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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
学校生活編
33/50

怪しい人と親しみやすい人

 「ここは図書室ですのでお静かに」

司書らしき人に言われて少女はシュンとして座り込み、小さな声に戻る。


 「す、すみません」


それより今この人、我がライバルって言ったな。つまりソウカの事を知っている人間。


 俺は以前のグランドの言葉を思い出す。


「知り合いからしたらダメダメだよ」


俺のソウカの演技は知り合いからみたらダメダメ。


知り合いにすら通用しないのに、目の前の少女はライバルだといった。


 ライバルだからお互いの事は知り尽くしているし、お互いに競い、切磋琢磨して。長い間一緒にいる。多分だけどライバルってのはこういう関係だと思う。


 俺は少女とはあまり言葉を交わさない方がいいと判断した。


 「…人違いだと思います」

「え?だって貴方ソウカでしょ?ソウカ•オーベルでしょ?」


 図書室から出ようとする俺の手を彼女は引き留める。


「小さい頃に一緒に上級試験を受けて、決勝で名バトルをしたソウカなんでしょ?」


 「…さあ。私はよく覚えていないですね。記憶力が悪いもので」


 俺は少年の手を引いて早足で図書室から逃げるように去った。


 ――


 その後、移動教室付近の物陰で待機。帰って来たグランドと一緒に話を纏める為に一度寮に帰った。


 「校長先生に、この子の正体を話した上で寮に住んでいいか。ちゃんと聞いて来たよ」


「どうだった」


「いいってさ。メイドの人を学校にいれるのも問題ないって。僕が聞いたら、考える間もなく即答したよ」


「本当か。ひとまず難しい事は解決出来たな」


「…本当に解決出来たのかな」

グランドは少し考えている、神妙な面持ちで呟く。


「何かあったのか?」

「君はおかしいと思わないのかい。前回の事といい、今回の事といい。あの校長は僕達に甘すぎる。優しいすぎる。何か企んでいるように思えてくるよ」


 俺はあの校長の顔を思い浮かべる。

優しい顔、雰囲気、言葉。


「そんな、考え込む事かな。何か企んでいる風ではなかっただろ」


「…だといいけどね。僕はしばらく警戒しておくよ」


 この話が終わったのを感じたので、話題を変える。


「それより、さっきソウカのライバルだって奴にあったぜ」

「ライバル?そんな人いたかな…名前とか顔は?」


「名前は知らない。あんまり話さない方がいいと思って。女の子だったよ」


 「女の子ねぇ。ソウカにライバルとかっていたかな。」


 グランドはあの少女について何も知らなかった。一体あの人は何者なんだろう。


 ま、そこまで気になる事でもないので記憶の隅にあの人の事は閉まっておこう。


 後、しばらくは図書館には近寄らんとこ。


 その後、いくつかの話し合いを経て。


少年はグランドの寮の部屋でしばらく寝泊まりをする。グランドは研究室で寝る。俺はなるべく早く屋敷に手紙を出して、メイドの派遣を要請する。


 今後の方針はこんな感じになった。


 少年を部屋に連れて行き、身振り手振りで設備の使い方を教えた後、俺は自室で手紙を書く事にした。


 手紙の内容は、軽い環境報告と、家庭教師向きのメイドを派遣してほしい旨。それだけ書いた。


 描き終わりすぐに、学校近くの配達屋に持っていく。


「オーベルという町に届けて欲しい」

「オーベル…ああ。はいはい。しかしかなり距離が空いてますね。お客さんこっちの方は大丈夫かい?」


配達員は指を丸くして、お金を表す。


「ええ。これで足ります?」

俺は所持金の全てを出した


「あらお客さん。結構の金持ちですね。では確かに承りました。すぐに届けますよ」


 手紙の配達。配達屋は世界各地に点在している。

手紙の配達は通常、そこまでお金のかかるものではない。


しかし今回の様な海を渡り、かつ早くに届けたいという場合にはそれ相応の大金が必要となる。


 おかげで俺は家から貰っている、月のお小遣いを全て使い果たした。これからしばらくは貧相な食事で我慢するしかない。


 グランドが講演会で聞き、分かった情報。何を聞いたのかはまだ教えられてないけれど、俺達は今から魔法のもう特訓をする事となった。


 部屋だと、魔法は使えない。演習場も混んでいたので俺達は研究室の屋上へと向かった。


 「空に向かって撃てば迷惑はかからないでしょ」

「撃てればだけどな」


「ああ。君は何故か初級魔法すら上手く使えないんだっけ」

「そうなんだよ。なんか魔力が全く流れないというか」


「ま、いっぺんやって見せてよ」

俺はグランドから渡された、魔法者の初級魔法のページを開く。


 水球。それを撃ってみることにする。以前は発動の兆しすらなく、無惨に失敗した水球。


 体の管に魔力を順番に流す。手に掛けて魔力を入れる。


空に手を上げ、思い切り力をいれる。次の瞬間、空に放たれる、大きな水球。


「あ、出来た…」

と思ったのも束の間。水球は俺の手から大して離れずにフッと消えいるように姿を消した。


 「成功かどうかはひとまず置いておいて。全然出来てるじゃない。僕はてっきり発動すらしないものだと」


「いや、俺もまさか出来るとは思ってなかった」


「ならなんで出来たんだろうね。今に至るまでに、練習したとか?」


 「いや、屋敷で失敗して以来、一度も練習していない」

「なら、君がソウカの体に適応したのか、適合したのか」

「ま、いずれにしてもこれから魔法の修行。頑張っていこうね」


 魔法の向上なら授業に出るのはどう?と提案すると、グランドはそれに反対した。


 なんでも、

「この学校の授業の形式が一般的なら僕もそうしたよ。教師が説明して、生徒がそれを聞く。でもこの学校は教師が説明して、生徒がそれを聞いて、聞いた内容をキチンと実践出来るかを確かめる。そういう授業だった」


 学校案内で見た授業風景。そういえば、生徒が前に立ち魔法を披露していた。


「あの天才少女ソウカ•オーベルが、碌に魔法も扱えないってなったら君の事が周りにバレてしまうよ」


 そういう訳でグランドが俺に魔法を教えてくれる事になり、ここ数日は2人でもう特訓に勤しんでいた。


 少年は、最初こそ絶望の暗い顔をしていたけど、ここ数日でこの世界に慣れてきたのか、言葉こそは通じないけど俺達との距離は縮んだ気がする。


 以前よりも警戒はされていない。

こちらの食事もちゃんと、食べてくれるようになったし。


 少年についての問題はなんとかなりそうだった。


しかし、一難さってまた一難。今度はグランドに問題が起きた。少年に部屋とベッドを譲ったせいで、最近は床で寝るようになったグランド。


 身体中が痛くなってしまったらしい。


「僕も歳をとったものだね」

「連日の床寝は年関係なく誰でも体痛くなるだろ」


 そういう訳で、今日こそは家具を買いに行く事にした。

ここ数日、部屋から出せてやれていなかった少年も連れて3人で。


 いくら人に見られたら不味いからって部屋にずっといてもらうのも体に悪いだろう。


 キチンと少年に帽子とローブを渡して、体と顔を隠してもらう。


 「よし、出発」

「先に言っとくけど俺もう、お金持ってないからな」

「もとより、君に払わせる気はないよ」


 その日は、なんだか街が騒がしかった。


 道行く人の囁き声を聞いたところ、なんでも遠くの大国の騎士団?とかが来ているらしい。


 「騎士団が来てるなんて、穏やかじゃないね。大きな事件でもあったのかな」

「さあ。でももしそうなら今日は大人しく寮に帰るか?」


 グランドはジッと俺の目を見て訴えてくる。もう限界だと。体が限界なのだと。


「分かった。帰らない。」


 家具屋は学校からかなり距離がある。なので、屋台で食べ物でも買って食べながら歩く事にする。


 またもや手いっぱいに買い込むグランド。

「懲りないな。前もその前も食べ切れなかったくせに」

「今回こそは大丈夫さ。胃を大きくしてきたからね」


 何言ってんのかよく分かんないけど、俺は自分の分は買わなかった。


 少年には食べたそうにしてるのを買ってやる。

「ほい。あげる」

 

 少年はペコリと頭を下げて、それを受け取った。


「ん、あれじゃないか?騎士団ってやつ」


 大通りを歩いていると、遠くに装備した集団が見える。


「どうだろう。騎士団っていう割には人少なくない?」


グランドのいう通り、確かに集団は全部で3人。団という割には少ない気がする。


 集団は何かを話し込んでいる。すると3人のうちの1人がこちらに気づき、こちらをジッと見つめる。


「なんか、僕達見られてない?」

「…まさか、気のせいだろ」


 当然、気のせいなんかではなかった。集団の1人が早足でこちらに向かって来た。


 「えぇ。なんでこっちにくるのさ。何か僕らしちゃったかな」


 その1人は俺達の前にくると、ジッと少年を見つめた。


その1人は、30代くらいのガタイのいい男だった。剣を腰にかけ、マントと鎧。確かに騎士団っぽい装備。


 「あの、何か僕達に用ですか?」

警戒心剥き出しのグランドが男に尋ねる。


 「いや、悪かったな。別に危害を加えるつもりもねぇから、その怖い顔辞めてくれよ」


 男はデカい体に反して、優しそうな顔と声でそういった。


親しみやすそうな印象を受ける。


 「じゃあ、なんでこっち来るんですか」

しかし、グランドはまだ警戒を解かない。デカい男が怖いのかな。


 「うーん。そうだなぁ。ちょっとそいつの顔をよく見せてもらっていいか?」


 「ちょっと、」


 グランドが何かをいい終わる前に、男は跪き、少年を見つめ、そして呟いた。


 「…黒髪黒目。間違いねぇな」


 男は立ち上がり、後ろにいる仲間と思われる集団に声をかける。


 「お前ら、先に帰っといてくれ」

「了解です」


 集団は言う通りに、どこかに帰って行った。


 そして男は今度は俺達の目を交互に見て言った。


 「話がある。勿論危害は加えない。俺について来てくれないか?」


 「何、するんですか。ここで話す事は出来ないんですか」

グランドの警戒はさらに高くなる。


 「出来ない。誰かに聞かれる訳にはいかない事だからだ」

 

 男はグランドを見る。


「…じゃあ、何を話したいかここで簡単に言うけどな」

男は声を小さくする。


 「その、帽子の子の話だよ。そいつの命が危ないって話」


「命が?」


「おう。少しは俺について来てくれる気になったか?」


 グランドは俺の方に振り返る。


「どうする?」

「聞くだけ聞いてみた方がいいと思う」


 グランドは男に向き直り、口を開く。


 「分かりました。お話を聞かせて下さい」


 「おう。助かったぜ、そこの嬢ちゃん」


 俺達は男に着いて行き、小さなカフェに到着した。


店内はカフェなのに、客が誰もいない。


昼時のカフェに誰も客も、店員すらいないのに少し不気味さを感じる。


 「なんで、誰もいないんですか?」

男に疑問をぶつける。


「ああ。ここカフェじゃねえのよ。カフェ風の家。オシャレな家が好きでな」


 ここは家だった。


「入ってくれ」


家の奥、カフェでいうバックヤードに案内され、そこの椅子に座るように指示される。


 「ここには俺達以外誰もいない。だから何を話してもらっても大丈夫だからな」


 「色々話す前に、お前らに聞いときたいんだが、お前らはどれだけその帽子の子について知ってる?」


 グランドの顔には戸惑いが見える。少年についてどこまで話していいのか。この男は信用出来るのか。考えているんだろう。


 俺が話す事にした。


 「つい数日前に会ったばかりなので詳しくは知りません。でもこの少年は俗に言う未開の民なのではと思ってます」


 「未開の民ね。ま、良い線いってる。」


 「てか、正解だな。そいつはお前らの予想通りこの世界の人間じゃない」


 男はそう言って、場を整えて、話を始めた。


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