第17話
「ぢるさん!お久しぶりですー。 ティエンです!」
「久しぶりー!こちらが奥様?初めまして。ぢると申します・・・・日本語は?」
「はい。少し・・・ダイジョウブね・・・タオと言います」
「ぢるさん。これが息子です」
「チャン君よね? 可愛い・・・・」
「ぢるさん。ご家族は?」
「どうしようか迷ったんだけど・・・・やはり主人にはベトナムでの事をあまり話して
いなかったから・・・」
「そうだったんですかー・・・すいません。ご家庭は大丈夫ですか?」
「ええ。今日は実家の母が来てくれてるの。それに主人は金沢に出張だから」
「久しぶりの日本は随分変わりましたね・・・」
「不景気だからねー・・・無くなった店も多いわ。日本食で良かったよね?
いいお店があるの!高校時代からの友人の店で・・・・・」
ぢるは3人を麻布にある、てんぷら料理の店に案内した。
昔からの家屋を改造した店内はどこか懐かしい昭和の匂いがした。
「ぢるさん、お子さんは優斗君だけですか?」
「もう一人生まれたのよ。女の子。彩香っていうの・・・・これが写真」
「おおー・・・優斗君、随分大きくなってる!かわいいなー彩香ちゃん。2歳位?」
「もうすぐね。早いわねー時が経つのは・・・・」
「ぢるさんは変わりませんね。ずっとお若い・・・」
「何言ってるんだか。さあ料理がきたわ・・・はい、ビール・・・・」
楽しい時間が過ぎていた、
帰る頃になりティエンが証券の事を口に出した。
「例の換金された件なんですが・・・面白いことがわかりました・・・」
「面白い事?」
「はい・・・消失した証券は複数の会社が保有しているようです。今回は4社が関係して
いました。数年前香港のブローカーから購入したそうです」
「そうなの。なんだか不思議ね・・・こっちの中では既に終わったことなのに、事件は
続いてるなんて・・・・それはそうとベトナムには帰らないの?」
「暫らくは・・・ロスアンゼルスの次はシドニーって決まってるみたいです。今度は
石炭の勉強しなくちゃ・・・」
「大変そう・・・頑張ってね。奥様も身体に気をつけて」
帰りのタクシーの中でぢるは山田と二人で歩いたサイパンの砂浜を思い出していた。
「未来は決められないのかな。やっぱり・・・・・・・」
それからもぢるの生活は何も変わらず平穏な日々が続いた。優斗は大学を卒業し
自動車メーカーの開発部に所属している。妹の彩香は来年短大を卒業する予定だ。
幸せな年月だったかもしれない。山田の面影は時にぢるを悲しませたが、彼の言った
ひとつひとつの言葉がぢるを勇気付けてくれるようだった。
そして更に数年の月日が経過した・・・・
:
D. Scarlatti - Sonata K13 G major, Scott Ross
http://www.youtube.com/watch?v=rqBbxJJ8g5A&feature=fvw




