表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

24話

 時刻はお昼頃。用事を済ませて戻ってきた殿下は、テーブルに積まれた記録済みの本を一瞥し、


「……僕も、魔法が見たかったな」


 と、ぽつりと呟いた。


(あと一冊くらいなら出来そうだけど……今は少し休憩したいかも)


「ローサン殿下。魔法でしたら、お昼のあとにお見せしますね」


 そう言って微笑むと、殿下の瞳がぱっと輝いた。


「本当か? それなら、先にお昼にしよう」


 殿下は一緒に戻ってきた側近に、昼食の準備をたのむ。


 その様子を見て私はふと思い出し、アイテムボックスから籠を取り出した。中には、昨日焼いたクッキーとアップルパイが入っている。


「殿下、その……昨日作ったものなんですが……」

「なに? それを魔女が作ったのか?」


 殿下は籠の中を覗き込み、すぐに表情を綻ばせた。


「これは……クッキーとアップルパイか。なら、お昼のあとのお茶の時間にいただこう」


「ローサン様?」


 側近が思わず声を上げるより早く、殿下は嬉しそうに私から籠を受け取った。


「キッコー、そんな顔をするな。魔女が作ったものだ。僕を狙うあの者たちとは違う」


「かしこまりました。ですが、規則は規則です。毒味をさせていただきます。この件につきましては、魔女様もどうかお気になさらず」


「はい、わかっています」


 彼は殿下と私に一礼すると、側近は静かにその場を下がっていく。


 その背を見送り、私たちは殿下に案内されて、庭園へと向かった。


 ⭐︎


  ローサン殿下が案内してくれたのは、以前のお茶会とはまったく違う場所だった。視界いっぱいに広がるのは、真っ赤なバラが咲き誇る庭園。


「わ……バラが、とても綺麗」

「だろう? ここはいろんな種類のバラが咲く“バラ園”でね。僕のお気に入りの場所なんだ」


 殿下はそう言って微笑むと、「さあ」と促し、バラ園の中央に用意された円形のテーブルへ案内した。そして当然のように私の椅子を引く。


 殿下にそんな、使用人のようなことをさせてしまい、思わず焦る。けれど、向けられた柔らかな笑顔に、言葉がつかえて何も言えなかった。


「……ありがとうございます」


「どういたしまして。使い魔のヴォルフは、好きな場所に座ってくれていいよ」


「はい。では、こちらに」


 殿下は私の正面に、兄は私の隣に腰を下ろす。ほどなくして、メイドが静かにカートを押してやってきた。


 真っ白な器に盛られたスープ、分厚く切られた肉、卵と野菜を挟んだサンドイッチに思わずグウッとお腹が鳴る。


 兄はククッと笑い、私は思わずお腹を押さえて頬を赤らめた。その様子を、殿下に優しくに見つめられる。


「魔女。お腹、空いたね。さあ、遠慮せずに食べて」


「いただきます」

「いただきます」


 こうして、バラ園での昼食が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ