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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
屋敷生活編
6/50

番外編前半 世界旅行

 獣族、狼の村にはある決まり事がある。それは十歳になったら一人前の戦士になるため、世界を回る旅に出る事である。


一人前の戦士。如何なる敵も華麗に薙ぎ倒す力と、何事にも屈しない強い意思。それと無償の善意を振りまける優しい心。


一人前の戦士は獣族の子供の……いや獣族みんなの生まれた時からの憧れだ。


俺も当然自分が一人前の戦士になれる事を夢見て育って来た。


 旅に出る前日、父から二本の剣を貰った。一本は子供の手には余る大きな剣。もう一本は誰でも待てそうな短剣。


「この大きな剣は一人前の戦士の剣だ。これの似合う戦士になって帰って来い。」


父の言葉を受け、翌日パンパンに路銀の詰まった袋と、短剣を持って俺は旅にでた。


最初は近くの別の狼の村。次にその付近の人間の街。それから少し先の荒れ廃れた人間の村にも行った。他にも様々な場所に行った。世界の絶景ポイント4!の滝も見に行った。そこまで大した滝ではなかった。


 旅に出て巡る場所で得た経験、価値観は村では一生得られないような物ばかり。俺はこの旅をとても楽しんでいた。


ここだけ聞くと過酷な旅と言うよりただの観光旅行の様にも聞こえるが、道すがらきちんと鍛錬をしている。


毎日の素振りに加え、ランニングと剣だけでなく、体作りも怠らない。


 ある日人間の街で見過ごせない事が起きた。


それは二人のガラの悪そうな人間が、一人の気弱そうな人間によってたかって金を巻き上げている場面だ。


無償の善意は戦士の証。


見捨てる理由など何処にもない。


俺はその二人に話しかけた。その人からお金を盗るのを辞めろ。と


それを聞いた二人は怒り、喧嘩となった。


相手は二人。だが両方素手。対してこちらは一人だが父から貰った短剣がある。


加えて獣族が生まれ持った身体能力と、旅を通じて鍛えた剣技と体。負ける理由はどこにもない。


 「この狼野郎!」


「邪魔するな!」


二人の怒号で戦いの幕は開けた。


 一人が早速右のストレートを仕掛けてくる。それを華麗にすっと躱して、反撃の一太刀!


 と思ったらストレートを躱した瞬間に、もう一人の方に腹にキツイ蹴りを入れられた。


「おぇ」


「おい、コイツ弱いぞ」


地に伏せた俺に容赦なく蹴りを浴びせる二人。反撃の為立ちあがろうにも体を押さえ付けられる。


 結果は惨敗だった。全身をボコボコにされ、気弱そうな人の金を盗られ、その人もボコされたあげく、父に貰った剣も折られてしまった。


何故こうなったのか。理由は明白だ。でも自分では認めたくない。そう思いたくなんてなかった。


こうなったのは俺の慢心のせいだ。父から剣を貰い、旅に出てちょっと鍛錬をしたからと、強くなった気でいた。


俺はちっとも努力なんてしていなかった。出来ていなかった。


 俺が今までしていたのはただの自由気ままな、観光旅行だったんだと、思いしらされた。

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