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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
学校生活編
38/50

作戦会議•実行

 俺は事のあらましを、顛末を全てグランドに話した。


俺達のこれまで、俺の正体。そしてショウを加えたこれからを話し合った。


 グランドは途中途中で何か言いたげな顔をしていたけれども、ひとまず全てを説明する。


 ショウは終始グランドを見ては顔をしかめて、何かに納得したのか頷いて。


 「…そういう訳でこれからは3人で行動するのがベストだと思うんだが、どうかな」


 「ああ、問題ないよ。でも、最後は結局…」

「そうなんだよな。そこは…」


 「あの!ちょっと良いですか?」

とうとう、痺れを切らして、我慢の限界と言った感じにショウが声を上げた。


 「あの、グランドさん。ちょっと1ついいですか」

険しい顔でそう尋ねる。


 「な、何かな」

その表情にやや圧倒され気味でグランドは返す。


 「グランドさんの、その黒いのは何故付けているんですか?」


 黒いの?何を言ってるんだ?

ショウの指差す方向を見るけれど、黒いのは見つからない。


 当のグランドもそのようで、何を言ってるんだコイツ。みたいな顔をしている。


 「って事は自らつけている訳ではないんですね」

「ショウ。俺達には何も見えないんだが。何かあるのか?」


 「ええ。ちょっと待って下さい。」

そういって、ショウはグランドの後ろに周り、「失礼します」と言って何かを掴んで見せた。


 自身の胸辺りに掴んだものを突き出す。


 「これ、見えませんか?」

「見えない」


 俺達2人、意図せずに声が被ってしまった。


 「これは、言ってしまえば呪いの様な物です。形状は黒くて丸い。まん丸です」


 「呪い?何でそれが僕に?」


「分かりませんけどグランドさん。直近で何か不可解な事や事象が起きませんでしたか?」


「うーん。不可解…例えば?」


「例えば、事故によく会うとか、よく転ぶとか怪我をするとか。後、何か一つの事しか考えられなくなるとか」


 「事故、怪我」と呟いて、グランドはハッとした。


 何か心当たりがあるようだ。


 グランドは一息ついて、意を決したようにショウに向き合う。


 「ショウさん。僕が今からいう事は決して貴方に許して欲しいだとか、自分の正当性を主張するだとか、自分は悪くないだとか、そういった目的で言うことじゃない」


 「僕はそれに対してとても悪いと思っているし、後悔している」



「何のことですか?」


「ソウカを殺したのは僕なんだ」


 ショウは大きく目を見開いた。俺もまさか今言うとは思っていなかった。


 「…それに呪いが関係しているって思っているんですか?」


 「分からない。でも当時僕は、ソウカを殺せと命じられた時、一日中、寝ている間夢の中でもその事しか頭に無かった。…確かに当時の僕はそれほどまでに思い悩んでいたけれど…」


 ショウは顎に手を当てる。


「寝ている間…ともなればそれは呪いの可能性が高い、ですかね」


 呪いと言われて、腑に落ちた。完全に納得出来た感じだ。


 「ですが、グランドさん。呪いというのは少なからずその人にその気持ちが無ければ発動しない物です。


 つまり、貴方にはソウカちゃんを殺すという意思が少なからずあったという事です」


 「うん。それは否定出来ないよ」


「でも、今の僕にはそういった負の気持ちはない。今の僕のソウカを生き返らせたいという気持ちに偽りはないよ」


 グランドが色々と言っている所悪いと思ったけど、俺は思わず聞いてしまった。


 「なあ。誰がグランドに呪いをかけたんだ」


「さあ。私はグランドさん周りの人間関係は分からないからなんとも言えないけど。


 でも、グランドさんのそういう負の気持ちを知っている人といったら大分犯人は絞られるんじゃないの?」


 やはり、あの人なのだろうか。


 「…多分、僕の父だと思うよ。あまり考えたくはないけどね」


 「実の親にそんな事されたら私なら即縁を切りますね。即切りです」


 「…ひとまず、これは私が壊しておきますね」


部屋に、バキッという木材が折れたような音が響く。


ショウが手を払っている様子から見て、呪いは解除出来たみたい。


 「ありがとう。ショウさん」


「いえ。それより早く今後の方針を決めましょう。時間はないんでしょう?」


 チームは完成した。グランドとショウ程の実力ならば、校長の試験は楽々、とまではいかなくとも合格は確実だろう。


 問題は俺だ。どう足掻いても今のままでは試験の突破は愚か、もしかしたらそこで死ぬかもしれない。


 「今すぐにパワーアップ。なんて都合のいい事は起きる訳はないだろうし」


「…悪いな。俺が弱いばかりに」


「ねえ。本当に後数日で、上級クラスになる事は出来ないの?」


 ショウの問いに俺は実演で答える。


 右手で初級魔法の水球を出す。左手で中級魔法を発動しようとする。


 「この通り、初級は出来るんだが中級は発動すら出来ないんだ」


 「ソウカちゃんの魔力と体があるのに情けないね」


その通りすぎて、何も言葉が出て来ない。


 「ね、先生の試験はさ、魔物全員を倒さなきゃいけないの?」


 この問いにはグランドが答えた。


 「倒せ、ではなくて相手にしろって言われたんだ。迷宮でやっていけるかを見る試験だから必ずしも倒す必要はないんじゃないかな。」


 「ふーん」


ショウは再度、顎に手を当てる。


「えっと、スレイヤさんだっけ?スレイヤさんはスライムなんだよね?」


「ああ」


「なら経験あると思うんだけど、森で他の魔物と相対した時に、体が震えたりとか、すぐに逃げ出したくなったりとか。そういった経験ない?」


 経験あるどころか、それが日常だった。魔物に出くわせば速攻で逃げる。隠れる、見つかったら逃げる。その繰り返しだった。



 「ある。滅茶苦茶ある」


「あれってさ、いわゆる威圧されてるからなんだよね。実力差がありすぎる相手に睨まれたらそうなっちゃうの」


 そこで、グランドが会話に入る。


「まさか、威圧で試験を合格させる気なの?」


「それしかないですよ」


それに反論するようにグランドは返す。


「相手は迷宮区の魔物だよ?いくらソウカでもそこまで実力差が開いているとは思えないよ」


 「いや、ソウカちゃんだから開いてるよ。今のソウカちゃんの魔力は測定不能。つまり超級魔法使いの中でも上澄みの実力がある」


「え、今のソウカってそこまで強くなってるの?」


 「うん。スレイヤさんは魔力の扱いだけなら出来るみたいだから威圧も使えると思う」


 「物は試しでやってみようよ」


俺達は、街外れのとある森に移動した。そこで、適当な魔物を探す。


 見つけた。目の前に正確な名称は分からないけど、大きなサソリの魔物がいる。


 「サソリを見て、思いっきり睨みつけて、全力で魔力を体外に放出してみて」


 ショウの指示に従い、物音を出してサソリの注意を引き、対面する。


 サソリをしっかりと目で捉えて、思いっきり魔力を出す!


 魔力は波の様に辺りに侵食し、森にいた数いる生物はたちまちに撤退し、サソリはブルブルと震えだした。


 

 ショウがサソリに触れる。ペチペチと硬い皮膚を叩く。


「完全にコイツに戦意はないよ。成功です」


魔力の放出を辞めると、サソリはその巨体を周りの木々を薙ぎ倒しながら大慌てでその場から去っていった。


 その後、俺は他の魔物にも効力があるのかを試した。



結果はサソリと同じだった。


 試験はこの作戦で行く事になった。


しかし、ショウは呪いの事といい、威圧の事といい。何でも知ってるって感じだ。


 「ショウ。色々ありがとうな」


俺はお礼を言った。


 「いえ、ソウカちゃんの為なんで。後言っときますけど私。貴方方2人の事は嫌いです。反省してるだとか、後悔してるって気持ちは十分分かりましたけど、


 貴方達は私利私欲、自分の為にソウカちゃんを殺して体を奪った事に変わりはないですからね。私達の関係はあくまで利害の一致ってやつです」


 まあ、当然の反応だろう。ショウの言っていることは全て事実なのだから。


 ――

 

翌日、試験当日。俺達はショウも参加する旨を校長に伝え、早速試験を受ける事となった。


 受ける順番は俺、グランド、ショウ。


受ける直前に、グランドから耳打ちされる。


「始まる前にちゃんと僕が言ったセリフをそのまま言うんだよ」


 俺は頷き、試験会場である演習場に足を踏み入れた。


 演習場は屋内なのに、野原の様だった。


 目の前には校長と10体の魔物達。


その魔物のどれもこれも、スライムの俺とザディでは逃げ切るイメージが出来ない程に強そうで巨大だった。


 「では、準備はよろしいでしょうか」


校長のその言葉に待ったをかける。


「…1つ、私のお願いを聞いてもらっても良いですか?」


「なんでしょうか?」


俺はグランドに指示されたセリフを頭に浮かべてその通りに声に出す。


 「先生もご存知の通り、私はとても強いです。結果は分かっているのにわざわざ力を振るうなんてそこの魔物達が可哀想です。なので、そこの魔物達を無力化出来たら、私を合格にしてくれませんか?」


 「いいでしょう。元よりソウカさんは試験を受ける必要すらないですからね。見事無力化出来たならば、貴方に合格をお渡ししましょう」


 校長は手を上げ、それを「始め!」の掛け声と共に手を下ろした。


 瞬間、全てを吹き飛ばす勢いでこちらに向かってくる魔物達。俺は魔物の攻めの一手が俺に直撃する瞬間に全身から魔力を放出した。


 たちまち、地は鳴り悲鳴を上げ、辺りは土埃で舞い、魔物の視界は奪われる。


 俺から出る魔力の波は魔物全員の全身を飲み込み、蛇が巻き付いたように全員の体が動かなくなる。一切の行動が許されなくなる。


 知能の低い魔物ですら直ちに、瞬時に死を悟った。


魔力の波がやがて一帯を飲み込んだ時、全ての魔物は泡を吐き、その場に力なく倒れ込んだ。


 俺は校長に、なるべく威厳を、見せれそうな低い声と、キメ顔で言う。


 「全員、動かなくなりましたよ」


校長は拍手し、笑い声を上げて俺に合格を言い渡した。


 続くグランドとショウは、普通に魔法を使って魔物達をぶっ倒した。


 グランドは終わった頃には少し、ほんの少しだけ息を上げて、ショウは余裕の表情で、それぞれ合格した。


 そして俺達はその足でそれぞれ荷物をまとめて、その日のうちに学校を出て、迷宮に出発した。


 



 



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