第8話
:
翌朝、ホテルに来た リーと一緒にランソン市内のタクシー会社に出向いき
重大な事実を聞かされた。ナーラムから日本人を含め3人の客を乗せた運転手が居る
というのだ。
「それだ!」ティエンがその運転手に話を聞きたいと言うと、丁度外で車を洗って
いるようである。
「ぢるさん、きっと何かわかりますよ!」一緒に来た リーも心配げである。
運転手の話では地震当日、中国から来た客をナーラムに送った帰りに幸運にもランソン
までの客を見つけ、彼らをそのままドンタン駅で降ろしたというのだ。
「ドンタン駅には中国からの電車が来ています。やはり・・・」
ティエンは運転手に彼らがどこへ行くと言っていたか聞いてみた。
はっきりとは分からないが、客の話の中で何度もニンミンという中国の街の名前が
出たという。
ニンミンはドンタン駅から2時間ほどの町である。
「とにかくニンミンに行ってみましょう。ドンタンまでお願いします」
ティエンは運転手に言った。幸いぢるのパスポートは帰りのトランジットに備え
中国のビザを取ってある。3人はドンタン駅から再び中国ニンミンに向かった。
切符の手配などはリーがやってくれた。電車の中で今後の事について話し合う。
まずニンミンの駅でホテルなどがあるかを確認する。それほど大きく無い街なので
中川商事とつながりのある企業が無いか?タクシー会社で日本人を乗せたか確認する・・・・等々。
リーが中国語を話せるので大変助かっている。しかもリーは中国用の携帯電話の
チップも持っていた。
「リーさんが居てくれてよかったわ」ぢるは改めて出会いの大切さを感じていた。
駅から出るとタクシーが一台だけ停まっていた。駅は市街から少し離れた
場所にある。
3人がタクシーに乗り込むと運転手が何か言っている。ぢるがリーに聞くと
「今日お祭り。車入れないところある、言ってる」リーがそう言うと運転手が
さらに何か言った。リーがティエンに通訳して話した。
「ぢるさん、運転手が僕達が日本語を使ったのを聞いて、たまに日本人を乗せると
言ったそうです。もしかすると・・・もう少し詳しく聞いてます」
と言ってリーに話しかけた。
「ぢるさん、中国でもこの辺りは日本人が少ないです。とにかくその日本人を
よく乗せるという建物へ行ってもらいましょう」
ほんの少し希望が見えたぢるであった。
ニンミンは比較的整備され、町並みはどこかヨーロッパを感じさせる。
タクシーの案内でその日本人をよく乗せるという建物の前に車を停めた。
「ぢるさんここだそうです。中に入ってみましょう」ティエンの言葉に鼓動が
早くなった。
J.corporation中国にしては珍しい英語表記の
看板のついた3階建で、エントランスは大理石である。
分厚いガラスの扉を開けると受付用のカウンターが置いてある。
パーテーションを隔てた事務所から麻の白いスーツを着た50前後に男が
出てきた。
「どちらさま?」男は日本語で3人に話しかけた。それを聞いたティエンが
名刺を出し日本風に挨拶をした。
「私は中川商事のグエン・タイン・ティエンです。初めまして。実は中川商事の
山田所長のことをご存じないかと思いまして・・・」
ティエンがそう言うと男は3人を奥の応接室に案内した。
「皆さん中川商事の方?」男は名刺を出しながらぢるの方に向かって言った。
名詞にはJ・corporation 後藤俊と書いてある。
「いえ、・・私は山田の婚約者です。今回の地震で心配になりこちらに来ました」
ぢるがそう言うと男は心配そうに言った。
「それはそれは・・・しかし地震はベトナムでしょ? 何故こちらに?」
ティエンが経緯を説明した。
「なるほど・・・お困りですな。だが申し訳ないが山田さんはの事は存じ上げません」
「この辺りで日本人を見かけたことはありませんか?」
ぢるがすがるように言ったが、結局ここでは有力な手がかりは得られないかった。
そう思いながら事務所を出ようとした時・・・ぢるがあるものに気づいた。
しかしその事には触れず建物をあとにした。
「ティエンさん山田はやっぱりここに来てるわ!」タクシーに乗ったぢるが
ティエンに言った。
「ぢるさんも気づきましたか?・・あの携帯電話には見覚えがあります」
事務所の机の一つに置いてあったドコモのプレミニの事である。
山田は海外に行く時携帯を2台持っていく。
1台はノキア。もう1台はこのプレミニである。
これは国内専用で、海外ローミングには対応していない。
それがこの中国にある。「ぢるさん・・・やはり山田さんは何かトラブルに巻き込まれて
います。しばらく張り込みましょう」
ぢるは先ほどの建物をじっと見つめた。
So What - Jonh Coltrane and Miles Davis
http://www.youtube.com/watch?v=RjwVwASlVn4&feature=related




