地球に優しい葬儀屋になろう!
「おーい、主任さんや、チョイと来てくれないか」
「おやおや、これは若社長。どういたしやしたんで?」
「どうもこうも無いよ。あのね、こうもヒマだとウチの葬儀屋も商売上がったりじゃないか」
「そりゃまぁ・・・何というか、この村もずいぶん過疎化してやすし。そもそも『死ぬヤツ』が減ってますんでねぇ」
「おいおい、そういうロコツな事を言うんじゃありませんよ。いや、アタシもね。こうして先代から会社ぁ受け継いだはいいけれどさ、これじゃ早々に倒産しそうだよ」
「ははぁ。『父さん』から受け継いだだけに、ですかい」
「馬鹿な事を言ってんじゃありませんよ!何かこう・・・お客を呼び込む『いいサービス』ってなぁ無いモンかねぇって話だよ」
「そう言いやしてもねぇ・・・何しろ『この業界』にゃぁ『リピーター』ってぇモンがありやせんで。どんだけ心のこもったサービスをしても、『じゃぁ次もここの葬儀屋でご厄介になろうか』ってぇ、物好きはいやせんから」
「・・・そりゃそうさ。人間だれでも『死ぬのは一度きり』だからね。おかげで『お客』は減る一方と来たもんだ。オマケに商売仇とお客の取り合いもしなきゃぁならん。何とか差別化を図らんとな」
「へぇ、差別化ですか?」
「うん、とは言ってもだ。葬儀屋がハデにするワケにも行かないし、『お安くしますよ』って言われて『じゃぁ死のうか』ってぇモンでもあるまい?そこでだ、アタシは考えたね。『地球に優しい葬儀屋』ってコンセプトなんだが・・・どうだい?」
「どうだい、って言われても・・・何かピンと来やせんが」
「いいかい?時代はね、エコだよエコ。そこでな、何かこう・・・エコをアピールする方法は無いかと思ってね」
「エコ?ですかい。まぁ、昔からエコって言いやすと『紙・ゴミ・電気』なんて言いやすが」
「紙・・・はダメだね、何しろウチのお客はカミじゃなくてホトケだからさ。だったら、まずは『電気』から行こうか」
「・・・電気ですかい?とは言ってねぇ。せいぜいが『ムダな電気を消す』とか・・・」
「そうだな。とりあえず、それをやって見るか」
えー・・・そんなワケで『使わない電気は消そう』なんてぇ取り組みをしてまましたが・・・
「若社長、例の『ムダな電気を消す』ってぇヤツですがね。どーも、不評で」
「おや?どうしてだい?」
「いやね、ご親族様から『夜 に 廊 下 の 電 気 が 消 え て い るの が 薄 気 味 悪 く て 怖 い』って・・・」
「うーん、確かにそうかもなぁ。仕方ないね、そうしたらアレだ『人感センサー』で照明を点けるってぇのはどうだい?それなら『薄気味悪い』って事ぁ無いだろうよ」
「なるほど、ではそうしやしょうか」
という事で、人間が来た時だけ照明が点くようにしましたが・・・
「若社長、例の『人感センサー』なんですがね、どーも不評で」
「おや?またしてもご親族が?」
「いやいや、今度は従業員でして。多分、誤動作なんでしょうが・・・何でも『誰 も 居 な い の に、 勝 手 に 照 明 が 点 く 事 が あ る』って・・・イヤがられてまして」
「うっ・・・それはヤだな、確かに」
「へぇ。ですんで、チョットそれは・・・」
「しかし、困ったねぇ。いくらエコとは言ってもウチは商売が商売だから『冷房を控えめにしましょう』なんてワケにもいかないしねぇ」
「ですねぇ。そんなマネぇした日にゃぁ、仏様が傷んじまうんで。たださえ夏場は苦労してやすし」
「うーん。するワケってぇと、電気は難しいなぁ。じゃぁ仕方ない、今度はゴミだな。リサイクルで行こうか」
「リサイクルですか・・・これも難しいですねぇ。何しろウチは基本的に『出したモノは行ったっきり』なんで。『返ってきた』こたぁ無いですなぁ」
「お前さんね、何を当たり前の事を言ってんだよ。別にアタシは『お棺のリサイクル』とか言ってんじゃありませんよ。何かこう・・・リサイクル的な名目は立たないもんかねぇ」
「だったら『ご遺灰の再利用』なんてぇのは?」
「・・・お前ね、そんなモノが何の役に立つってんだい?」
「いえ、それがね。町の焼却場があるじゃないですか。あそこじゃぁ燃やした生ゴミのカスなんかを、道路とかコンクリートに混ぜて再利用してるっつー話なんで」
「おいおい、お前さんねぇ、まさか『それ』をご遺灰でやろうってんじゃぁ無いよね?」
「どうですかね?どっかの政党がやってた『コンクリートから人へ』をモジって『人 か ら コ ン ク リ ー ト へ』って言う・・・」
「怖いだろ、それ!」
「いゃぁ、逆なんで」
「どうしてだい?」
「『コ ン ク リ ー ト が ア ナ タ の 町 を 見 守 り ま す』っていう付加価値を付けてですね・・・」
「『地 縛 霊』だよ!それはっ!」
・・・お後が寒々しいようで・・・