第十二話
初☆データ消失事故…マジでつらいですね、あれ。
「こちらが先ほどご紹介した家になります。」
件の家についた。そこは家というよりは屋敷と呼べるもので、三階建てで学校の校舎なんかを縮めて屋根をオサレにしたらこんな感じかという外観、大型犬が十匹は走り回れる広大な庭、中に入るとこれまた広いエントランスに左右に広がる廊下と大小さまざまな部屋が目に入った。リビング、キッチンもしっかり整っており、これまで住んできた人の名残だろうかそれなりに豪華な家具もあった。これで予算以内に収まるならこれ以上にいい買い物はないだろう。
…で、問題の地下室だが確かに物々しい扉があり、好奇心をそそるオーラと不気味さを同時に放っており無視しようとしてできるもんでもなさそうだ。
「ここが、例の地下室です。」
「そうですか、じゃあ一応何があるか分からないので一人で見に行ってもいいですかね?これでも腕には自信があるんです。」
といって不動産の人を置いていく。万が一戦闘になったときサイズを出すところを見られてもまずいし何より巻き込み兼ねないからね。
地下へ続く階段を降りるとまたしてもさび付いた扉があったので慎重に開けると、そこには大量の本が…
「いかがでしたでしょうか…?お客様。」
「ええ、やはり気になりはするものの他は良いようですし、危険でもなさそうですからね。買わせてもらおうと思います。」
「本当ですか!いやぁ良かったです。それでは一度不動産のほうへ戻って手続きのほうをさせていただきます。」
「それでは、返品不可という条件のもと中古の家具と合わせて70000Gで購入ということでよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。」
「…はい、ご購入ありがとうございました。今からもう使用可能なので使用していただいて構いません、今後ともよろしくお願いいたします。」
…おおっとぼーっとしてたな。結論から言うとあの書庫は何の問題もなく、何かが居たわけでも呪われたりするわけでもなかったようだ、心配して損したぜ。
遡る事数時間…
大量の本を目にして驚いていた俺だが、実はこの時点であることに気づいていた。俺にはこの本が読めるのである。捨てられない理由は分からないがなんかフィルタ的なのがかかってるのが見えるから、まぁ、どうせ魔法だろう。問題は本そのものではなく内容だ。
「これは…。」
手近な本を手に取ってパラパラと内容を確認するとそこにはある英雄とゆかいな仲間たちの面白おかしく、時にシリアスな冒険譚がきれいな挿絵とともに描かれていた。そのほかにも闇夜を暗躍する大怪盗や、それを追う少年探偵の目録、少年少女の甘酸っぱい青春を描いた物語なんかもあった。それぞれ何冊にもわたって書かれており、巻数を見るだけでどれだけ壮大なものかがうかがえる…
いや、早い話『ラノベ』なんですけど。
まさかここにきて最初に見つけた元の世界との繋がりがラノベとは思わなんだ。ちなみに、先ほどの魔法だが本一冊一冊にかかっているのではなくこの書庫そのものにかかっているようで、ラノベとこの部屋を無理やり結び付けているらしい。日に日に本が増えていくというのは「新刊が入荷されたから」なんだろうなぁ…。
なんにせよ、此処の発見は大きかった。元の世界とリアルタイムで繋がる魔法を発見できたこととこちらの世界に俺たちと同じ境遇の人間がいるかもしれないし、
「…続き、気になってたんだよなぁ。」
何とも厄介な家を買ってしまったものだ。寝れなくなるじゃあないか。