第15話
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今回のぢるのベトナム滞在は2週間である。観光目的ならビザは要らない。
一度戻って身の回りを整理し、こちらに長期で滞在するつもりであった。
山田の会社に臨時雇用という形で、3ヶ月のビザを申請すことにしている。
もちろんずっとホテル住まいというわけにはいかないので、手ごろなアパートを
探すつもりで山田の休みの日、不動産屋に出向いたりもした。
ぢるの帰国の日、ノイバイ空港のロビーで二人は12時50分発のCX香港行きを
待っていた。
10分遅れだそうである。
「ねえ、アパートが決まったらすぐ電話してね。荷物を送らなきゃいけないし・・・・」
「わかったよ。でも、こちらで全部揃えたっていいんだよ。一緒に買い物するのも
楽しいんだから」
「うん。必要なものだけにするわ。なんだか楽しみ」
「メールでアパートの写真送るよ。あっ、ゲートが開いたね・・それじゃあ待ってるよ。
気をつけて・・・」
「ええ、貴方も気をつけて・・・絶対無茶しちゃだめよ」
「わかってる」
出発ゲートの前で軽く唇を交わし、ぢるはセキュリティチェックへ向かった。
振り返ると黄色いアロハシャツを着た山田が、白い歯を見せながら手を振っている。
それがぢるの見た山田の最後の姿であった。
山田の消息がわからなくなって、何度もぢるはベトナムへ行った。
その都度ティエンが力を貸してくれたが、何一つ手がかりは得られなかった。
その間に上司の杉田が警察の事情聴取を受け、中国マフィアの金の事について自白した。
杉田はジェイ・コーポレーションの闇資金を証券化する手助けをしていて、その証券を
ベトナムの中川商事ハーティン支社の金庫に隠していた。
そこは普段はほとんど使っていない建物で、売れ残りの在庫などを一時的に保管していた。
それが今回の震災で全壊し、隠してあった証券を入れたバッグごと消えたのだった。
犯人は分かっていない。50億の証券は不明のままであるらしい。
その事もあり中川商事はベトナムからの撤退を決めた。
それによりティエンも解雇されたが、ぢるが訪問すれば必ず出向いてくれなにかと
協力をしてくれた。
しかし、山田の消息に関する情報はまったくと言っていいほど無かったのだ。
ぢるはひょっとすると今回の証券消失事件と山田がどこかで繋がっているのでは
ないのだろうか?そう思い始めていた。勿論現地の、公安もそういう方向で
捜査をしているようである。50億という金額だけにマフィアの動きも未だに
あるようである。そして1年が過ぎようとしていた・・・・・
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