第11夜
おや、いらっしゃい、こんばんは。
すこし、ごきげんナナメですね。
「おかあさんに、おかたづけしないとサンタさんこないよ、っていわれたんです!」
おやまぁ、それなら、ちゃんとおかたづけしなければ。
「でも、サンタさんはうちゅうにいるから、うちはみえないんです」
うちゅうのとくだいぼうえんきょうで、見ているかもしれませんよ。
「うちはよるになると、あまどとカーテンをしめるので、とくだいぼうえんきょうでも、みえなくなるんです」
でも……サンタさんだから……
「ぜったいに、みえませんよ!」
…………そうかも、しれませんね。
「そうでしょう。ぼくは、まっくらドラゴンにのって、たしかめましたからね」
ほうほう。
「まっくらドラゴンのしょうたいは、なんだかしっていますか?」
なんなのですか?
「そらからおちてきた、おほしさまのこどもです。
いまはまっくらドラゴンだけど、大きくなると、そらにあがって、おほしさまになるのです」
なるほど。それはすごいですね。
「なので、まっくらドラゴンとそらをとぶと、おほしさまのコンサートをきけますよ」
おほしさまのコンサート?
どんなのですか?
「ゆうがたは、ひとつ、ふたつ、じゅんばんに、ちいさな、やさしいおとですよ。
てっきんやトライアングルをしずかにたたく、おとです」
そうですか。それから?
「おとはだんだんふえて、おおきくなりますよ。
すずがしゃんしゃんしゃん! となって、もっきんもポロンポロンおとをだします。
それから、シンバルがじゃーん!」
なんだかにぎやかですね。
「ええ。とてもすごくて、とてもおおきくて、たのしくて、きれいな、がっそうなのです」
ほうほう。それはすてきだ。
「でも、だんだんあさになるでしょう。
だから、おほしさまのおんがくも、ひとつずつ、きえていきますよ。
さいごはしーんとして、おわりです」
おひさまは? どんな音?
「おひさまは、あついので、がっきがぜんぶもえてしまうのです。
だから、おひさまは、おとをださないんですよ」
へぇぇぇえ……
「そうそう。きょうも、てんちょうさんにおみやげがありますよ!」
それは、うれしいですね。
何でしょう?
「じゃあん! 『とろけるまっくらケーキ』 です?」
……とろけてます? どこが?
「これは、あまりのおいしさにとろけてしまうケーキですよ! はい、たべてみてください!」
いただきます。…………!?
「ほらぁ。てんちょうさんがとけてしまいましたよ! わーおもしろい! ヘンなかおになってる!」
…………じゃあとりあえず、きょうはもう、おやすみ……
「あ、まって! もうひとくち、たべさせてあげる!」
ますます、とろけるんじゃないですか?
「ちがいます! もうひとくちたべると、こんどはあまりのおいしさに、かっちーん、とかたまるのです」
へぇぇぇぇぇ。
「じゃあ、はい、どうぞ」
むぐむぐむぐ……ごっくん。
………………
………………
………………。
「てんちょうさん? どうしたんですか?」
とけたままの形で、かたまってしまいましたが。
「ああっ……どうしよう!」
……どうします?
「うーん。うーん。わかった! そのままでいいですよ」
よくありませんって。
「いいんです! とけてヘンなかおになっても、ぼくはてんちょうさんのこと、すきだからね!」
………………ありがとうございます。
「じゃ、そういうことで! きょうはもう、おやすみなさい!」
……………………。
……………………おやすみなさい、また、あした。
おやすみなさい、よいゆめを。