第13話
同時刻ベトナム・ハイフォンでは大変な事件が起こっていた。
ぢると山田が乗った車が、藤塚インターチェンジを越えた辺りで山田の携帯が鳴った。
センターコンソールにある携帯電話が青白く光っている。
「ぢる、悪いけど電話に出てよ」山田が言った。
「私が出てもいいのかしら・・・仕事の話じゃないの?」
といいながらディスプレイを見た。
「何この番号・・84・・ベトナムからだわ」ぢるは急いで通話ボタンを押した。
「もしもし山田さん?大変な事になりました!・・・・」相手はティエンである。
「ティエンさん?私ぢるよ、どうしたの? 何かあったの?」
「ぢるさん、お久しぶりです。山田さんは?」何か緊迫したものを感じ携帯を
山田に渡した。
「どうしたティエン、何かあったのか?」
「杉田さんが撃たれました!」杉田は山田の上司で取締役部長である。
今回の事件と被災したベトナムの事情を考え、しばらく山田の変わりに現地を
仕切っていた。
「なんだって!?・・・それで まさか・・・・・」
「幸い銃弾が貫通したために命に別状はないと」
ティエンの話では、杉田が仕事帰りによく行く日本料理店の駐車場に車を停めた
ところを撃たれたらしい。 銃声はしなかったという。
「ティエン君、それはプロの犯行だなサイレンサーを使っている・・・・・
だとすると殺そうとしたわけじゃないな・・・多分脅すつもりなんだ」
山田は言った。普通銃はサイレンサーをつけると威力が弱まる。
しかしこれが一旦体内に入ると渦を描きながら弾丸が止まる。
まず生きてはいられないはずだ。
あえて貫通しやすい場所を狙った・・・
「ぢる、暫らくベトナムに行かなければならない」
すまなさそうに山田が言った。
「わかってる・・・でも私もついていきます。もう一人で心配するのは嫌!」
ぢるの家に着くまで二人は色々話し合ったが、渋々山田は同行する事を認めた。
3日後、二人はベトナム・フレンチ・ホスピタルの302号室にいた。
「いやあ、すまなかったね。ぢるさんまで・・」弱々しい声で杉田が言った。
「部長良かったです、命に別状がなくて。それで・・犯人を見たんですか?」
山田の問いかけに「部長さんまだそんな事を聞ける状態じゃないのよ・・・ダメじゃない」
ぢるが 諭すように征した。
「いや、ぢるさん大丈夫だ、肩を撃たれただけだから。君達の顔を見たら
安心しちまって」
さっきまで看護婦をからかっていたという杉田の話を聞いて、二人は少し安心した。
「犯人の顔はわからない・・夜なのにサングラスしてやがった。こっちの公安も
調べてるみたいだが、どうもプロの仕業らしい・・・・」
車のシートに残った銃弾はワルサーから発射されたもだという。
最近ではあまり使われない銃らしい。
「しかし部長、助かって良かったです・・ところで部長、何故撃たれる事に?
例のカバンと金の話と何かつながりがあるんじゃ?」山田が監禁されていた時
中西に聞いた話である。
杉田は思い当たる事は無いという。
「部長、中国のジェイ・コーポレーションはどうなりました?」
ぢるとティエンが中西を見つけた会社の事である。
「さすがにこの国の公安も中国までは捜査出来ないらしい。中国の公安に任せてある
そうだが・・・・・実はティエンが見に行ってくれた話だと、すでに建物には誰も居ない
そうだ」
「そうですか・・・とにかく僕が明日から事務所に行きますから、ゆっくり休んで
ください。」
二人は杉田にお見舞いのマンゴープリンを渡すと、病院を後にした。
「せっかく二人できたんだ、何か美味しいものでも食べに行こうか?」
山田がぢるに言った。
「山田さんに任せるわ。どこか美味しいところ知ってる?」山田の左腕に
手をまわしながら、甘えるように微笑むぢるであった。
:
George Benson - Take Five
http://www.youtube.com/watch?v=6HjzLhqoufg




