第十八話
今日も今日とて魔法の研究…というわけでもなく、俺は街にある武器屋をめぐっていた。
ことの発端は何か魔法の新しい使い方の参考にならないかとラノベを読みふけっていた時に剣やら槍やらを大量に射出するキャラがいたのでワンチャン俺にもできんじゃね?と思って小石で実践してみたところ、加速度やら摩擦力やらを工夫さえすれば別空間に収納したものを超高速で射出できることが分かったので、射出するための安い武器を探し求めているのだがなかなかいい店が見つからない。
「はぁ”ぁ”~」
6軒目の武器屋に到着するとえげつないため息をつきながら店先に座り込む青年がいた。ちょうど同い年か、ちょいと上くらいだろうか…?
「ん?お客さんか、悪いね、みっともない姿を見せちまった。」
どうやら店の人だったらしい。そんな辛気臭くしてると客が逃げてきますよ…
「いえ、いいんですけど…どうしたんですか?」
「ああ、聞いてくれよ…俺、此処のおやっさんのところにちょうど半年くらい前に弟子入りしたんだがな、ここ最近売れ行きが良くないからか『鋼材がもったいねぇ!』って言って俺に鍛冶の練習を全然させてくれねぇんだよ~このままだと一生半人前のままだぜぇ…?」
気の毒だとは思うが、経済的な話に俺がどうこう言えるわけじゃあないしな…ん?待てよ。
「なるほど、それは大変ですね。で、そんなお兄さんにいい話が…って今思いついただけなんですけど、お兄さん鍛冶の腕前は?」
「まぁ…そうだな、師匠やほかの店の一級品に比べたらなまくらだが、切れ味も頑丈性もぼちぼちのもんが打てるとおもうぜ。…で、いい話ってのはいったいなんだよ?」
お兄さんが若干圧力をかけて聞いてくる。そんなに鍛冶に飢えているんだろうか。
「僕は訳あってそこそこの武器が大量に、安くほしいんです。なので僕が鋼材を用意するのでそれで武器を打って僕に――そうですね、本来の2割ほどの値段で売ってくだされば、僕も安く武器が手に入ってあなたも上達する…どうです?悪い話じゃないと思うんですが。」
お兄さんはしばらく硬直した後食らいつくようにして反応してきた。
「おう、おう!ぜひそれで頼まぁ!!よっしゃ!気合入ってきたぜー!!」
と、そんなこんなでこれからの武器の集め先が決まったのでとりあえず持ち合わせていたニードルリザードの棘の部分を渡した後、店にいくつか売ってた安めの武器を大量購入したので、さっそく家に帰って試してみる。
理想とする射出用の空間『加速空間』を開き、中に剣を放り込み30秒くらいたったころに庭の木に向かって発射。シュンッと風を切る音とともに飛んで行った剣はうまいこと気にあたりダーツの矢のように刺さった…というより衝突したといったほうがいいのか。ちょっと強すぎる気がするが後々の調整でどうとでもなるだろう。
…まぁ、正直かっこいいとは思うが他の魔法のほうがつよいんだよなぁ。