第6夜
こんばんは。いらっしゃいませ。
「こんばんは。今日はなにか、おすすめのしながありますか?」
うーん、そうですねえ。
ちょうど、まっくらステッキをにゅうかしましたよ。
「まっくらステッキ?」
ええ。まっくら森のいちばんおくの、まっくらようせいがすむ木のえだで作られるきちょうなものです。
「ならかいます。おいくらですか?」
100円です。
「はい、どうぞ」
ありがとうございます。では、ステッキをどうぞ。
「これは、なににつかうのですか?」
こうしてクルッとふると、いろいろなもののまっくらなかげを、いくつもコピーできますよ。
そぉれ。
「わっ、ぼくのかげですね。なら、ぼくも。そぉれっ、そぉれっ……」
おやおや。かげでお店がいっぱいになりましたね。
「そうですね。じゃあ3つくらいのこして、あとはしまいましょう。そぉれっ」
ひろくなったせいかな。かげとはいえ、おいかけっこは、少しこまってしまいますよ。
「だいじょうぶです。そのうちあきますからね」
……そうですね。
「さて、こんなたのしいステッキなら、もっとかつようしなくては!ちょっとでかけてきますね」
はい、いってらっしゃい。
「ふぅ、ただいまもどりましたよ」
お帰りなさい……気のせいかな。
外でずしんずしんと、なにかの音がするような。
「気のせいじゃありませんよ。なんと!どうぶつえんから、ぞうさんのかげをつれてきたのです」
なんと。そうだったのですか。
「おみせの外でかいましょう。まっくら森なら、食べものはこまらないでしょう」
そうですね。
「じゃあぼくは、ぞうさんのおはなで、すべりだいをしてきます」
はい。みていますね。
…………………………
…………………………。
「ふぅ、たのしかった」
なんどもすべっていましたね。
「ええ。ぞうさんが、何回でもよろこんできょうりょくしてくれましたから」
たのしそうなのがわかって、こちらもたのしかったですよ。
「つぎはお水をたくさんくんでおいてくださいね。
ぞうさんがおはなですいこんで、ぴゅーっとふきだすと、きれいなにじになるのだそうです」
ほう、それは見てみたいですね。
今から水をくみましょうか。
「いいえ。今日はまだまだ、することがありますから」
すること?はて?
「じゃあん!なんと、サンタクロースさんからトナカイをかりてきたのです。かげをコピーして、それにのりましょう。ぼうけんです!」
そうですか、ではいってら……
「てんちょうさんも!のって!てんちょうさんは大きいから、かげも大きくしときましたよ!」
………………わかりました。では、お店をしめておきましょう。
「じゃあしゅっぱつです。トナカイさん、月まで行ってください!れりごー!」
おお。あっという間にお月さまにつきましたよ。
さすが、サンタクロースさんから借りた子のコピーだけありますね。
「そうでしょう……それにしても、ウサギばかりですね」
それはまぁ、月ですからね。
「ああっ、ウサギたちにおそわれるぅっ!」
あ、ほんとだ。全身うさぎだらけですね。
「たすけてください!」
え。きもちいいんじゃないでしょうか。
「でも、ひととしてなにかダメな気がするのです!」
…………しかし、ウサギさんはしんせつでしているのだと思いますよ。
「ああ。もしかして、月がとてもさむいからですか」
その通りです。
きっとうさぎさんは、あなたのおふとんになりたいのでしょう。
「ふふふっ。それなら、まぁいいです。ああきもちいい」
うさぎさんたちも、たのしそうですよ。
たくさん、もふってあげてくだ……ああ、もうねむってしまいましたね。
それでは今夜は、お月さまの上で。
お休みなさい。
おやすみなさい、良い夢を。