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はじまり~明智サイド~

 高収入、大手インフルエンサー輪廻ちゃんのオンラインサロン助手募集!

日当10万円! アットホームな職場です!


「どう見ても怪しい広告なんだよな。だが背に腹は代えられん」


常に貧乏と事件の付きまとう探偵こと俺、明智拓(32)は、都内のタワマンの前でため息をついてスマホの広告を見ていた。


「輪廻氏の助手うからなかった……」

「まあ諦めろ、輪廻様の面接は厳しいで有名だし」

「り、りんねちゃんに会えただけで嬉しい……はぁはぁ」


明らかにこのタワマンにはふさわしくない三人組が出てきて輪廻について話していた。バイトの面接はどうやらかなりの倍率だと思われるが……。


「ハン、だ……だが、この名探偵、明智拓を雇うのだ……。大丈夫だろう……」


俺は、探偵、もうそれだけでうかる。

不安な心を押し殺し、深呼吸して、タワマンの入り口で指定された番号を押すと呼び鈴が鳴った。

そして数秒後、インターフォンから一人の女性の声が聞こえる。


『面接かな? うーん、あまり頼りのなさそうな男ですねえ。まあいい、入ってください』

「……あのまだ何も」

『私を誰だと思っている……占い師だぞ……』

「……」


いやいや、防犯意識の低さ!

俺は、雇い主の防犯意識の低さに驚き案内された部屋までエレベーターに乗って移動をした。


「えーと……ここか……」


表札には鈴木と書かれた扉。

指定された部屋番号であっていることを確認し扉をノックする。


「すみません。面接で来た明智というものですが」


ととと、扉から誰かが走ってくる音が聞こえ、俺は、扉をあくのを待っていたのだが……一向に扉が開かない。

あれ、気のせいかな。俺は、扉に向かってもう一度声をかける。


「明智と言います。今日はアルバイトの面接に……」

『扉を開く前に一つ。なぜティンホイルハットをかぶっていないのですか? 死にますよ! もっと危機意識をですね……』

「……」


あ、あれ? 入る部屋間違えた?

中々にスパイシーな陰謀論者がいるのですが……俺は、アルバイトを求めてやって来ただけなのに……。


『つまりネプテリアンが……』


長々と扉の向こうの人が話しているがアツイ!

外は、初夏ということもあり、汗がにじむ。この歳になると脂汗が気になるんだよな。血糖値だって年々悪くなって……日頃の酒とたばこは健康がどうのって医者に言われるし……。


『という訳ですので、どうです? 輪廻先生特製ティンホイルハット! これなら特殊電波を防ぐ宇宙の素材がふんだんに使われており、本来10万円の所が……今なら割引価格9万8000円!』

「……開けてくれません? これから私は面接で……」

『話を聞いていました!? いいですか……もう一度言いますが』

「……あ、もしもしお巡りさんですか? なんだか怪しい詐欺師が」


うん、俺は、探偵としてまっとうなことをした。

またこういった面倒ごとに巻き込まれるんだよな。

探偵業を営みはや10年。昔は、天才高校生探偵とかいろいろ言われてい有頂天になった俺は、ある時気が付いた。

事件がある所に探偵あり……ではなく探偵である俺が赴くところで事件が起きるのだ。俺は、自分が事件に巻き込まれやすい体質と知ってから、あまり外に出ることもなく貯金を切り崩し暮らしていたが、ついに税金やら物価高やらで生活が厳しくなり割のいいバイトとしてここを選んだのだが、ほらこの通り、また事件に巻き込まれそうになり、俺は、体質のおかげで知り合った刑事さんに電話をするのだが、瞬間扉が開いた。


「あああ! すみません! う、売りませんから! ティンホイルハット売りませんから通報はしないでください!」

「う、うわ出た! す、スパイシー女!」

「だ、誰がスパイシーですか!」


ピンク色のパジャマを着た銀髪の長い髪を流した巨乳の少女が、俺の胸に飛び込み、持っていたスマホの通話ボタンを切った。

この美少女を呼びにくいのでスパイシーさんと命名した。


「で、その……スパイシーさん。輪廻さんはいらっしゃいますか? 私アルバイトの面接を受けに来た明智というものですが……」

「は、初めまして、私、鈴木輪廻っていいます……占い輪廻輪廻チャンネルでインフルエンサーをしております……あとスパイシーではなくこれは実際に……科学的根拠に基づいて……」

「……えっと、スパイシーさんがあの胸元を規制ギリギリまではだけさせながら占いをする輪廻ちゃん。若さとエロさいう、いつか商品価値がなくなるコンテンツで飽きられたらセクシー女優として人気が再加熱する微エロコンテンツの輪廻ちゃんなんですね!」

「おい、本当に私のファンじゃないですよね! アナタ! 大体私の占いは当たるものでして……」


スパイシー!

占いなんて、大体、意見の両極二つをそれっぽいふうに言って、当たったほうを信じやすい人間の心理を利用したバーナム効果。

それに人によっては表情を見て、当たったことを探り当てアキネーターのように相手の情報をかいつまんで知ったように話すコールドリーディング。

……おおっと、ここで論破したら、アルバイト採用されなくなる。

俺はおとなしく、スパイシーさんの話に乗った。


「なるほど……では、私のことを占っていただき、私もその神秘を体験させていただいてから、面接をさせていただければ、きっとお役に立てるかと思います」

「……なるほどいいでしょう。では、チュパカブラの間までお越しください」

「ちゅぱ? えっとなんと?」

「……ご、ごほん。ついて来てください。あとスパイシーはやめて」


恥ずかしそうに咳払いをしたスパイシーさんについていくとそこは、紺色の蚊帳が張られ、星をイメージとしたオブジェがいくつも吊るされており……うん実に胡散臭かった。


「……では、蚊帳の中にお入りください」

「……わ、わかりました」


あ、チュパカブラの置物だ。

なるほどスパイシーさんはユーマも好きなのか。俺はそう思い椅子に座ると、テーブルの上には、本物の水晶玉が置いてあり……。高そうだな。売ったら、少しは生活の足しに……。


「あの、あまり水晶を覗かれても困るのですが」

「すみません、どうにも高そうな水晶で……売ったらいくらですか?」

「い、異世界から取り寄せた水晶なので値段などないです!」

「はあ、そうですか」


どうやら異世界産らしいこの水晶。そう言う設定だ。絶対にマウントを取らない。

俺は自分に言い聞かせ、スパイシーさんの方を向く。


「では、占いを始めます。まずこの水晶は、アダマンタイト洞窟で見つかるはずのない水晶結晶が発見、私用に加工した一品です。一点ものです。触らないようにお願いいたします」

「は、はあ……」


俺だって、なろうやカクヨムの様なネット小説は読むから異世界知識がない訳じゃないが……設定緩くね? と思ったのは、内緒である。

スパイシーさんは、水晶に手をかざすとほのかに水晶が明るくなる。


「はあぁぁぁぁぁ! ふふふ、見えます。見えますよ。明智拓さんあなたの過去と未来がすべて見えます」

「うさんくせー」

「う、胡散臭いって言いました!? い、良いですか! 今からあなたのすべてを見抜いて見せます! 覚悟してください!」


俺はつい言ってしまった言葉にはっとしてしまった。

つい本音が出てしまう。探偵とは本当にどこまでも懐疑的でよくない。

そして少しして水晶から光が消えると、スパイシーさんが自信満々に語りだす。


「ふむ……明智拓32歳、探偵、趣味web小説を読むことで、ヘビースモーカーあっていますか?」

「まあ、あっている」

「あなたの性格は、高慢でいるがどこか優しい性格、お金には苦労をしておりますが、それほど悪い生活環境ではなかった……ほう、出身大学は、何とイギリスのフォックスオード大学、良くも悪くもない変な大学……そして、今回は金欠に悩んでおり私の助手としてバイトを始めると……火星がそう言っております……未来アナタは、私を崇め奉り……そ、その……素敵な伴侶と出会うこともあるでしょう……以上です」

「以上ですか?」

「はい、ズバッと的中でしょう! 火星さんのおかげでまるっと!」


仮性?

スパイシーさんは自信たっぷりに宣言をするのだが……色々と違うところがある。

やっぱりこいつ、輪廻は、詐欺師だ。

とっとと謎を暴いて、メタボ刑事に飯でもおごってもらおう。


「スパイシー輪廻さん! 犯人は、あなただ!」

「い、いや犯人って、何の犯罪もしていないですし、それに私は占い輪廻チャンネルの輪廻ちゃんですし……」

「ええ、その、スパイシー輪廻チャンネルのスパイシーちゃん! アナタは詐欺罪の犯人なんです!」

「犯人って、詐欺してないですが……後色々間違えて」

「おだまり! すべてズバッと分かったんですよ」

「ひどい! 話すら聞いてくれない」


しょうがないじゃん! だって探偵として……言ってみたいじゃん。犯人はお前だって! コナ〇君もそう言っていたもん!


「では証拠を提示しましょう。まずその水晶は偽物です! 私は確かに探偵で年齢や名前もあっている!」

「そうです私の占いで……」

「これはホットリーディングと言って似非占い師がよく使う手なのですが、事前に占う相手を調べておく手法です。私の名前、応募時に知っていたのは確かですそこから探偵ということを調べており、実際に今日もここに来るまでに面接を受けて落ちたキモオタ三人組がいましたがおそらく本当に私が探偵なのかなどを調べていたあなたの手先でしょう」

「だ、誰ですかキモオタって」

「それに、私の性格も高慢なのに優しい所がある……これはコールドリーディング。ですが、私の通っていた大学はかの有名な……ごほ……ォックス……げふード大学で……す。あと、私は仮性ではない剝けている」


そう、俺は、決して、オックスフォード大学の近くに作られた、フォックオード大学に等通ってはいない。それに私の息子は……か、仮性だが……ご立派で。

完全な論破でポカーンとしていたスパイシーさんであったが、開き直ったように声を上げる。


「ふははは! 確かに私は、占いのために色々調べてから占いを行いますし、バーナム効果を使って、それっぽい動画とオッパイでなり上がった女ですが! 本当に未来が見えているんです! そんな私が詐欺ですって! そんな馬鹿な!」

『ふははは! 確かに私は、占いのために色々調べてから占いを行いますし、バーナム効果を使ってそれっぽい動画とオッパイでなり上がった女です……ぶつ』


俺は、今の発言を小型カメラで納めており、その動画をクラウド共有されていた自分のスマホに流すとスパイシーさんは、表情が固まっていた。


「な、なんですかその動画! け、消してください!」

「ふふ、この動画が拡散されたら炎上確定……。さあ、動画を消してほしければ、言う事を聞くんだな」

「え、エッチなことならお断りです! アナタの様な仮性包茎じゃ、エッチなこともできないでしょうが……望みは何ですか」

「いや、俺は、もっと清楚な黒髪美少女が好きだから、後、仮性言うな。俺が求めるのは……日給10万で雇ってください!」


そう、俺の目的は、ただ助手をするだけで日給10万という好待遇を受けること。

俺はプライドを捨て土下座をかますのだが。


「お、お断りです!」

『ふははは! 確かに私は、占いのために色々調べてから占いを行いますし、バーナム効果を使ってそれっぽい動画とオッパイでなり上がった女です……ぶつ』


見事に断られる俺であったが、先ほどの動画を流す。

そう、泣き落としでも脅迫でも何でもいい! 俺は、お金のためなら何でもやる。


「雇ってくれなきゃ、この動画を流すぞ」

「探偵よ! それがお前のやり口か!」


こうして、俺は見事、日給10万円の仕事を手に入れたのであった。

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