。大地さんが身に付けているスキルの中だと【表皮硬化】に似ていますね」
「【表皮硬化】も任意での発動なのか?聞いてないんだが」
「あれ?言いませんでした?じゃあ今言いました!」
今言いました。って喧嘩売ってるのだろうか…?
とにかく【怪力】も【表皮硬化】も身体能力上昇系ってことだよな?
上昇系スキルは身につけて損はない。というか積極的に身につけたい。レベル上昇によって力や魔力は上がるが、今の俺は再生のせいで筋トレをしても筋肉は付かなそうだし。成長しない…というか成長出来ないってのは呪いだよな。まあそれは今更だな。
「モモちょっとどいてくれるか?【怪力】のスキルペーパーを取りたい」
「あ、はい」
パタパタと飛び上がるモモ。俺は【怪力】のスキルペーパーに触れ…。
「ちょっ!なんでスキルオーブに触るんですか!?」
「…手が滑った」
「嘘ですぅー!スキルペーパーを触った後流れるようにスキルオーブまで手を持っていきましたよね!?
だ、大地さん!絶対!ぜーーーったいにステータスを見ちゃ駄目です!今後ステータスを確認するのは禁止です!」
…これはフリだよな。見るなよ?見るなよ?ってか?
ふっ。望み通り見てやろう。ステータス表示!




