2話「煙草の香りとおばあちゃんカーチェイス」~明智~
「ふー……さてと、後1時間ちょいで着くか」
「げほ……窓開けてください……煙草臭いです」
「すまん高速で窓全開だと風でタバコ吸い辛いからつい癖で」
「美少女を乗せているんですから! ちょっとは気を使ってくださいよ!」
「美少女ってスパイシーさんだろう」
「スパイシー言うな! 後、高速代とかガソリン代、後サイゼリアでの飲食代は後できっちり請求しますからね」
煙草の香りが充満する車内、スパイシーさんは、咳込みケチなことを言っている。
それを払ったら日当の金額が下がってしまうので、気が向いた時にでも払おう。
だが俺は、気の利く男、窓を少し開け、愛煙しているセブンスターの煙を外に出す。
これで車は煙草臭くないはず。
「うう……臭いです」
「窓を開けたし、車内用ファブリーズで車内は、臭くないぞ」
「愛煙者には分からないんです! この苦しみが! 大体煙草だって元々は宗教的儀式で古代の占いや、神々に捧げる植物だったりと……もっと高貴なものなのです! バコバコ吸って気を紛らわせるものではないんです!」
あーはいはい、いつものスパイシーね。
夜も暗くなり、快適に走ることのできる高速道路であったが、何分時間がもうすでに遅くうとうとしてきていた。
やばいヤニを吸引しなくては……俺は、ヤニを吸い正気を保っていた。
「全く……あまり夜の煙草は、感心しません。あまり煙草を吸っているとあまり良くないものが出ますよ」
「ないない、そんなのは出ないって」
俺は、怒った口調のスパイシーさんを笑っていると、ふと再度ミラーを見ると生身のおばあちゃんの様な人影が見えた。
「まさかな……」
「た、ターボおばあちゃんです! あ、明智さん、絶対に速度を落とさないでくださいね! お、追いつかれたら呪いで事故にあいます!」
「……漫画の見すぎか? そんなものいないぞ」
俺は、おばあちゃんのような姿が見えたところを見るが何もいない。
ほら、漫画のようなおばぁちゃんなんていないじゃないか。
「わわ、ターボおばあちゃんがすぐ横に! 速度上げて!」
「いや、制限速度……ちょ! スパイシーさん! アクセル踏もうとしないで」
俺は、追い越し車線で走っており、確かに最高速度より少し早く走っているが、それでも常識の範囲内、それなのにスパイシーさんは、さらに速度を上げようとする。
『……生意気じゃぁ、……生意気じゃあ』
……何か聞こえたような気がしたが、あまりにスパイシーさんが騒ぐせいで良く聞こえない。
「とにかく! 速度上げてください!」
「ああ、もう、俺のコペンちゃん頑張って!」
俺はうるさいスパイシーさんのため少しだけ速度を上げる。
本当に、高速でスピード違反とか普通に免停案件であり、俺は、法律とスパイシーさんが許すギリギリまでスピードを出して走る。
「おお、流石です! ターボおばあちゃんが遠ざかっていきます!」
「……いやターボおばあちゃんなんて見えなかったぞ」
「全く、車内でタバコばっかり吸うから、変な怨霊系の転生者に付きまとわれるんですよ。あの手のタイプの転生者は、煙や、不健康、儀式が好きなんです。見るからに不健康な明智さんが、神である私の前で煙草を吸うなんてまさしく儀式、煙、不健康、儀式のスリーアウトです! 命がいくつあっても持たないんですから!」
「あーそう言う設定ね」
「設定ではなく、事実であって……」
だんだんスパイシーさんの妄言にも慣れてきた俺は、また睡魔が襲ってきたので、次のサービスエリアで仮眠をとるまでの眠気覚ましにと煙草をくわえ火をつける。
「すーぅ、はー。おーい、スパイシーさん、この後、仮眠とるぞ。流石に眠い」
「ああ! また煙草……ごほ! ちょ! まだターボおばあちゃんを撒いたわけじゃないんですから控えて……」
「マータ言っているよ」
『私、音速の貴公女メリーさん、今ターボおばあちゃんの上であなたの後ろにいるの……生意気じゃあ、生意気じゃぁ』
「ぎゃああ! ターボおばあちゃんの上にジョッキー姿のメリーさんが! なんかいろいろくっつってキモい!」
「どういう状況だよ。ターボおばあちゃんジョッキーでも開催中ってか! なはは! スパイシージョークもたまには面白いな」
俺は、スパイシーさんの妄言を聞いていると名神高速草津PAまで1キロの文字が見えた。
なんか変な幻聴が聞こえたが、多分もう眠気と仮眠が取れるという事実から聞こえるモノだろう、俺は、速度を落とし、左車線に寄っていく。
『ちょ! 急な減速は止まれな……おばあちゃん!』
『むりじゃぁ』
「うん、何か聞こえるな……とっとと寝よう」
「あ、あわわ、メリーターボおばぁちゃんが近づいて、ていうか急に減速するから接触する!」
「何言っているんだ。そんな訳ないだろう」
後ろを確認したが、車は少なく、俺のコペンちゃんの後ろには、車などなく至って安全運転であったのだが、スパイシーさんは、なぜか顔を青ざめさせていた。
『『ぎゃあああああ!』』
ドン!
何かが、コペンちゃんの後ろに当たったような気がしたような気がしたのだが、特に何もなく俺は、安心して煙草は灰皿に入れ、灰に溜めたヤニを吐き出した。
「ふぅう……ターボおばあちゃんもメリーさんも都市伝説だから……ほらもうパーキングエリアつくから仮眠するぞ」
「あ、あわわ……ターボおばあちゃんとマリーさんがすごい勢いではじけ飛んでいきました……こ、これも除霊の内なのでしょうか」
「なーに言ってるんだか」
俺は、速度を落としサービスエリアに車をゆっくりと走らせていった。
そうして、駐車場に車を止めた俺は、車でゆっくりと寝ることにした。
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「あー、まじねみー! 心霊スポットなんていくんじゃなかった!」
「ちょいタカト! 今日中に家帰んないと、明日の講義遅れるよ」
「知っとるわ……。けどエミちゃん、ちょっと興奮してきたわ……口でええから頼めるか」
「きっしょウケるわ……良いけどさ」
大学生カップルは、親から借金をして買った残クレアルファードを高速で乗り回しながら気が付くと草津PAを通り越しており、助手席に座る少し化粧の濃い女性は、運転手の履くジーパンのチャックに手をかけようとした時であった。
『私メリーさん、そして彼女はターボおばあちゃん』
『危険運転は許せんのう……』
「は……何あれ……きゃああああ!」
「ちょエミちゃん、何、急に叫んで……ぎゃあああ!」
大学生カップルの横に並走するのは、ジョッキー姿で血まみれの西洋人形と血まみれで走る和服のおばあゃん。
その目は、二人を呪い殺すような恐ろしい目であった。
『許せないね。許しちゃいけないよね。おばあちゃん』
『許さぬ、許してはいけぬ』
「ちょ! 意味が分かんねえ! 待ってぎゃああ、ま、前に壁が!」
「い、いやあああああああ!」
そして、大学生の運転手は、前方不注意により目の前のフェンスにものすごい速度で衝突し、アルファードは、大爆発をし、意識を手放していった。
『おばあちゃん、おばあちゃん。さっきのコペンは残念だったけど今回はうまく行ったね。これで危険運転も減ると良いね』
『そうじゃが……さっきのコペン、やけに神々しかったが……まあ気のせいじゃろう。ワシらはワシらのやることをやろうぞ』
西洋人形とおばあちゃんはそう話すと、また音速で走り出した。
『次のニュースです。本日未明草津PA付近の高速道路で事故があり、本宮タカトさん(21)と駒崎エミリさん(22)の死亡が確認されました。これによる事故渋滞は……』
「怖いなー。あー、コーヒーうまー。スパイシーさん、甘くないそのコーヒー」
「甘いほうが頭には言いんですよねー。それと明智さんも運転気を付けてくださいね。ターボおばあちゃんたちの本質は、危険運転の警告なので。それを無視した時の死が呪いに変わるというもので」
「はいはい、スパイシー」
コーヒを飲みながらフードコート内のニュース番組を見る明智と輪廻。
決して二人がこの事件の真実を知ることは無いのであった。




