第6話
丁度昼になっていたので、3人は食事をするために地元で評判の魚料理の店に入った。
見たことも無いような大きなエビがテーブルに運ばれた。バターをふんだんに使い
とても美味しい。
食事を終えた3人はタクシーを拾い、ヤンモー湖に向かった。
途中リーが日本のことを色々訪ねてきた。彼女は10年ほど前旅行に来ていた
日本人と恋に落ち、一時は本気で日本に行くことを考えたほどだったらしい。
しかしその当時、日本はベトナムからの入国を厳しく制限していた。
同じ東南アジア諸国から売春を目的に、多くの少女達が流入したからである。
「今、日本にはたくさんのベトナムの人が住んでいます。働いてる人も多いんですよ」
ぢるはゆっくり、リーに言った。確かにぢるの言うとおり多くのベトナム人就労者が
居る、がほとんどは研修生という名目で月8万ほどで働いていた。
しかも、日本に行くにはびっくりするような借金をしなくては無理である。
事情を知っているティエンは黙って聞いていた。
タクシーが 中国側ヤンモー湖に到着する頃には4時近くになっており、そこから
歩いて1時間半、ナータオ村に着く頃には日が沈みかけていた。
3人はティン一家に挨拶をしランソンに向かうことにした。
ぢるはティンに中国で買ったお土産を渡し、再会を約束してナータオ村を後にした。
途中チェン・イエンまで来ると携帯電話が使えるようになり、ティエンは中川商事に
確認の電話を入れていた。
山田からの連絡はまだ無いという。
「もし彼がランソンに居るなら携帯電話が通じるはずだし、何か連絡すると思います。
おかしいな?・・」
ティエンがぢるの顔をチラッと見た。後ろのシートではリーがすっかり眠っている。
「ねえティエンさん。ランソンは大きい街なの?」
「そうですね・・最近中国側との高速のおかげで賑やかになってきました。
町並みは昔からあまり変わってませんが、倉庫や物流のための施設が増えましたね」
ティエンは何か考えているようだ。
チェン・イエンからランソンまでの道は地震の影響を受けておらずスムーズに走行できた。
走行距離は150キロほどである。このペースでも3時間近くかかるだろう。
「ティエンさん恋人は居ないんですか?」
ぢるの質問にびっくりしたようにティエンは振り向いた。
「寝てるのかなと思いましたよ。いいんですよ寝てください」
「だって、さっき眠ったから大丈夫。ティエンさんこそ疲れてません?」
「疲れたら途中で止まりますから、大丈夫です。そうそう恋人は実は日本に居るんですよ」
ティエンの意外な言葉にぢるはびっくりした。
「そうなんだ・・・・・日本人なの?」
「ええ、名古屋でアルバイトしてた時に知り合った女性です。でももう1年も会って
ません・・・・・・」
ティエンは少し寂しそうな顔をしている。
「ティエンさんはどんなところでバイトしてたんですか?女の子と知り合うなんて
飲食店?」
「そうです。ベトナム料理店で働いていました。女性はアオザイを着ていましたよ」
「日本人が?スタイルが良くないと働けないですね。私には無理だわ・・」
そう言うとぢるは笑った。
「そんな事無いですよ。ぢるさんは奇麗だしスタイルもすばらしい!きっとアオザイが
似合いますよ。そうだ!山田さんが見つかったらアオザイを作りに行くと良いですよ。
2日でで出来ますから」
「すてき・・・」ティエンの言葉にちょっと顔が熱くなっていた。
車の時計はもう9時を過ぎている。ステレオからははJAZZが流れていた。
:
Just the two of us Grover Washington, Jr.
http://www.youtube.com/watch?v=sarB0ni3B2Y&feature=related




