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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
学校生活編
31/50

謎の人

 「やあ。おはよう」


 翌日、朝。待ち合わせ場所に着いて早々。グランドは元気よすきる挨拶をした。


 コイツのテンションは寝て起きて、一晩過ぎたくらいでは低くはならなかった。


 対して俺はいつもの如く朝だからテンション低め。今日のコイツにちゃんとついていけるか不安だ。


 「さ!出発!」


「……おー」


 この町。名前は忘れちゃったけど。とても面白い作りをしている。


 学校をてっぺんに階段や坂を下って、民家のある住宅街、商店街に行く。


 遠くから見たらまるで鉄とレンガで出来た山のように見える事だろう。


 そして今回の目的地、講演会が行われる場所は、学校を下って下った先にある大ホール。


 なので、寮からはしばらく歩く必要がある。


 「何気にこの街を初めて見て回る訳だけど、あれだね。この、街は僕好みだよ。」


 「それは良かったな」


「あれ、何かテンション低いね」


 お前が高すぎるんだよ。そういうツッコミは心に止めて。


俺も街を見てみるけど、確かに良い雰囲気だ。俺も気に入った。


 全体的にレンガ造り、そして暗めの色を基調としている。


 明るすぎるのが、苦手な俺はこのくらい落ち着いた色の方がいいのだ。


 「ん?」


 街を見る俺の目に、この街、いやこの世界では異質ともいえる物が目に入った。


 大木の下。ここらでは見かけない柄の布を身につけている。


 いや待て。よく見たらあれ人だ。背を向けているから一瞬樽かなんかと勘違いしたけどあれ人だ。


 訂正。大木の下。ここらでは見かけない服で蹲った人がいる。


「どうしたの?」

グランドに聞かれて、俺はその人の方に目線をやる。


「何か珍しい服だなって」


 

 「本当。珍しいってか、見た事ないね。僕は」


それだけいって会話は終わる。所詮は俺たちにとってはそれだけの存在なのだ。


 確かに異質な何かは感じたけど、それは講演会に行く用事を蹴ってまであの人に関わろうと思う程の異質さではない。


 だから俺はその道をただ通り過ぎようとした。


 でも道を通り過ぎる時。チラリと見えてしまった。その人が泣いてたのを。


 気づけば俺の足はその人に向かい、その人の肩をポンと叩き話しかけていた。


 「君。大丈夫?」

「…?」


 こちらを見上げるその人。


 その人の顔を見て、俺はまた異質さを感じた。


 その異質さってのは決してその人の顔が異形だとかそういう訳で無く。見た事のない人種の顔なのだ。


 勿論、俺の知らないどこかの街、村出身だとも考えられるけど俺は昔ザディと共に世界中。かなりの人間の集落を旅し、見て来た。


 そんな俺が全くこの顔の系統に見覚えがない。


 それに加えて見た事ない服。全く別の世界の人間なんじゃないかとも思った。


 それを思ったのはその人も同じだったのか。はたまた何か別の理由があったのか。どっちか分かんないけどその人は俺を見るなり、パニックといった風に走って逃げてしまった。


 「あ、ちょっと待ってよ」


逃げるその人。追いかけようとする俺。それを引き止めるグランド。


 「待つのは君だよ。そろそろ行かないと講演会始まっちゃうよ」


 グランドの止める理由はもっともだった。しかし俺にはあの人、いや随分若かったし少年と呼ぶ事にしよう。


 少年を見過ごせない訳がある。


「分かってるけど。あの少年は泣いてたんだよ。見過ごせないだろ」


「…分かった。分かったよ。でも直ぐに終わらせるよ」


 グランドはやれやれといった感じだった。


 逃げる少年。追いかける俺達。


 幸い距離はそう引き離されてなく、幸い少年の足はあまり早くなくて、体力もないみたいで。


 みるみる距離は埋まっていく。


 「ちょっと待ってよ、別に危ない事しないよ!」


俺は少年にそう言う。少年は振り返る。


 その時だった。振り返らせてしまったせいで少年は道の出っ張りに足を引っかけ、思い切り転んでしまった。


 「あ!」

「悪い、大丈夫か?」


 少年は足を擦りむいてしまった様で足から血が出ていた。


「ソウカ、そこどいて」


 言われたまま俺は傍に移動する。


 グランドは少年の前に跪き、少年の足の傷口に手を重なる。


 何するの?とは聞かずとも分かった。回復魔法だ。


 グランドの手が淡く光り、そこに魔力が集まっているのだと分かる。

 

 「今、治してあげるからね」


光は少年の足を包み、みるみると血が止まり、傷口が治ってい…


 治っていかなかった。むしろ何も変わらない。


 「あれ、おかしいな」

「グランド、治せなさそうなのか」


グランドは今度は両手で、先程よりも強く魔力を込めてやってみるけど結果は変わらず。少年の足は痛々しいままだ。


 「ごめん。治せなかった。僕程度の魔法使いでもこれしきの傷なら治せると思ったんだけど…」


 グランドはガックリと肩を落とした。


 そのせいで、よく頭が回ってなかったからグランドは気づかなかったのかもしれないけど、俺はこれを見てある違和感を感じる。


 いや違和感ってより謎、思い当たる事の方が正しいかな。


 回復魔法というのは魔法の中でもかなり難しい部類。


 でもそれは四肢のどこかの欠損を治すだとか、グチャグチャになった体を治すだとかに限った話で、この少年の様に少し擦りむいちゃった程度の数は初級魔法使いでも治す事が出来る。


 グランドは僕程度と自分を卑下したけど、グランドは上級試験に受験資格がある。一般人からしてみれば上澄の方の魔法使いなのだ。


 そんな凄い実力と豊富な知識。確かな技量を持ち合わせたグランドがこれしきの傷を治せないはずがない。



 「グランド、この少年を支えるの手伝ってくれ」


俺はひとまず傷口を洗う為、場所を移動する事にした。


 少年を俺達2人で支える形で歩く。少年は抵抗なく俯いている。


 なんというか、もう観念しました。焼くなり煮るならお好きにして下さい。といった全てを諦めてる感じだ。


 「ねえ。ずっと少年じゃあれだからさ。良ければ君の名前を教えてくれないかな」


 俺は少年の警戒心を少しでも緩和させる目的でそう尋ねたのだけど、少年は俯いたまま何も話してくれない。


 だと思っていたら、傷口に水を掛け、血を洗い流している最中にポツリと少年は口を開いた。


 「|\<$%€>$€」


何を言っているのかさっぱりだった。少年の滑舌が悪いだとか、そういう訳じゃなくて、この世界の言語ではない、全く未知の言葉だった。


 これにはグランドも興味を唆られたようで、少年をジッと見つめている。


 俺達はここに来る前、こんな話をしていた。


 ――


 「もうちょっとで講演会は始まる訳だけどさ、君はこの子をどうするつもりなんだい?」


「どうするって、ほっとく訳にはいかないだろ」


「確かにそうだけどさ。僕達には何よりも優先してやるべき事があるでしょ。」


 「分かってる。俺はそれをやらない訳でも、どうでも良いとも思ってない。でもやっぱり目の前の少年をほっとく事は出来ないよ」


 「その気持ちも分かるけど、それは僕達の仕事じゃない。乗り掛かった船だから傷口を治す事まではするけど、それが終わったら警備隊にこの子を引き渡そう。」


 俺は警備隊と聞いて、ますますこの少年をほっとくことは出来ないと思った。


 これもまた世界中を旅した時の話だけど、俺は一度も善良な警備隊というのを見た事がない。


 故にこの少年を警備隊に連れて行くというのには反対したい。

 

 ――


 という話をしていた。


 グランドをどう説得するかを考えていたけど、どうやらその必要はないかもしれない。


 「なんだろう。今の言葉。聞いた事がないよ。」

「ああ。傷口が治らなかった件といい。この少年は謎に満ちているよなグランド君。」


 「だね。この子を調べたくなって来たよ」


よし食いついた。


 「でもそろそろ時間だしな。始まっちゃうし。どうしよう」


 グランドは悩んだ。悩んだ末、俺にこういう提案をして来た。


 「提案なんだけどさ、講演会には僕達のどちらか1人が行って、もう1人はこの子を見ている。講演会が終わったらどうするかを決めるってのはどうかな」


 「よし乗った。俺が少年を見てる。お前は講演に行ってくれ」




そういう訳で、俺は少年と。グランドは講演会に行った。


 「1時間程で終わるから待っててね。ちゃんとメモしてくるから」


 俺は一度、少年と学校に戻り、本を取りに行きまた大ホール近くの空き地に戻った。


 とって来た本というのは、『世界の歩きかた』という本。


 この本には様々な種族の言語の基本的な挨拶が書かれている。


 俺は少年に、片っ端から様々な種族の言語で「こんにちは」


 と言ってみた。


 まあ結果は分かっていたけど、どれかに反応してくれたら儲けもん。その程度の気持ちでやる。


 少年はどの言語で話しても俯いたまま。


 やはりこの世界の言葉では駄目みたい。


 こうなると、意思疎通も出来ないから話す事がない。


 俺達2人、空き地で無言。ただ2人ぽつんと座る画。


気まずい、とは思わなかったけどこの少年はずっと暗い顔で俺に心を閉ざしてしまっているみたい。


 どうしたもんかと思ってたら少年の腹が鳴った。


 「お腹、空いたの?」

勿論、返事は帰って来ない。俺は近くの屋台に走って軽食と水を買って来た。


 「これ、食べていいよ」


 少年に差し出す。少年はジッと俺の買って来た食べ物を見つめる。


 食べ物に警戒心剥き出しって感じで見つめる。


 食べ方が分からないのか、食べ物だと認識していないのか。


 俺はパンを一切れ切って、自分の口に入れる。食べれる物なのだと見せる。


 「これ美味しいよ。危ない物じゃないから」


再度差し出すと、少年は頭をペコリと下げた後にパンを食べてくれた。


 俺は考察というのをしてみる事にした。


まず現状分かっている事の整理。少年は知らない言語を使う。この世界の言語は少年には通じない。見た事のない服にこの世界の人種では無い顔立ち。


 俺の頭にあるワードが、浮かんだ。


 未開の民。という言葉がこの世界にはある。


 この世界には度々、不思議な物。道具なのか何かのパーツなのか分からない何かが発見される事がある。


 その何かは一体どういった製造方で、どういった素材を使っているのか。全くといい程分からない。


 この世界の過去から現代を見てもこんな物質も製造法も存在しない。


 その事からとある偉くて頭のいい科学者は、この世界とは別の次元には、また別の世界があるのではないか。


 そう考えた。世界があるならば、よく分からない何かを作っている人間がいるのではないか。その人間と世界を科学者は未開の民と名付けた。


 俺はこの少年こそがその未開の民なんじゃないかと思った。


 もしそうならば、全ての辻褄があう。世界が違うのだから何もかもが違うのも納得がいく。


 こういう考察になった。


 俺はこの考察を聞いてもらうべくグランドの帰りを待った。

 


 

 

 


 



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