25話
やっぱり、サンドイッチは揚げたサクサクで肉汁がたっぷりの、お肉がいちばん美味しい。書庫で禁魔導書を記録するのに魔力を使ったから、気付けばお腹はぺこぺこだ。
サクサクのお肉。
んん、幸せ、美味しい。
〈美味そうに食べるな。そうか、シャーリー。書庫で魔力を使ったな、俺の卵サンドやる〉
〈いいの? 兄、ありがとう〉
兄は自分の皿を私の前へ寄せた。そこから卵サンドを一つ取り、ありがたく食べる。その様子を見ていた殿下が、今度は自分の皿を差し出した。
「魔女、僕のサンドイッチも食べていいよ」
「え? だめです。殿下はしっかり食べてください」
「大丈夫、僕はいつも食べてるから。遠慮しなくで食べてもいいよ。食後に魔女が作った、クッキーとアップルパイがあるから」
強く断れず、差し出された肉のサンドイッチにかぶりつく。はぁ……美味しい。体の奥まで満たされていく。
その様子を、ローサン殿下は嬉しそうに眺めていた。ふと視線を向けると、殿下の皿にはいつの間にか?サンドイッチが山のように積まれている。
(いつの間に、メイドさんが殿下のお皿に……?)
「次は卵だ。これも食べていいよ」
「ありがとうございます」
そう言って、殿下は自分の皿から次々と私の皿へサンドイッチを移していく。気づけば、私の皿も山盛りになっていた。
(魔力を使ったあとだし……いまなら、全部食べられそう)
「美味しいです。とても幸せです」
「それはよかった。食後のデザートも入る? 無理なら、少しあとにしてもいいけど」
「大丈夫です。まだ食べられます」
私は山盛りのサンドイッチを平らげ、持参したクッキーとアップルパイ、さらに殿下が用意してくれたクリームたっぷりのケーキまで完食した。
膨れ上がったお腹を、そっと撫でる。
〈……見事な腹だな。シャーリー、食べ過ぎだろ〉
〈大丈夫よ。午後にも魔法を使うもの。これくらい食べても、魔力を使えばすぐ消えてしまうわ〉
☆
殿下の「書庫へ戻ろう」という言葉を合図に、バラ園での食事を終え、私たちは書庫へ戻っている。
「魔女、嬉しいよ。僕の婚約者候補たちは食事を用意しても、あまり食べないからね。こうして、たくさん食べてくれると本当に嬉しい」
「ローサン殿下、その言葉を彼女たちの前で口にしてはいけません。彼女達は綺麗に見せるために努力しているのです。殿下によく思われたいからこそです」
「わかってはいるんだ。ただ……もう少し、ふくよかでも僕は気にしない。兄上も同じことを、以前、話していた……」
ドレスを美しく着るため、あまりにも細くなってしまった彼女たちを、殿下は本気で心配しているようだった。
「ご心配なのでしたら、殿下ご自身が、そうお伝えになればよろしいのでは?」
「……ああ、そうだな。病は本人も辛いが――見守る家族の方が、なお苦しい」
(その言葉は、第一王子殿下のことを指しているのなら。今、尋ねてもいいかしら?)




