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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
屋敷生活編
4/50

別れと出会いと

 ザディと出会った時を思い出す。ザディは俺が夢を叶えたら、俺達の旅は終わると言った。


 つまり、その終わりが今だ。


色々な事があった旅だった。


「スライム。」


 一人の時より、ずっと楽しい旅だった。


「俺が昔言った言葉、覚えてるよな。」


 だから。今から言われる言葉が、怖い。怖くて悲しい。


「お別れだ。」


 ザディは多くは語らなかった。俺が無事に人間の身体に入り、自在に身体を動かせるのを確認した後に、すぐに俺の元から去っていった。


 「今度は俺の番だ。」そう言い残して。


 俺は、もう振り向かない彼の背に精一杯の感謝を込めて、頭を下げて礼をした。


――


 朝日はさらに顔を出し、やがて全身までを剥き出した。

つまり、もう昼頃。俺はいまだにあの開けた森の中にいた。


 何か障害があって出られない訳では無い。単純に身体と心に力が入らないのだ。


 夢を叶えて燃え尽きてしまったのか。ザディとの別れで、放心状態になってしまったのか。その両方か。


 俺は目を閉じる。そして一息つく。


…よし。何かやろう。


 思い立ち、立ち上がる。


せっかく念願叶って人間になれたのだ。ずっとやりたかった事を沢山やろう。


 まず、俺はその辺で手頃な木の棒を手に取った。


俺はずっと剣を振ってみたかったんだ。


 記憶の中の人間を思い出し、棒を振る。


しかし、どうも上手くいかない。


 やり方が分からない。どう振れば剣士の様になれるのだろう。


 俺は次に魔法を出してみようと、手に力を入れて、前に突き出した。


 しかしこれまたやり方が分からず、魔法は出ない。


さてどうしたものかと、考えて、俺は近くの街に行ってみることにした。


 分からないなら知ってる人に訊けばいいと思ったからだ。


さあ出発!


 と。なって。一歩踏み出して、自分の服を見る。


血で、胸の所が真っ赤かだ。


 これはマズイ。こんなんで街にいったら騒ぎになる。


しかし服を変えることは出来ない。


 俺は土や泥を付けまくって、血を隠す事にした。


数分後。中々高級そうだった服は見る影も無く。真っ黒くろの、どろっどろに成り果てた。


 これで良し。さあ出発!


るんるん気分で、森を下りる。街の影が。人の声が。足音が聞こえてくる。


 もう街はすぐそこだ。


俺が歩く音。聞こえてくる足音。だんだんと音は大きくなる。


 聞こえる足音はどうやらこちらに近づいて来ているみたいだ。


 誰だろう。と考えた所で、すぐに答え合わせが出来た。


目の前に、人間が現れた。


 ピシッと制服を着こなした人間が。


何か挨拶しなきゃ。と思った矢先に、人間は胸ポケットから何やら機械を取り出して、叫んだ。


 「こちらA班!オーベルの森入り口付近で、ソウカ様を発見しました!」



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