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15.ぶっ飛ばしてもいいですか?


「おいおい、田舎もんが一丁前に剣なんか持ってやがるぜ」


 俺たち3人は只今街中で絡まれてます。剣を買ってウキウキの気分だったのに、一転して怒りでどうにかなりそうだった。こんな事になったのも数刻前…







「あ、あったよ」


 次なる目的のお店を見つけた。



「安い魔導書あるといいね」

「う、うん」


 ジャンヌはニパッと笑うとルナの手を引いてお店の中へと入った。武器屋の件で2人はより一層仲良くなった様に思える。




「…いらっしゃいませ」


 武器屋の店主とは打って変わって、魔導書店の店主はどこか陰気臭かった。小声で覇気がない。


「ねぇ、安い魔導書ってありますか?」

「…あの辺っすね」


 ジャンヌの問いに店主はマジで面倒くさそうに適当に答えた。

 ん?

 よく見たら店主じゃなかった。胸元に『研修中』の札が貼ってあった。



「ありがと、お兄さん!」

「……っす」


 そんな陰気臭い店員のお兄さんでも、純粋なジャンヌの笑顔に照れくさそうにしていた。



「うわ、本当だ高いね」

「ねぇ…どれも100万Gくらいはするんだね」


 マジでビビった。高いのは知っていたがそれでもこれ程とは思わなかった。おっちゃんはよく『ライジングテンペスト』なんて魔導書を手に入れられたのかと感心した。



「ねぇ店員さん、因みにだけど…嵐魔法の魔導書っていくらくらいするんですか?」


 安い魔導書を探しているジャンヌとルナに気づかれない様、俺は店員さんに小声で聞いてみた。



「嵐魔法っすか…そんな超位魔法うちでは扱ってませんね。正直いくらくらいなのかもわかんねぇっす。多分、王都の魔道書店か魔導国とかにならあるんじゃねぇっすか…」



 おいおいおいおい!

 マジっすか⁉︎

 俺の魔法ってそんなレアなの⁉︎

 え、これって…チート…?

 え、マジかよ…ヤバい…嬉しい…正直ジャンヌやルナが凄すぎて俺はついていくので精一杯だったから、これで2人に追いつける。



「あ、でもそういえば…前にうちの店長が確か…『何年か前に魔導国で嵐魔法の解析が進んだとかなんとかで…大量の嵐魔法の魔導書が今後流入してくる』とか言ってたのでうちにもそのうち入ってくるんじゃねぇっすか?」



 くそ!

 ぬか喜びさせんなよ、陰気にいちゃん!

 おっちゃんは元々、大手商会に勤めてたみたいだし、その伝手で手に入ったのだろう。

 まぁそりゃそうか。

 あの冴えなくて足が臭くてモテないおっちゃんがそんな特別な魔法手に入れられたり出来るわけがない。



「まぁ地道に頑張るか」


 そう、俺はクールな9才児。

 まだ慌てる時ではない。ジャンヌとルナがいかに凄かろうと、俺はいずれ英雄になる男。

 大丈夫、まだ大丈夫。




「あ、ユーマ! 魔導書あったよ! 来て来て!」

「おう」


 俺は陰気にいちゃんに小さく礼をすると、2人の元へ駆けた。



「どれどれ、あ、本当だ」

「ねえ。これいいと思う。試しにルナに唱えてみてもらったけど使えなかったから多分覚えてないし買ってもいいと思う」


 ジャンヌさんや、頭いいな。

 そうか、魔導書を読む前に魔法名を唱えて発動しなかったら覚えてないと判断するわけか…めっちゃ頭いいな!

 ジャンヌは勉強が嫌いなだけで、決して頭が悪いわけではなかった。



『攻撃力上昇魔法パワー』



 自身や味方の物理攻撃力をちょっぴり上げる魔法みたいだ。うん。支援系のルナにぴったりの魔法だ。



「値段は…10万Gか。ギリ買えるね」

「でしょ! それでね…」


「大丈夫、いいよ。俺もう十握剣手に入ってるし、残りはルナに使って大丈夫」

「い、いいの…ユーマくん…? ユーマくんも買いたい物あったんじゃ…」


「いいよ、俺元々欲しいもの沢山あってどれか買えればいいかなぁくらいに思ってたから、剣が手に入って充分満足してる」

「ユーマくん、ありがとう…」



 って、めっちゃカッコいい事言ったけど、さっきのジャンヌやルナの二番煎じなんですけどね!

 くそ、2人がカッコ良すぎてカッコつかない。あ〜あ、早く強くなりたいなぁ。



「じ、じゃあ、買ってくるね」

「うん」

「おう」


 ルナが魔導書を持った瞬間だった。



「きゃっ⁉︎」


 ルナは魔導書を取り上げられ床に尻もちをついた。



「おいおい、貧乏くさそうな奴らが魔導書なんて高価な物必要ないだろ」

「くくっ」

「マジで田舎もんっぽいな、なんだよその格好、どこの村から来たんだよ」


 同い年くらいの奴らが絡んできた。向こうも3人で、真ん中のリーダー格っぽい奴の手には、ルナの魔導書があった。



「ちょっと! それはルナが先に取ったものよ、返して!」

「うるせー田舎もん! お前らみたいな貧乏くさい奴らが魔導書なんて買えないだろ! これは俺らが前から目をつけてた魔導書なんだ、俺らが買うんだよ!」


「買えるもん! ちゃんとお金だってっ!」

「じ、ジャンヌちゃん、わ、私は大丈夫だから…魔導書はまたでも…」


「ほらほら、そいつはそう言ってるぞ。いつまで俺らを睨んでるだよ、貧乏人」

「なんですって…ユーマも何か言ってよ!」


「あん、なんだコイツ…もしかしてビビって黙っちゃった?」

「おいおい、男なのに情けねーなー」



「な、ユーマがアンタ達なんか…」

「お、お願いジャンヌちゃん、も、もういいから…ユーマくんお願い、ジャンヌちゃんを止めて…!」


 ジャンヌは今にも飛びかかりそうな程怒りを露わにしていて、ルナはそんなジャンヌを必死に抱きついて止めていた。

 そして、絡んできた3人組はヘラヘラと笑っていた。



「……くも、」

「へ? なんだって? 声が小さくて聞こえねーよ!」



「…よくも俺の大切な友達を馬鹿にしたな! ぶっ飛ばしてやるから表出ろ!」



 我慢の限界だった。

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