表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
893とJK。  作者: にこる。
4/8

彼女に惚れた。

「このド変態が」



冷ややかな眼で睨んでくる空は、やはり愛おしく思える。

どんなに冷たい言葉を投げかけられ殴られ蹴られても。

他の女にこんなことをされれば、確実にキレていたが惚れた相手には何をされてもいい。

そのことを空に伝えれば「キモイ」の一言と共に物を投げられる。


俺の女になればいい。


初めて本気で女を手に入れたいと思えた。

しかし、空は拒絶した。

金で買えたものは人の『欲』であった。『心』だけはどうしても買えなかった。

プレゼントも受け取ってはもらえず、ただただ俺を拒否した。



『極道だから嫌なのか』



そう問えば、彼女は首を横に振って違うと答えた。

理由を聞いてものらりくらりとかわされてしまう。

極道が嫌いというわけではないのなら、何が嫌なのだろうか。



「何でここにいるの?」



グラスを握り潰すようにウーロン茶を飲む空。

今何かしくじれば、グラスは俺の頭に直撃するだろう。



「たまたま通りかかっただけだ」



「へぇ。通りかかっただけなんだぁ。あなたの組、逆方向じゃなかったかな?」



「いや、飲みに来てて…」



「へぇ。わざわざ遠いところまでよく来ましたね。歩きで来たんですかぁ」



もうすべてがバレていることくらい分かってる。

だが、空からいつも以上の殺気が滲み出ていて恐ろしくて口が開かない。



「はぁー、もう帰ります」



何も言わない俺に呆れたのか、金を置いて出ていく。

俺も急いで追いかけた。



「もう家に帰るからいいでしょ?」



「送ってく」



「いや、もう私ん家はすぐそこなんで」



「女ひとり帰らせるわけにはいかない」



「いいって!」



「送りたいんだ、黙って歩け」



つい強く言ってしまった。

普段から強気で誰にでも言ってしまうせいだ。

怒っているのか何も言わずにさっさと歩いていってしまう。


すぐ近くにいるのに手は掴めず。


空の家はもう目の前。



無言で扉を開けて閉まる寸前、ポツリと聞こえた。



「おやすみなさい」



ガチャンという音が響く。



「あぁ」




俺はまた彼女に惚れる。




彼女の不器用な優しさに。




「さてと」




明日は仕事を早めに終わらせて、また彼女に会いに行くことにしよう。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ