第一話
この小説は以前投稿した短編をリファインし再投稿しました。一部追加した話もあり再び楽しんでいただけるのではないでしょうか。尚、登場人物の「ぢる」という女性はインターネットラジオ「ねとらじ」の番組、猫☆印のDJさんです。この作品自体、その番組内で朗読していて頂いたものを編集いたしました。
今回は各話ごとにイメージする音楽を選んでいます。是非youtube等で聴きながら
読んでみて下さい。
あとがきのURLはyoutubeのものです。
それではまた最終話でお会いしましょう。
いったい誰がこんな結末を予想しただろう?
ぢるはもう一度その記事を見直した。読むというよりただぼっと眺めている
そんな感じであった。
事故死・・・・・ その文字だけが彼女の視界の中心にあった。
今から3年前、ぢるはサイパンのランディングビーチを山田と歩いていた。
「もう2ヶ月になるね。早いものだ・・・」
「まだ2ヶ月よ。私たちの未来はこれからでしょ?」
「そうだね・・・そうだ!僕らの未来を一つだけ決めておかないかい?」
「えっ? 未来を決めるって・・・・どういう意味かな?」
「ずっと先のこと・・・そうだな30年後ってどうかな? その時この海岸を
もう一度君と二人で歩く。どう?そんなに難しい事じゃなさそうだろ?」
「素敵・・・・・約束じゃなくて未来なのね。必ずやってくる・・・・・・」
ぢるは彼の言葉を、光る波のリズムの中で夢のように聴いていた。
その夏も、公園通りの街路樹は歩行者を日差しから守るように覆い茂っていた。
仕事が終わって、いつものようにバスを待っているぢるの前へ1台の車が停まった。
運転席には見覚えのある顔が・・そう、いつだったか彼の仕事関係のパーティで
同席した山田の上司だ。
「ぢるさん!大変なんだ。彼の赴任先のベトナムで巨大地震が発生して連絡が
取れなくなってるんだ。僕らはこれから会社で対策本部を作る。君も来たまえ」
その言葉にぢるは動転した。さっき職場でこの地震の臨時ニュースを聞いていた
からである。
死者 行方不明者・・・7万人以上・・・・
その後の記憶は無く、気づいたのは彼のオフィスの革張りの黒いソファーの上だった。
パーテーションの向こうでは慌ただしくスーツ姿の男たちが動き回っている。
「ぢるさん。大丈夫ですか?」先ほどの上司が近づきながら声をかた。
「はい。彼は・・大丈夫なんでしょうか?・・」震える唇からやっと音を出すことが
出来た。
「心配要りませんよ。彼ならきっと大丈夫。幸いにも震源地からは80キロ程離れた
地域に居たようです。ただ、まだ安否の確認は出来てないんです。通信網が壊滅状態
らしく・・・」
彼は少し微笑みながらぢるの顔を見ていた。その微笑が今まで身体全体を押さえつけて
いた何かを取り除いてくれた。
多少引きつった笑みを返したぢるは、オフィスの中央に置かれた大型テレビに目をやった。
NHKの特番が死者9万人と伝えている。
2日後、ぢるはベトナム行き政府チャーター機の窓から、光る太平洋を眺めていた。
ベトナムは山田が赴任する数年前まで、社会主義政権により貿易を制限していた。
それがドイモイ政策によりダムの崩壊のように一気に民主化されていくことになる。
とはいっても完全な民主社会ではなく、今回のような出来事があると情報が極端に
少なくなる。
首都ハノイ近くのノイバイ空港に到着した際も、機内で長時間待機させられ、日本側との
対応違いを感じざるを得なかった。
「ぢるさんすみませんね、こんなに待たされるなんて・・・・
日本から6時間ほどなのにもうここで4時間も足止めだ、お腹すいてませんか?」
同行している杉田が頭をかきながら政府関係者の方を見た。
「私は大丈夫です。杉田さんこそ何か召し上がってください」
ぢるは窓の外をぼんやりと眺めた。相変わらず軍のトラックが行き来するだけである。
時計を見た・・・21時。日本時間である。時差はマイナス2時間だ。
19時に時計をセットし直す。
23時。ぢるはホテルの窓から首都ハノイの街を見ていた。
眼下の国道はこんな時間でもオートバイやトラックであふれている。
18階でも聞こえるクラクションの音。ヘッドライトとテールランプが混ざった
国道を見ながら明日の事を考えていた。
こんな曲を聴きながら読んでみて下さい
The Carpenters' Superstar http://www.youtube.com/watch?v=7-nlLQEfxx8




