38 魔除け?いえ、コスプレです。
「ほら、さっさと行くぞ」
「ちょちょちょちょっ!」
「……なに囀ってんだ?」
「囀ってませんよ!?」
「ちょちょちょちょ〜って鳴いたじゃねーか」
「ち・が・い・ま・す!ちょっと待ってくださいって言おうとしたんです!」
「うん、わかってた」
「!?」
「んでなんだ?さっさと階段見つけたいんだが。ウェアウルフ戦い辛いし」
「それはいいですけど!ドロップアイテム!忘れてますよ!?」
「あっ」
「やっぱり忘れてたんですね…」
「すまん、助かる」
さっさと階段を見つけてこの階層からおさらばすることばかり考えていてドロップアイテムのことをすっかり忘れていた。
「ドロップ確認してなかったな…。とっとと確認するか。スキルペーパーの確認頼む」
えーと。近いところから拾うか。
スキルペーパーと…尻尾?他のところを見ると、スキルペーパーだけのとこもあるが、尻尾だけのところもある。なんだこの尻尾は」
「ウェアウルフの尻尾です!」
「見りゃわかるわ。用途を聞いてるんだ」
「えーっと…ウェアウルフの尻尾は……」
「尻尾は?」
「魔除けのアクセサリーみたいです!」
魔除け?アクセサリー?三十センチもある尻尾がアクセサリー?尻につけろと?
持って見るとふさふさの黒い尻尾で、根本の断面はマグネットみたいな黒い円形だった。マグネット?どこにつけろと?冷蔵庫とかにでもつけておけばいいのか?どこにくっつけても邪魔で仕方ないが。
「まあ私の知識では魔除けのアクセサリーとなっていますが、効果は呪魔法避けですね」
「呪魔法?」
「悪魔系の魔物がよく使います」
「呪いか?即死とかあるのか?というか悪魔系の魔物はどの階層だ?」
「即死とかそんな強力なものはないです。片腕が動かなくなるとか、それくらいですね。それも魔法を使った魔物が死ねば効果は切れますし。それと悪魔系は四十階層からでますね。四十階層からは特に人型とか決まりはありませんから」
「まだ先だな。で…これを持ってればいいのか?紐でもあれば腰につけておけるが…手で持ってなきゃならないとなると邪魔だな」
「お尻に押し当ててみてください!」
「………くっつくのか…?」
「はい!」
尻尾をつけた自分を想像してみる。
大きな斧を担ぎ、見た目も別に厳ついってほどではないが可愛らしいわけでもない。普通…だと思う。短髪をかき上げていることが多いから柄が悪い、と言われたことはあるがそうでもないだろう。まあとにかくそんな奴が狼の尻尾、とか。似合わないだろう。
「いらないな」
「ああっ!捨てないでつけてみてくださいよ!悪魔系の魔物が出て来た時は重宝しますよ!」
「他に魔除け…呪い避けのアイテムとかスキルはないのか?」
「ありますけど…」
「じゃあいらん」
「でもでも!そういうのがドロップするのはもっと上ですので!悪魔系が出て来た時にそれ以外手に入ってるかわかりませんよ!」
………。
ポケットに仕舞おうにもスキルペーパーでパンパンだしな…。
「仕方ない…」
「なんでそこにつけるんですか!」
「え?尻尾じゃなきゃ効果が無いのか?」
「そんなことありませんけど…」
「ならいいだろう」
毛皮の半纏の内側にくっ付けた。押し当てるとちゃんと張り付いた。もちろん剥がせるが結構頑丈で今の俺の力でも結構力を入れなければ外れない。
ただ少しゴワゴワして邪魔だけどな。お尻にくっ付ける気にはならん。そのうちこのゴワゴワしたのが嫌になって尻につけるかもしれないが…慣れることを祈ろう。
他の尻尾は放置だ。一つあれば十分だろう。
後はスキルペーパーだな。
「スキルペーパーはなんだった?」
「待ってください!大地さんの足元にあるのは【脚力上昇】です。それで…こっちのが…【聴覚上昇】ですね」
次々と見てもらい、ドロップした五つのスキルペーパーは【脚力上昇】二個、【聴覚上昇】二個、【嗅覚上昇】一つ。
【嗅覚上昇】は初スキルだ。オークも持ってそうなもんだがドロップしなかった。他の二種類は放置だ。上昇系スキルは持って帰らなくてもいいだろ。そんなに価値は高くないだろうし。
まあもし、上昇系スキルが物凄い効果だったら困るので少しは取っておいてもいいけどな。
「確認も終わったし階段探すぞ」
「はーい!」




