恋の季節
また短編です
無数の小さな白い粉雪が舞い遊び、消えゆく。
一体どれだけ虚しくその行為を繰り返すのだろうか。
私の恋もそうやって散るのかな と考えると辛くて仕方がない。
同じクラスになって数ヶ月。
それなのに未だに朝一言挨拶を交わすぐらいで。
彼を狙う女子は相当な数に上ると聞いている。
こうしていても仕方ないな と人がほとんどいなくなった教室を後にする。
曲がり角、不意に人の影。
ぶつかりかけた私は咄嗟に目を瞑る。
「大丈夫か?」
聞き覚えのある声に目を見開く。
忘れるはずがない。
彼の声だった。
「ううん、大丈夫。 私の方こそごめんね」
忘れ物を取りに来たのだろう。
それで遅くに帰ろうとした私とすれ違った。
彼にとってはただそれだけ。
それでも私には、とても大きな意味を持っていて。
「バイバイ」重なる別れの言葉が脳裏で木霊する。
口元を隠すマフラーが少し鬱陶しく感じ始めた今日この頃。
彼に会えるのがまた楽しみだ。
「おはよう」
不意に聞こえた声。
予定よりも早い再開に私は驚きを隠せなかった。
「おはよう」
普段と変わらない声で返す。
ただそれだけの事なのに私の世界は簡単に彩られてしまった。
また今日も始まる1日は桃色。
灰色の日常に別れを告げたあの日からずっと輝いている。
「いつか......」
言葉にならないその先は決意に留めて私は止まっていた足をまた動かした。
本当は5000文字ぐらいにするつもりでした。