屋敷へ
一通の手紙が届いた。俺に、ソウカに手紙を出してくる奴なんて、1人しかいない。
手紙を開く。差出人はソウカの父。ミネラでは無かった。
一体今更何の用があるのだろう。娘が記憶喪失になった時も、遠く離れた土地に異動する時でさえ、顔どころか、声すら聞かせなかった奴が。
内容を見て、俺は思わず溜め息が出た。
掻い摘んで説明すると、社交界に顔を出せ。だそうだ。
社交界というと、貴族達がよくやる、ダンスパーティ的なやつかな?
詳しくは分かんないけど、俺はそこに行く事にした。
――
1つ。どうしても確かめたい事があった。これが分かれば、俺を悩ませる謎を解決出来ると思ったからだ。
確かめたい事。そこに行く前に、一旦全てを整理しよう。
久しぶりの熟考タイムだ。
まずは、俺が気になる事。それはミネラが本当にソウカを大切に想っていたのか。
では、何故その発想に至ったか。
それは、ソウカのライバルを自称するショウが、簡単に、いとも容易く、簡単に俺の正体を見抜いたからだ。
確かに、ミネラの時は記憶喪失という前提があったけれど。それでもその前提があってもショウならば、言い換えると、ソウカを愛する人ならば俺が中にいると見抜けるのではないだろうか?
次に、ソウカの死因。俺は長らく、悩みに悩んだグランドが、苦渋の決断の末ソウカを殺した。もしくは、グランド以外の奴が殺した可能性を考えていた。
しかし、最近グランドが呪いによって行動をコントロールされていた事が判明した。
なので、この事実を、時系列順に並べれば。
1 グランド父により、グランドが、ソウカ殺害を呪いによって唆される。
2グランドが、ソウカを殺害
と、なる訳だけど、先日の迷宮の件を受けて、これも間違っているのではないかと思い始めた。
魔法使いには、絶対の法則がある。
1つは近距離戦に弱い。つまり剣士と相性が悪い。
2つ目に、魔法使い同士の一対一の闘いならば、絶対に格下は格上に勝てない。
という法則がある。
これらの事から考えると。言っちゃ悪いけどグランドは弱い。
そして、ソウカは神童。魔法業界では有名人。超級クラスの実力者。
いくら不意打ちでも、いくら、ソウカが油断していたとしてもグランドに勝機はあるのか?
そして、俺の気になる最後の事。
ソウカ両親や、屋敷のメイドさんが、異常にソウカに対して冷たい態度をとる。
何故?
以上の事から、俺は以下の仮説を導き出した。
ソウカは両親にも愛されず、相手にされず。メイドさん達にも冷たくされて。頼みの綱で、唯一の癒しの筈のミネラにも実は愛されていなくて。
居場所もない、頼れる人もいないソウカは、人生に絶望する。そこで、耳にした話。グランド家が自分の命を狙っている。
これはいい機会だと思ったソウカはワザとグランドに自分を殺させた。
つまり、ソウカは。ソウカ•オーベルの死因は、ナイフをワザと受けた、自殺。
これは、ただの仮説。でも全くあり得ない話では内容に思う。
でもあり得て欲しくはない。
だから、俺は今回の社交界の招待を受けた。屋敷に戻れる良い口実が出来たから。
俺はミネラに会いに行く。俺の仮説を真っ向から否定する為に。
――
学校を発つ前に、みんなに挨拶していく事にした。
最初はケイとメイさんに。最近では、ケイは随分と流暢に喋れる様になって。もう1人でもこの世界で生きていけそうだ。
「…そういう訳で、暫くは顔を出せなくなります」
「そうなんですね。…後敬語やめて下さい」
つい、未だにメイさんには敬語で察してしまう。彼女の雰囲気に気押されてるのかな。
「ソウカさん。いつ頃帰ってこれますか?」
「そうだな。…しばらくは無理かな」
俺は笑って答えた。
「そうですか。では、ソウカさんが帰ってくる時まで、俺もっと喋れる様に練習しときますね!」
今でももう充分だと思うけどな。
さ、次は校長の所でも行こうか。
「って、訳でしばらく行って来ます」
「それは、寂しくなりますね」
校長は微笑む。やっぱこの人優しい。
「そういえば、ソウカさん。お目当ての魔法書は見つかったのですか?」
そうだった。校長には世話になったのに、詳しく言って無かった。
「はい。無事に見つける事が出来ました。その節はどうも、ありがとうございました」
俺は頭を下げる。
「いえいえ。上手くいったのなら何より。お役に立てたようで」
校長はまたも、微笑む。やっぱこの人優しいわ。
次は、グランドかな。ショウにも挨拶したかったけど、アルスレッドに触れられて以降、目を覚さない。
「居るか?」
研究室の扉を叩く。
「いるよー」
中から、グランドの声。俺が扉を開けようとすると、
「待って、開けないで!」
止められた。グランドが部屋の中を見せないように、最小限だけ扉を開けて、ぬるりと出てくる。
「なんだよ、見られたくないもんでもあんの?」
「ははは。まあね」
わざとらしく笑うグランド。ま、悪い事を隠している訳でも無さそうだしいいか。
「それで、何の用だい?」
俺は、社交界に行く旨を伝える。
「ははあ。僕は断るつもりだったけど、一緒に行った方がいいかな?」
「いや、1人で行くよ」
俺だけで、決着をつけたい事もあるしな。丁重に断ろう。
「それはそうと、アレス様から貰った魔法書だけど。習得の方はどうなのさ?」
「ああ。ソウカの魔力と合わせて、大方習得の目処は立ってるよ。」
「そっか。なんだか申し訳ないないね。共犯者と言っておきながら、僕は何にも出来ていなくて」
「いや、お前はお前でいてくれて助かってるよ」
それに、悪いと言うならば俺の方だ。結局、コイツには話せないままで終わってしまった。
予感があった。死の予感が。予知ではなく予感。つまり、確定情報ではないのだけど、俺はソウカを復活させる際に死ぬだろうと予感している。
というのも、俺がソウカ復活の魔法を発動させるのは、ソウカの体に入ったままで行う。そうじゃないと、魔力量が足りなくなるからだ。
復活魔法は俺と、ソウカの魔力を合算させて行う。計算では、俺の魔力は全て使う。そうなると、ソウカの魂が体に入る時、魔力切れの抜け殻になった俺は、たちまち体から弾かれるだろう。
だから、面倒事が残る中、グランドを置いて行く事は本当に申し訳なく思う。
そんな訳で、場面は代わり水竜車。そして、その場面も終わり、俺は懐かしの屋敷の前まで戻っていた。
そして、ミネラを見つけた。




