10話「死神探偵よ、それがお前のやり口か!」~明智~
「探偵さん、皆さん集りましたがいったいどうしたんですか」
「ええ、皆さんに集まっていただいたのは犯人が分かったからです」
俺は、屋敷にいたかや子さん、山野目さん、冬季さんを呼び出し決め台詞を伝える。探偵らしい立ち振る舞いは、嫌でも覚えた。
こういったシンプルな言い回しが、全員の注目を集めて丁度いいのだ。
「は、犯人って! まだ東雲さんがいない……」
「東雲さんは、犯人によって殺されました。それが犯人の犯したミスです。ええ、探偵の本業は浮気調査や、素性調査ですが、私はこういった機会に結構遭遇しますので、はっきり答えましょう」
「な、なにを言っているんですか……」
俺は、冬季さんにそう言うと、全員がざわつく。
そして、俺は、犯人を指さした。
「犯人は、かや子さんいいえ、かや子さんのふりをした定子さん、そして冬季さん。あなた達です」
「は、ははは。やだな僕と、かや子さんが犯人ですかぁ?」
「そ、そうです私は、かや子で、定ちゃんは……」
そう犯人は、二人、かや子さんと冬季さんであった。
泣きそうなかや子さん……いいや、定子さんと冬季さんは慌てるが、俺は、その動機や証拠を話す。
「まず、定子さんの殺人事件。あの事件で殺されたのは、定子さんの格好をしたかや子さんです。その証拠に井戸の中にこの黄色いかつらの毛束がありました。これをDNA調査すれば付着したものが加也子さんとなるでしょう」
「で、ですが遺体を調べれば、あの、死んじゃったのは定ちゃんってわかるのでは」
かや子さんは、俺に食って掛かるが、それを否定する。
「遺体は、炎上し、DNA調査をするまでに時間がかかります。それに物的証拠として落ちていた定子さんの身分証明書。なんで全身がひどく燃えたのにこれだけしっかりと燃えずに残るのでしょうか」
「で、ですが、それが本当として、なぜ入れ替わる必要が……」
「人生の入れ替えです。ここで出てくるのが、キーパーソンである冬季さんと東雲さんです」
「し、東雲さんがどうしたんですか? 例えそうだとして私は……何の得が、動機がないです」
そう動機、俺が最後まで分からなかった事案。
だがそれは、一枚の写真が証明した。
「この写真、この家の二階にありました。だいぶ古い写真ですが、これ、定子さんと冬季さんが映っていますね」
「そ、そんな証拠! それに、塞がれていた部屋を開けるなんて非常識な!」
怒る冬季さんであったが、殺人を犯した人間に説かれるのももう飽きた。
「そしてこの日記……。中身は、賀画名井早苗……冬季さんあなたのお嫁さんの日記です」
「やめ、やめろ! 中を読むな!」
……気持ちは察する。だが、探偵……殺人事件にばっかり遭遇している俺、死神探偵は、人の暴かれたくない過去を何度も解いてきた。
もう、後戻りなどできない。
「この中には、冬季さんとの結婚生活、そして、結婚後も東雲さんに対する愛を語る早苗さんの全てがあります。そして、二人の間に生まれた子ども定子さんのことも」
「……」
「やめろ馬鹿者! は、放してください! 輪廻さん!」
「は、放しません。アナタは危ない!」
殴りかかろうとした冬季さんを止める輪廻であったが、あの小さな体からどうしてあんな力が出るのだろうか。
だがもう、俺は話すしかなかった。
「東雲さんは、この家と自分の娘の貞子さんを救おうとした! アナタの呪縛から! そして事情を知っていたかや子さんもそれを手伝った! 二人が邪魔だったあなたは、長年のマインドコントロールで定子さんを意のままに操り、かや子さんを殺した! そして、東雲さんはあなたの飼育する山の野犬が調教通り、東雲さんを襲い殺した! これに関しては、メタボ刑事も目撃しております」
「だが……そんな、かや子さんと東雲さんが親子という証拠など」
俺は無駄な抵抗をする冬季さん言い放つ。
「定子さん、貴女、動物アレルギーですよね。エピペンと言ってすぐその存在を知って私に渡した。あれはアレルギーもちでないと分からないもの。さらに、東雲さんが、アレルギー発症と同時に貴女もくしゃみをしていた。つまりあなたは、東雲さんと同じアレルギーを持っていた!」
「あ、は、はい」
確定した。俺は、意気揚々と答えを言う。
「東雲さんを殺し、定子さんを殺した今回の黒幕、それは冬季さん! アナタだ!」
「!」
決まった。
そう思った瞬間抵抗したのは、なぜかスパイシーさんであった。
「いやいや、まずこの事件の真犯人はヤマノケで! ヤマノケに襲われた東雲さん、そして、ヤマノケに操られていた定子さんの犯行で! ヤマノケは、男性にとりつきなどしないです!」
「やまのけ? 何それ、まずそんなものはいないしロジックは完璧だ!」
「ですがマインドコントロールに無理があります! 殺された定子さん? ああ違ったややこしい加害者の女性がマインドコントロールされていた証拠なんて」
「そんなもの、あの部屋を調べれば」
「ですが!」
「犯人は確定しているんだ。証拠も出せる」
「……し、死神探偵! それがお前のやり口ですか!」
ぐぐぐ、この女、最後の最後で、何なの?
なんで犯人の肩を持つの? そんなヤマノケ? なる怪異はいないしこれは、明らかな殺人事件で。
「と、とにかくそんな曲解を騙るのは! きゃあ」
「曲解なんかじゃ……って、パイシーさん!」
俺とスパイシーさんがなぜか喧嘩をしだすとスパイシーさんを跳ね飛ばす冬季さんは爆笑しだした。
「なはははははははは、何がマインドコントロールだ! 確かに俺は、定子を操った! だがコイツをマインドコントロールなどしていない! こいつは、俺の子どもだからな!」
「や、やめて! おとおさ……」
冬季さんは訳の分からないことを言うと、ナイフで自分の胸をナイフで突き刺した。
「な、なにをして!」
「離れて! 明智さん!」
俺は、輪廻に突き飛ばされた瞬間、冬季さんの体が変質し、ガサガサな砂壁の様な肌に首は、肩に取り込まれ、胸元に異形の顔が出てくる。
そして、定子さんも冬季さんと同じように姿を変えてしまう。
『探偵さんよぉ! 一個違うのはよぉ。俺がヤマノケの支配個体の雄で、定子が俺の娘、生まれながらのヤマノケってことなんだよなぁ』
『お父さんもう私は……きゃあああああ。…………てん、そう……メツ。 テン、ソウ、メツ』
「は、なにそ……れ」
目の前に現れた異形に俺は、驚きそのまま……気絶してしまった。
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『かかっ! やっとだやっと条件がそろったわい! なんじゃ今回は、遅かったのう! なあ、玉藻!』
ワシは目を覚ます。
どうやら、ワシの宿主である明智が怪異を見て気絶した様だ。
今回は、ワシの出番が遅かったが、ワシは、愉快になりおのが部下に上機嫌に声をかけてやる。
「は……、なにぶん、今回は、怪異事件に関しては、そこの女神が関わっていたようですので……」
ワシは、目を向ける、気絶した道化にヤマノケの上位個体とその配下。
そしてそこに居たのは、ワシに怯えた女であった。
「あ、アナタは……」
『ワシの名前は! 山本……』
その瞬間であった、ワシの名乗りを邪魔するヤマノケのイヌコロがわしに襲い掛かって来た。
『だあああ! じゃまじゃあ!』
なぜ、明智と言い、イヌコロいいワシの名乗りを邪魔するんじゃ!
ワシの名は……