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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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70話

 シャボンの魔法は、人だけでなく村全体を包み込み、泡ぶくに変えていった。魔力吸いの黒いヌメヌメを浴びていた殿下たちは、あわあわに包まれながら歓声を上げる。


「これは、なかなか面白いな」

「すごい……汚れが落ちていきます」

「やはり、魔女の魔法は変わっていますね」


「シャーリー、疲れているところ悪いな」

「いいよ。あんなヌメヌメを浴びたままじゃ、気持ち悪いでしょ」


 やがて泡がすっと消えると、殿下たちの体から汚れはすっかり落ち、魔力吸いの破片も跡形なく消えていた。


 私はこっそりドラゴンの鱗を取り出してみたが、ここでも反応はない。


(残るのはヤスラ村だけ……早く石壁を作って、向かわないと)


〈兄、魔力吸い以外の魔物がいないか調べてくれる?〉


〈了解。周囲を少し見てくる〉


 兄が村を出て見回りに向かうのを見送り、私は薬水を飲み干すと、アーミ村の時と同じように村の中央へ杖を突き立てた。


「『石壁』」


 魔法を発動させると、外周の大地がうねり、アーミ村と同じ石壁が次々と造られていく。次に魔力吸いによって壊れた、村の座面も修繕する。


(これでいいかな?)


 その最中、前の村に残っていた騎士と魔法使いたちが、物資を携えてこちらへ向かってくる姿が見える。


 そして魔力吸いの魔物に襲われカロン村には、ほとんど人が残っていないと思っていた。だが、見回りに出ていた兄は近くに身を潜めていたカロン村の人々を見つけ、連れて戻ってきた。


 兄に話を聞けば、度重なる地震を恐れ、村人たちは小麦畑にある農具小屋などで寝泊まりしていたらしい。今、村に残っていたのは見回りや様子見に来て、魔力吸いにより怪我を負った人たちだけだった。


「そうか……村人たちが無事でよかった。いま来たものたちは、物資の配給と、怪我人の手当てを頼む」


「かしこまりました」


 物資を乗せた荷馬車が村の中へ入り、騎士と魔法使いたちが手分けして、村人の治療を手当てし始める。


(よし、石壁も完成して、村人も戻った。あとは次の村……ヤスラ村か)


 その村を追い出されてから九年。次に向かう先には、久しぶりに顔を合わせることになる私の家族がいる。


 怖い。会いたくない。

 それと、彼らを気にせずいられるだろうか。


 私の心臓が緊張で、どくどくと早く脈を打つ。


〈シャーリー俺がいる、大丈夫だ。次の村へ行こう。そこにドラゴンの卵がある〉


〈……えぇ、はやく卵を見つけないと〉

 

 深く息を吸い、気持ちを整えてからローサン殿下に次の村へ向かおうと告げた。殿下は静かに頷くと、騎士団長と魔導士長へ向けて、凛とした声を響かせる。


「お前たち! 次の村、ヤスラ村へ向かうぞ!」


「はい!」

「了解しました」


 ローサン殿下は振り返り、穏やかな声で言う。


「魔女も行こう」

「うん、兄行こう」


 私たちは最後の村へと向かった。

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