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3.物語の英雄に憧れてます


「ただいま…」

「おかえり、父さん」


 夜、鉱山から父さんが帰ってきた。

 父さんは疲れてるだろうに俺を軽々と抱えあげる。汗をかいてるのに、商人のおっさんとは違い臭く感じない。



「あなた、おかえりなさい」

「ただいま」


 そういって2人は…えっと、確か物語だと…



「唇を重ねる?」


「「なっ⁉︎」」


 2人は慌てて照れながらサッと離れた。





 父さんは風呂から上がると1人夕食を食べる。俺と母さんは既に食べ終えた後だ。



「今回もまぁまぁの収穫だ。村長もまだあの辺りから沢山採れるだろうってさ」

「良かったわ」


 父さんは鉱山夫という、鉱石を掘る仕事をしている。こんな辺境でも領主はおり、村の税はお金の代わりに資源…つまり鉱石を納めている。つまりこの村は鉱石が取れなくなったら死活問題で、税を払えなくなるのだ。


 因みにだが、この村の男衆は一部を除いて基本的にはみんな鉱山夫だ。それ以外の人は別の事で村に貢献している。狩猟や物作り、鍛治などで。



「じゃあ新しい本買ってくれる!」


 この頃の俺はそんな両親の気苦労など知らず、無邪気に新しい英雄物語の本をねだるばかりだった。



「おう、任せろ!」

「もう、あなたったら。ユーマに甘いんだから」





 次の日、俺は朝早くからダラダラしてる商人のおっちゃんの所へ来ていた。



「ユーマよ〜…」

「何、おじさん?」


 うーん、どの本買おうか迷うな。



「なんか儲かる話はないもんかねぇ?」

「5歳児に愚痴ってる様じゃ儲からないだろうね」


 おっちゃんは、たははって顔をしていた。



「ユーマは厳しいねぇ」

「村の鉱石を売ったら儲かるんじゃない?」


「あ〜鉱石ねぇ〜、ありゃ領主に納めてるモンだからな〜俺が商売にしたらこれよ」


 おっちゃんは首を切る様な仕草をした。



「じゃあ、おっちゃんが鉱床を見つけて自分で掘って自分で売ったら?」

「いやいやいや、そんな重労働おっちゃん死んじゃうって」


 これだからおっちゃんはモテない。



「じゃあ父さん達に掘ってきてもらう?」

「それがね〜昔お願いしたのよ〜そしたらね〜毎年、税と生活の費用分でギリギリなんだと〜」


 じゃあ本代はどこから?

 おっちゃんと目が合った。



「この村で本を買うのはユーマだけなのよね〜どっからお金を賄ってるんだろうね〜」


 初めておっちゃんが少し怖いと思った。



「あ〜つまり…ホントは納めてる分以上にめっちゃ稼いでるけど、おっちゃんとは商売したくないって事か〜」

「あ〜そういう事ね〜…やんわりと断られてたって事ね〜」


 おっちゃんの雰囲気がいつものだらしない感じに戻った。



「じゃあ俺が将来英雄になったら、おっちゃんを専属商人にしてあげる」

「……はいはい、ありがとね〜期待せずに待っとくよ〜」


 おっちゃんはめんどくさそうに手をヒラヒラとさせていた。



「そうだ、ユー坊」

「何?」


「村の反対の外れにいる爺さんいるだろ?」

「うん」


「噂だと昔すっげ〜剣士だったらしいぜ〜」

「ホント?」


「ああ噂だけどな。将来英雄になるなら師匠とかいるんじゃねぇの?」

「ありがとおじさん! 行ってみるね!」


 俺は急いでお爺さんの元へ駆けていったが、途中でピタリと動きを止め振り返った。



「おじさーん!」

「ん?」


「英雄になったら女の人紹介してあげるねー!」

「はいよー! 期待しないで待っとくよー!」






「期待…して待っとくよ…」

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