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9.魔法が使える様になりました



 次の日の朝、俺はいつもの採掘場に来ていた。



「大丈夫、だよね…」


 俺は鞄から魔導書を取り出した。

 流石に家の中で魔導書を読んで何かあったらまずいので、1日待ったのだ。昨日はドキドキして寝られなかった。



「これで使えなかったら、あの子は絶対に許さない」


 もし俺の使える魔法の数が1つで、この魔法が使えなかったら流石に恨んでもいいよね?

 いや、やっぱり鑑定の儀まで待とうか…



「ええい、読んじゃえ!」


 俺は我慢出来ずに魔導書を勢いよく開いた。

 中には全く読めない文字がびっしりと書かれていた。

 すると、その文字たちが本から浮き出てきて俺の頭の中へと流れ込んできた。



『嵐魔法ライジングテンペスト』



 風と雨と雷を操る、嵐属性の強力な魔法。体に纏い身体能力を向上させ、手から強力な一撃を放つ事もできる。



「や、やったー!」


 凄い魔法を覚えてしまった。

 これはチートなんじゃないだろうか?

 流石にこれには商人のおっちゃんに感謝するしかない。そして、おっちゃんの「風か雷だったか…?」の言葉も間違っていなかった。



「い、いやまだだ…」


 そう喜んでもいられない。もしかしたら使えない可能性だってある。だが、昨日の彼女が言った通りの魔法だった。



 俺は両手を前に翳した。



「し、信じるからな…! ラ、ライジングテンペスト!」



 次の瞬間、

 洞窟内に嵐が吹き荒れ、まるで爆発したかの様に俺は洞窟の外まで吹き飛ばされた。吹き飛ばされる最中、微かに頭の中から採掘レベルが2に上がった声がした。



「うわーーーーーっ⁉︎」


 俺の意識はそこで途切れた。







 目を覚ますと俺は家の布団で寝ていた。



「う、ううん…」

「ユーマ! 目を覚ましたのね!」


「か、あさん…?」


 母さんはめちゃくちゃ泣いていた。



「あなた山の中でボロボロになって倒れていたのよ! 父さん達が見つけてくれなかったら、どうなっていたか! 一体どこに行っていたの!」

「母さん、落ち着いて! ユーマも目を覚ましたばっかりなんだ!」


 隣にいた父さんが、落ち着く様に母さんを宥めた。



「ご、ごめんなさい…」

「いや、心配する気持ちは分かるから…兎に角、意識は取り戻したし今はゆっくり休ませてやろう」


 父さんは母さんと一緒に屋根裏部屋から降りていった。



「そうか俺…あの後倒れたんだ…」


 後で聞いた話によると、俺はあの洞窟から大分離れた所まで転げ落ちていたそうだ。父さんたちが今採掘している場所の近くの茂みに倒れており、たまたま早めに出勤していた父さんたちが見つけてくれたそうだ。


 急いで村まで運ばれた後は、目を覚ます直前までルナがきてくれて、ずっとヒールをかけてくれてたそうだ。



「でも、使えた…へへっ」


 皆んなには凄く心配をかけた。それは本当に申し訳なく思っている。

 でも俺は憧れていた魔法が使えた事が凄く嬉しかった。



「でも…暫くは……封印だな…」


 俺は物語に出てくる様なカッコいいセリフを1人呟いて、そこから3日間眠り続けた。






 完全に目を覚まして体調が元通りになるまで2週間以上かかった。その後はお尻ペンペンどころではなく、かなり怒られた。


 魔法を使ったことは内緒にしたいので、俺は父さん達の採掘場を見に行こうとして山を転げ落ちたと説明した。

 当然、外出禁止令をくらった。1週間は家の外へも出してもらえなかった。



「んん〜、やっぱ外の空気は美味しいや」


 今日からようやく村の中までなら出歩いてよくなった。まぁ元々村の外へは出ていけなかったんだけど。



「よ〜ユーマ、元気かぁ?」


 冴えなくてモテない商人のおっちゃんと久々に会った。



「いやぁ…めっちゃ怒られた」

「たはは、そいつは悪かったな」


 おっちゃんは、たははと笑っていた。全く悪いと思っていない。



「でもどうしようか…暫く採掘には行けそうもないや」

「それなんだがよ〜」


 あの後、おっちゃんは例の洞窟へ行ってみたそうだ。すると洞窟内が嵐でもきたかの様に吹き飛ばされており、中から金銀鉱石宝石の山が見つかったそうだ。

 おっちゃんは第一発見者として村へ報告し採掘権を渡した。その代わりに、数メートル範囲だがあの洞窟から採れた物に限り分前を少し貰える様になったそうだ。今や働かずにお金が入ってくる始末。



「まぁ元々おじさんが見つけた洞窟だしね…」

「いやぁ悪いなユーマ、という訳で採掘はもうしなくていいから」


 おっちゃんはちょっとした小金持ちとなり、益々ダメ人間に拍車をかけた。



「まぁ回復祝いだ、これ持ってけ」


 おっちゃんは俺の持っていない勇者の絵本をくれた。タイトルは『異世界勇者の恋はハリケーン①』。

 それと、吹き飛ばされて無くなった鞄や道具の数々。全部新品で用意してくれた。



「いいの?」

「おう、どうせ無くしたんだろ? 罠の道具やナイフなんかはおっちゃんよく分かんなかったから、村の人に聞いて新しく作ってもらったからよ〜」


 きっと耳長イケおじと、背の低い筋骨隆々おじさんだ。また今度お礼を言っておこう。あ、師匠にもまた木刀を作ってもらわないといけない。それもまたにしよう。なんせ今は早く帰らないと母さんに怒られるからだ。決して新しい本を早く読みたい訳ではない。決してだ。

 俺はおじさんと別れて家に帰ることにした。



 そういえばあれからあの子と会っていない。あの褐色肌で赤眼の名前も知らない謎の女の子。



「誰だっんだろう…?」




 俺がその子と再会するのはもっとずっと後の未来の事だった。

ステータス(鑑定の儀、前)


【名前】

ユーマ


【スキル】

剣術2、速読1、剥取り1、罠師1、研師1、採掘1→2

※不明だが何らかの魔術スキル有り


【魔法】

ライジングテンペスト


【装備】

ーー


【宝箱】

剥取りナイフ、罠道具、砥石、子供用採掘道具


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