第5夜
いらっしゃいませ。またまた、おひさしぶりですね。
「ええ。さいきんは、とてもいそがしかったのです」
おや、そうでしたか。
「なにしろ夏休みでしたからね。毎日あそんだり、ゆーちゅーぶを見たりするので、いっぱいでした」
なるほど。それで、今夜はどうされたのですか?
「夏休みのおみやげを、たくさんもってきたのですよ」
ほうほう。それはうれしいですね。
ありがとうございます。
「まずは、海のそこのまっくらです」
もぐったのですか?
「いいえ。ボクはまだ、もぐれません。夜に海の音をきいて、それでゆめをみたのです」
それは、すてきなたいけんでしたね。
「そうでしょう。ちなみにこっちが、その、夜の海の音に、海の風です。まっくらな海のにおいも、ありますよ」
ああ、本当ですね。
まっくらな海にいるようです。
きもちがいいですね。
「それから、まだまだありますよ。これが、花火がきえたあとの、まっくらです」
おお、これは。
「きらきらの光のこなが、ほんの少し、のこっているでしょう。
このこなのせいで、花火をみたあとは、ちょっとさびしくなるのですよ」
ああ、そうでしたね。
きちょうなものを、ありがとうございます。
「それから、まっくら虫をいっぱい、とりましたよ」
ほう。たいへんだったでしょう。
「たいへんだけど、たのしかったのです」
よかったですね。
「このお店のすみに、虫こーなーを作りましょう」
それなら、名前とかいかたもおしえてくださいね。
「いいですよ。まずこちらが、まっくらしょうりょうばった、といいます。
夜の草を食べますよ」
それで、夜に草にたまるお水をのむのですね。
「そのとおりです。それからこっちが、まっくらかまきり、です」
まっくらばったを食べるのですか?
「いいえ。こいつはいいやつなので、いきものは食べないんです。
かわりに、しんだいきもののたましいを食べるのでだいじょうぶです」
……それはそれで、しんぱいですね。
「それで、こっちの子は、まっくらちょうちょです」
ほう。これはきれいですね。
まっくらだけど、ときどき、にじいろに光るのですね。
「そうでしょう。お月さまの光をあびた、花のみつをすうのです」
ふむふむ。
そしたら、草や花を夜のうちにとってこないといけませんね。
「お昼にとってきたものを、ひとばん、お月さまでてらすだけでもいいんですよ」
そうなんですか。
なら、かえそうですね。
「そうでしょう。じゃあ、さっそく、虫こーなーを作ってくださいね」
わかりました。
では、まっくらお茶でものんで、まっていてくださいね。
「はい、たのしみです」
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さぁ、できましたよ。
おや、まちくたびれてしまったようですね。
それでは今夜はもう、おやすみなさい。
おやすみなさい、良い夢を。