第18話
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「お母さん誕生日おめでとう!」
「おめでとう!ほら、由美もおめでとうって言って」
「おばあちゃん おたんじょうびおめでとう」
「まあ、ありがと。あら?何かしら・・・由美ちゃんが作ったの?」
折り紙で作った箱を大事そうに眺めるぢるを、優斗の家族と、彩香の家族が暖かい
眼差しで見守っていた。今日はぢるの53歳の誕生日を祝うため、綾香の家族が
アメリカから帰国していた。孫は3人。どの子もぢるの子供たちに似て可愛かった。
「お母さん、お父さんが居なくなってから少し痩せたみたいだけど大丈夫?」
「全然平気よ!今ね、近所の人たちとフリスビーのチーム作ってるの。それに高校時代の
友達と時々登山に行くのよ」
「お父さんの3回忌も終わって、気が抜けちゃって病気になるんじゃ無いかと心配
してたの」
「母さん、これ僕たちからのプレゼント。母さん行きたいって言ってただろ?」
「へぇー・・・何かしら? ミュージカルのチケットかしら・・・・」
封筒を丁寧に開けながらぢるは嬉しそうに笑っていた。
「まあっ・・・・・旅券じゃないの?こんな高いもの・・・・えっ?サイパン?」
「ティエンさんに聞いたんだ・・・母さん父さんと知り合う前にステキな恋をして
いたって・・・」
「ティエンがそんなことを・・・・でも・・・何で旅券なの?」
「ティエンさんが言ってた。母さんはその恋人と約束してたんだって・・・
30年後にサイパンの海岸を一緒に歩く・・・・」
そう言いながら娘の彩香は言葉を詰まらせた。
「私ね、お父さんも好きだけど・・・そんな恋がしたいなって。高校の頃ティエンさんに
その話を聞かされてちょっと複雑だったけど・・お母さんを羨ましいと思った」
「そして選ばれたのが僕なんですよ」笑いながら綾香の夫である庄次が言った。
「みんな知ってたの?・・・そう・・父さんも知ってたのかしら?」
「言うわけ無いじゃん!」綾香が笑いながら優斗の顔を見た。
「俺はコイツに聞いたけどね。誰かに言わなきゃ我慢できない!とか言って」
「そうなの・・・でも遠い昔のお話・・・」
遠い日を思い出すようにぢるは言った。




