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4話「死神探偵は言った。ユーキャ〇で習った。そして炎上した」~明智~

 居間で待つ俺達は、縁側でまったりお茶を飲むスーツ姿のピエロこと山野目さんと他の譲渡希望者をまったりとまっていた。


「なあ、こんな場所抜け出さないか」

「ごめんなさい。今から私、タケノコと備蓄米で炊いたご飯を昼ごはんに食べるので抜け出しません」

「ほう、これが、バンブーブービーライスランチタイムならばしかたないか」

「なんですかそれ……食べたくてもあげませんよ……。あ、でも、チョコミントクッキークリーム味のふりかけならあげます。あとサンショウオ」

「おお、サンショウオとふりかけの甘さがたまらんな……おお、このサンショウオまさかのメスだ、卵もプチプチでうんまい!」

「え、ええ。絶対まずいと思ったのに。よこせ! 明智さん!」

「やるものか!」


 俺は活きのいいサンショウオのメスの干物とふりかけを食べ口内の幸せ係数を上げ、スパイシーさんと喧嘩していると、大騒ぎするサングラスの記者と定子を連れ頭を抱える冬季さんと後ろから恥ずかしそうに歩くマイエンジェルかや子がやって来た。


「これは、陰謀なんだって! そこの金髪売女も裏政府が関わっているんじゃ! なんで誰も信じない!」

「さっきから、キモいんだよ! 陰謀論者のクソ爺! いい加減自分が老害であるって認めろって言ってんだよ!」

「あーもう! あまり喧嘩すると二人には、この家をお譲りしませんよ!」

「すみません! すみません!」


ああ、冬季さんの頭皮から毛が逃避していく。

見るからに老人のスパイシー記者とユーチューバー定子が喧嘩しているのが分かり穏やかじゃない。


「いや、管理人さん! どう見たってこの爺が悪いんじゃん! 私の尻を触ろうとして! それを止めたら、逆切れ! どうにかしてよ!」

「そうやって痴漢冤罪が起きるんじゃ」


二人の喧嘩を見て呆れた俺は少しカッコいいところを見せないとと立ち上がると騒ぐ二人の後ろに移動し軽い手刀で二人を気絶させる。


「ほわちゃ!」

「「がぐ……」」


気絶した二人を見て、驚く冬季さんをよそに、俺は、かや子さんにキメ顔を決める。


「は、はへ! ふ、二人が気絶しますたぁ! あ、ありがたいのですが助手さん、い、一体何をされたのですか?」

「なあに、ユーキャ〇で習った私の空手黒帯手刀でしたら、熊も一撃です。いやぁ、思い出しますな真冬の北海道で行われる寒中水泳大会ホッキョクグマと三日三晩の死闘の末学んだこの手刀の腕が」

「……わあ、あ、明智さんすごい! 今度私にも教えてください!」


驚いていたが、確実に顔を赤らめるかや子さんは俺に抱き着き褒めてくれる。

嬉しくて俺も鼻の下が伸びてしまう。


「ぬははは、いやー、ユーキャ〇はね、私のアドバイスを聞いて運営しているんですよ。もちろんアドバイスをする私にも100の資格や特技ございまして、こんなもの恥ずかしい限りです」

「ゆ、ユーキャ〇すごい! ボールペン字講座だけじゃないんですね!」

「なーはははは!」


俺は嬉しくて高笑いをしていたがスパイシーさんは、俺をジトッとした目で睨んだ。


「なーにが、ユー〇ャンですかあほらしい。こうもバレる嘘をつらつらと言える」


***********************************************************************************


 こうしてどうにか落ち着いた全員は静かに下座に座り、日が落ちかけ夕方になるころ冬季さんの話をおとなしく聞き出す。


「では、皆さま、この度は、物件譲渡会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。これより、譲渡条件の再確認と注意事項をお伝えいたします」

「……いつまで待たせるんじゃ」

「お前が悪いんだろう……」


先ほどまで喧嘩していた定と記者は、俺の手とうがトラウマなのか大きな喧嘩もせず話を聞いていた。


「……これ私今日見ないので寝ていいですか」

「スパイシーさん、貴女はもっとやる気だそうか」


うとうとしているスパイシーさんを注意するが、多分ダメだろう。

このスパイシー輪廻さんは、結構欲望に忠実なのでたぶん本当になるだろう。

俺は諦めて冬季さんの話を一人で聞くことにした。


「ではまず、条件として1つ、契約完了後必ず受け取ってください。2つ、三日以上家を空けないでください……そして最後、死ぬまで住んで欲しいこの条件を守ったうえで譲渡会でのみ、二つのことを条件付けます。1、夜、何が起きても外に出ない事。2、井戸には触らないでください。この二つを守ってくれた上で今日から3日間の共同生活を行い、あたくしが、譲渡する方を決めます。もちろん途中での譲渡拒否も可能でございますぅ……ご質問がある方は、お伺いいたします」


良く分からない追加条件。

最初の夜、何が起きても外に出ないでくれ、これは、冬季さんが経験したという、夜に何かが来て騒ぐ恐怖体験から来たものなのは、事前の説明で知っていたが、井戸に触ってはいけない。

それを質問しようとしたところ俺よりも先に定子が手を上げ質問をしていた。


「あの、良く分かんないけど、なんで井戸はダメなん? なんか、霊的な気配ものはないんだけど」

「……井戸は、昔から使われておらず、どうにも変なにおいを発するため私がこのお家を譲り受ける前から誰も触ってはおりませんでした。それゆえ絶対にダメです」

「意味わかんないけど……」


定子はあまり納得していない様であったが、爺さんが捕捉を入れた。


「なんだこの女は、井戸は長年放置されるとガスがたまる。それに井戸とは水神様がいらっしゃる場所、井戸を埋めるためにもお祓いや、ガスを抜くための息抜きなど、埋めるだけじゃないんじゃ。そんなのも知らないのか」

「んじゃつまり、迷信乙って奴じゃん! カヤ今日の夜は、謎の叫び声の真相究明と井戸の祟りなんてないっていう動画を上げよう!」

「や、やめようよ~」

「やるったらやるの! じゃあ、撮影準備開始ぃ~」

「ちょっと定ちゃん~! びえええええ!」

「たくクソガキが」

「ああ! 山村様! 冴木様! お待ちください!」


これに関してはスパイシー記者、東雲さんに完全に同意見であった。

最後まで人の話は聞こう。

そのうえ、駄目と言われている禁忌をいきなりやろうなんて中々クレイジーな女だ。


「と、とにかくぅ! 皆さん守ってくださいぃ!」


冬季さんの頭は禿げ散らかす一方であった。


「ぐごおぉぉぉぉぉぉ。ぐげげげげげげ」

「お前もいい加減起きろ! スパイシーさん!」

「ぐぎゃ! いきなりチョップとかひどくないですか!」

「うるさいこれだから駄目インは」

「新手の悪口!」


いや、輪廻さん。アンタは少なくとも起きて居ようよ。

仕事だし。俺は、改めて怠惰な雇い主を見て溜息を吐きたくなってしまった。


***********************************************************************************


「あー眠い」


 俺は、夜になり、煙草を吸いに家の中にある喫煙所で煙草を吸っていた。

探偵として、夜に叫ぶ何かの謎はといておきたく徹夜をしていたのだが、特に何も起こる訳もなく飽きて煙草を吸って眠気を覚まそうとしていた。


「……なんだ、若造もタバコ吸っておったんか」

「あ、東雲さんも喫煙者なんですね」

「まあな……たく、こっちは遊びじゃないのに」


遊びじゃないとは、ただの譲渡会だろうに。

山野目さんは、この家の霊力? が欲しいらしく、つまるところオカルト趣味がこうじた趣味、定子たちは撮影のため。二人の譲渡目的は、分かったが、東雲さんの目的だけは分かっていなかった。


「あ、あの、どうして東雲さんは、この家が欲しいのですか? いわくつきの家なのに……」

「まあ、この家は、元々わしの知っている人の家でな……。それに……」

「ああ、その知っている人の為って言う事ですね」

「まあそう言う事じゃが……お前は察しが良いな」


俺を怪しい人を見る様に睨む東雲さんであったが、愛煙仲間としてちゃんと答えておこう。


「いや、俺、探偵なんですが、行く先々で事件が起きて……そのおかげで引きこもり気味になりまして。まあ、今回は俺が出向くというよりは、すぱ……輪廻さんの付き人なので何も起きないと思いますが」

「なんじゃ……やめてくれよ。こんなところで事件なんて……」


俺を煙たがるようなリアクションをする東雲さん。

まあ実際そうだろう、巻き込まれ体質の俺が、こんな曰く付き物件にいるのは中々不謹慎、俺を知っている人ならみんな俺と同じリアクションをするのだろう。


「まあ、そんなすぐ事件なんておきませんが」


『きゃああああああああああああああ!』


「な、何じゃ!」

「嘘だろう!」


俺は、また出かけたら事件が起きた。

そんな、一人じゃなければ事件に遭遇なんてしないと思っていたのに何で!

慌てた心を落ち着かせ、叫び声の方に向かった。


「さ、定ちゃん! なんで!」


そこには扉の塞がった廃井戸の蓋が開き死装束を着て首を吊り、まるで、四谷怪談のお岩さんのような姿で息が絶えている定子。

そして、それを見つけ腰を抜かし、失禁して怯えるかや子さんがいた。


「……またかよ」


探偵、明智拓。

行く先々の事件を解決していた元名探偵。

しかし実際は探偵のいくところで事件が起き、問題を解決したマッチポンプな探偵。


人は彼を死神探偵と呼んでいた。


いやなことを思い出してしまった俺は、その場から動くことができなかった。


「み、皆さん! は、早く助けてあげて! まだ生きているかもしれないんです!」

「は、はい!」

「ま、任せろ! まだ生きているかもしれない!」


 その瞬間、騒ぎを聞きつけ、走って来た輪廻さんは、急いで定子を井戸から助けようと近づく、それを聞いて、立ちすくむ俺や、冬季さん、山野目さんを置いて、東雲さんとかや子さんも走って定子を助けようとした瞬間。

井戸から火が上がり、定子を火で包んでいく。


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ! 定ちゃん! 定ちゃん! いやあぁぁぁぁ!」

「ま、待て行くな! お前も死んでまう!」

「放して! 定ちゃん! 定ちゃん!」


煌々と燃える定子。

肉を焦がす嫌な臭い、死んでいると分かる。俺は震えた手で、携帯に連絡をする。


「……あ、あの、まやさん。うん、俺……そ、そう。また事件が起きた。うん……分かった待っている」

「ちょ! 明智さん! 誰に電話をかけて!」


そうか、輪廻さんは知らないんだ……。


「俺、出かけるたびに事件に巻き込まれ過ぎていてな……出かけるときに、公安の刑事さんにどこに行くか伝えているんだ。事件が起きたら、刑事さんが、警察や救急隊を呼んでくれるんだ」

「巻き込まれるって……出かけるたびに?」

「普段の買い物なら問題ないが……ちょっとした日帰りでの旅行だと、大小関わらず何かしら巻き込まれていた」

「そんなの……完全に異世界スキルじゃないですか!」

「こんな時にもスパイシーさんは……ごめんありがとう」


俺達は、定子が燃え上がるのを見ていくしかできずに、警察が来るまでその場で立ちすくんでいたのであった。


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