8.もう1人もすごい子です
あれから1ヶ月が経ち、採掘も剣の修行も順調な今日この頃。
最近また友達が出来た。
「あ、あの…ユーマくん…この本、貸してくれる?」
「うん、いいよ」
彼女の名前はルナちゃん。ジャンヌと同い年の俺の1個下。うっすらと青色が入った薄い銀髪が特徴な彼女は、活発なジャンヌとは違い凄く大人しい子だ。
ジャンヌは俺と一緒でバトル多めの物語が好きだが、ルナは母さんと一緒でハッピーエンドの恋愛物が好きな女の子だ。
「痛っ」
珍しく本の端で指を切った。
「だ、大丈夫…⁉︎ ヒール!」
彼女は凄いのだ。
なんと彼女は既に魔法が使える。
ちょっとの傷ならたちまち治してしまう、回復魔法というレアな魔法の持ち主だ。
「ありがとう」
「へへ、どういたしまして」
ジャンヌと外で剣の修行をするのも好きだが、ルナと一緒に本を読む穏やかな時間も好きなのだ。
そしてあわよくば魔法を教えてもらいたいと思っている。
「え、あ、そう言われても…出来ちゃったからとしか…ごめんね、私も魔法ってよく分からないんだ」
くぅぅ、羨ましい。
そんな鈍感系チート主人公みたいなセリフ1度くらい言ってみたい!
「あ、そろそろ帰らないと」
「うん、じゃあね。本はいつでもいいから」
「ありがとうユーマくん」
ルナは俺が貸した本を大事そうに抱えながら村長の家へと帰っていった。
ルナは村長の孫娘で、生まれた頃から体が弱くいつも家の中で過ごしていたそうだ。最近段々と体の調子が良くなり、俺やジャンヌが外で遊んでいるのを見て羨ましく思い、外へ出るようになってきたそうだ。
そういえばだが、俺とジャンヌとルナの父親はみんな鉱山夫で、よく3人で酔い潰れるまで飲んでいる。その度に母さん達に怒られているが反省の色はない。
いつの頃からか『反省会』と称した飲み会が度々開かれるが、俺とジャンヌとルナは食べ終えると俺の部屋に集まる。
俺にとってそれはたまらなく楽しい思い出なのだが、他の人からしたら蛇足なので今回は割愛したいと思う。
♢
数日後。
今日も朝の日課となった採掘を行い、鉱石らしき物を鞄にしまいながら家に帰る。
「あ〜俺も魔法使いたいな〜」
でもやっぱり魔法を使ってみたい。
何故か例の夢を見た後だと無性に使ってみたくなるのだ。まぁ毎回起きたら内容は忘れるんだけど。
なんだろう…まるで魔法のない世界にいたかのような不思議な感覚になるのだ。
「使いたいのか?」
「え、誰?」
初めて、誰かに朝早く声をかけられた。
「わしが聞いておる。使いたいのか魔法?」
「……まぁ、」
その子はうっすら紫が入った様な黒髪で、この村では見たことがない褐色の肌をしていた。服装は黒のワンピースだけの素足で、足が痛くないのだろうか?と思った。
年は同じくらいに見える少女は、不敵に笑いながらジッとこちらを見ていた。
「使いたいけど…」
「教えてやろうか魔法?」
「え、いいの?」
誘惑の言葉としてこれ以上ない魅力的な言葉だった。魔法。それは俺にとって憧れである。にしてもこの子、なんてじじくさい言葉遣いなのだろうか。
「安心しろ、ちゃんとお主でも使える魔法を教えてやるぞ」
「え、そういうの分かるの?」
「わしの眼は少々特殊でな、まぁ色々と見えないものが見えるんじゃよ」
「へ〜」
黒髪黒眼の俺にはない赤眼が怪しく光る。魔法より寧ろその赤眼が欲しいとは言わないでおこう。
「お主が大事にしまっとるあの魔導書が、何の魔法かもちゃんと分かるぞ」
「マジか」
「どうする?」
「うーん、じゃあ俺が持ってる魔導書が何の魔法か教えてよ。それとその魔法がちゃんと使えるかも」
「なんじゃそれだけでいいのか? わし直伝の特別な魔法を教えてやるぞ?」
「それはいいや。君、怪しいし。そういうのもちゃんと自分の力で手に入れたいし」
彼女はキョトンとした顔を一瞬見せると、次の瞬間に大笑いしだした。
「ハーハッハッハッ! 確かに! 確かに怪しいわな。わしでも警戒するわ。こりゃ一本取られたわい」
なんだろう、なんかバカにされている様な気がしてきた。一頻り笑い終えた彼女は咳払いを一つした。
「コホン、いいじゃろう教えてやるわい。お主が持っとる魔導書はな…」
「ゴクリ…」
ちょっとドキドキしてきた。




