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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
学校生活編
30/50

優しい人

 校長のやってもらいたい事。それは学校生活を送る上で必須とも言うべき。制服選びだった。


 そういえば、俺達はここに来てからもずっと私服だったけど、本来学生は校内では制服を着用する決まりだ。


 何故みんなで同じ服を着るのかは分からない。でもその決まりを守れないのであれば学校に滞在は禁ずる。


 とかだったら面倒なので、黙って決まりには従おう。


 制服選びといってもそう何種類もある訳ではない。


 それにそれぞれ大きくデザインの異なるものでもない。


 大抵は黒を基調とした服だ。男子は真っ黒の上に真っ黒のズボン。


 女子は黒の服にスカート。


 「原則的にはそうですが、絶対という訳ではないですからね」


 つまり今の俺もズボンでいいという訳だ。しかしここの女生徒はほとんどスカートだった。そして今の俺はここの1女生徒。ならばここは目立たない様にという意味でもスカートにすべきだろう。


 「おお。似合いますね」

校長はそういうが、俺は似合ってはいないと思う。

 そもそもソウカはスカートが似合うタイプの人間じゃない。どっちかっていうとズボンとかカッコいい服が似合うと思う。


  「ではソウカさん、こちらに」

俺は15階の研究室とは真反対に位置する部屋に連れてこられた。


 その部屋は横長のテーブルを2つの椅子で挟み、いかにもここで大事なお話をしますよという雰囲気があった。


 「どうぞ、お掛け下さい」

「どうも」


 お互い別の椅子に座り、向かい合う形に。


 「まずは我が校に入学を決めていただき、ありがとうございます」


 校長はそういう出だしで話を始めた。


 「貴方達に推薦状を渡してもう10数年ですか。まだ魔法に興味を待ってくれているようで何よりです」


 「はい」


 「今日貴方達をここに呼んだのはこんな形式的な挨拶をしたかった訳ではないんですよ」


 「通常、この学校には幼少の頃から入学し魔法の基礎を学ぶものです。それはいざという時の為自分で自分の身を守れる様になる為。または生活を便利にする為。主にこういった理由で入学を決める生徒さんが多いのですが。」


 「見た所貴方達はかなり高いレベルで魔法を習得している。そのレベルなら生活に困る事も、よっぽどの事がない限り自分の身を守れないなんて事はないでしょう。」


 「つまり、何が言いたいんですか?」


 「何か、この学校に学び以外の目的があるのではと思いましてね。」


 校長はこうは言うが終始声は穏やかなままで、別に怒っているだとかそういう事は無かった。それにこの人からは優しさを感じる。


 俺はこの人にならば古代の魔法。及び俺達の目的を話してもいいのではないかと思った。


 もとより、この学校の教員だれかにはいずれ聞く事にはなったのだ。


 どうせ聞いてもらうなら優しそうな人が良い。


 「ええ。実はその通りでして」

「それは、お聞きしても?」

「良いですけど、それを聞いてどうする気なんです?」


 俺は一応最終確認をした。これで聞くだけ聞いて、何もしてくれなかったら。いや何もしてくれないなんて上から物を言うのは失礼だけど。


 とにかく、言い損にならないかを確かめたかった。


 「いえ。別にそれを聞いて貴方達を怒るだとか、退学にするだとかでは無く。私は貴方達若者が何か困り事があるなら、手を貸してあげたいだけなんですよ」


 俺は校長の目を見て。言葉を聞いて。やはりこの人は良い人だと確信した。全く嘘をついている感じがしないのだ。


 本心で言ってくれている。


「実は私達はとある魔法の発見、そして会得を目的に…」


 俺は校長全てを話した。勿論、グランドがソウカを殺した。俺がソウカの体に入った。それを除いて、少々登場人物を変えた話を。


 死んだのは家のメイド。もちろんそのメイドはミネラではない。家にいた名前も知らないメイド。でもこのお話では家族の様に大事なメイドという事にした。


 どうにか生き返らせたいと思った矢先、なんでも出来るという古代の魔法が目に付いた。この魔法学校なら古代の魔法を会得出来るのではないか。


 校長は終始、真剣な顔で聞いてくれた。そんな校長に嘘をついてしまった事に少々の罪悪感を感じたけど、全てを話す訳にはいかないと何とか割り切った。


 全てを話終わった後、校長はゆっくりと口を開いた。


 「…人の蘇り。確かになんでもありの古代の魔法。ならばそれは叶うでしょうね」


「しかし、残念ながらこの学校に古代の魔法を会得する為の魔法書はない。仮にあったとしても古代の魔法式はとても複雑だと聞きます」


 「そうですか…」


「なのでまず貴方達は古代の魔法についてしっかりと知識をつけるという事から始めてはどうでしょう。魔法書を探すだったりは私も何とかしてみます」


 この提案はかなり驚いた。だって手を貸すといってもここまで協力してくれるとは思ってなかった。

 

  …本来ならばこの時点で何か裏がある。または何か大きすぎる見返りを校長は求めるのでは。そう考えてもいいものだけど当時のスライムにはそういった発想は無かった。


 この校長の優しい雰囲気にそういった警戒心は綺麗さっぱり無くなっていたからだ。


 「ちょっと待ってて下さい」


 校長は席を立ち、どこかに行ってしばらくしてからまた戻って来た。


 「これをソウカさんに差し上げます」


 貰ったのはパンフレットと2枚の紙切れ…いやチケットだ。


 「これなんです?」

「何事も知りたい事があるならばその道の専門家に聞け。これは古代専門の教授の講演会のチケットです」


 「いいんですか、貰っても」


 「ええ。どうぞ貰って下さい。明日明後日とやったいますから。詳しくはパンフレットを見てみて下さい」


 「何からなにまでありがとうございます」


 「いえ。気にしないで下さい。これで貴方にお話したかった事は全てです」


 そういって校長はこの場を締め括った。


 俺はこの部屋を出る直前、ふと聞いてみたい事が頭を過った。


 「校長先生。もう一つ聞いてみたい事があるんですけど、良いですか?」


 「ええ。なんですか?」


「校長先生は魂ってあると思いますか」


 「魂。どうなんでしょうね。しかし創作物で言うところの魂とは役割は違うのかもしれない、他の何かはあると思ってます」


 「なるほど。お答えありがとうございました」


「あ、そうだ。グランドさんには体調が戻り次第この部屋を尋ねる様に言っておいて下さい。私はしばらくはこの部屋にいますから」


 「分かりました」


「ではソウカさん。何か分かり次第すぐにお伝え致しますね」


 「よろしくお願いします」


古代についてはなんとか情報を得ることは出来そうだ。しかし魂については何も知る事が出来なかった。


 早く魂の事を知り、グランドの仮説が正しいのかそうでないのか。それを早く解き明かさないと、きっとまたグランドは無理をしてしまう。



 俺は足早にグランドの部屋へと向かった。


 ドアを叩く。返事はない。


 俺は部屋に入った。グランドは寝ている。


 俺としては早く今回の事を伝えておきたかったので、そのまま部屋で待つ事にした。


 先程借りてきた本でも読みながら。ゆっくりと待つ事にした。


 太陽が沈みかけた時、グランドは起きた。


 寝起きで頭が働いていないのだろう。ジッと俺を見つめたまま、何も言わずに動かないでいる。


 ようやく頭が覚めたのか目を大きく見開いた。


「君。ずっといたの?」


 「いや、お前を寝かせた後校長に会いに行った。それで帰って来て今」


 「あ、そうだ。校長先生に呼ばれているんだった」


 グランドはベッドから勢いよく起き上がり、寝癖を直したりだとか、着替えだとか支度を始めた。


 「具合はもういいのか」

「もう大丈夫だよ。改めて。迷惑かけて悪かったね」


 「おう。もう無理しすぎるなよ」


「分かったよ」


 そう言ってグランドは部屋から出ていった。


 勢いに身を任せて、ついつい講演会だとかを話忘れてしまった。


 グランドが帰ってくるまでこの部屋で待たせてもらおう。


 と思ったけど一旦その考えを改める。


 グランドは無理しないという方を了承はしてくれたけど、このまま部屋に帰ってダラダラする奴ではない。


 だからもしかしたら校長と話終わったその足でそのまま研究室に直行するかもしれない。


 俺は席を立つ。その矢先、机に置かれる部屋の鍵を見つけた。


 つまりグランドは部屋に帰ってくるつもりなのか。でも急いでいたからうっかり忘れた可能性もある。


 このまますれ違うのも面倒くさいので、俺はもう校長と話したあの部屋の前で待つ事にした。


 今日何回往復したか分からない道を歩いて、あの部屋の前へ。


 それから20分程でグランドは部屋から出て来た。


 「あれ、わざわざここで待っててくれたの?」

「おう。お前…いえ。グランドさんに言っときたい事があったんで」


 「そうかい。じゃあ研究室に行こうか」


 最果てから最果てに歩き、研究室へ。


 部屋には椅子が1つしかないので、俺は床、グランドが椅子に座った。


 「悪いね。僕が椅子に座っちゃって」

「いいよ。ちょっとお尻が痛いけど」

「ここの床硬いもんね。時間を見つけ次第家具でも買いに行こうか」


 「だな。そうしよう」


 そんな感じに軽く話をして、本題に入る。


 「そんな事より、話したい事ってなんだい?」

「それを話す前に、お前が校長と話した内容を簡単にでいいから教えてくれ」


 もし校長とグランドが俺の時と同じ様な会話をしていたのなら、俺から話をするのは余計だろう。


 同じ会話を2度するのは無駄だ。


 「まずは、入学ありがとうって言われてそれから。僕達の目的を君から聞いた事。そしてそれに協力する。そういう話しをしたよ」


 「君言ったんだね。僕達の目的を」

「駄目だったのか?」

「いや。どのみち誰かには相談していた事さ。でもね迂闊に話すのはいけないよ。もしあの先生が悪い人だったらどうするのさ」


「悪い人に見えなかったから話したんだ」

「確かに悪い人には見えなかったけどね。」


「じゃあ良いじゃないか」

「…でも何か裏がありそうな感じにも僕には見えたよ」


 「裏?」

 俺は思わず首を傾げる。どこからどう見ても親切で優しさの塊みたいな人じゃないか。


 「だって古代の魔法の収集に協力するって言ってる様なものだよ。あの人。それがどんな意味を持つのかも知らない訳じゃないだろうに」


 「どんな意味があるんだよ」


「もしかしたら死ぬかもしれないんだ。」


「え、そうなの?」


 全くの初耳である。


「ま、この話は長くなるから今は割愛するけどね。ともかく君はまず人を疑うって事をした方がいいね」


 「分かったよ」


「それで、君の話っていうのは?」


「ああ。これを見てくれ」


俺は持っていたパンフレットとチケットを渡す。


「講演会?」

「校長に言われたんだ。まずは古代の魔法について知識を付けろって。それでこれを貰った」


 「ふーん。って、あ!」


 グランドがパンフレットを見ていきなり大声を上げた。


 「どうした」


「どうしたって。この人。講演する教授。滅茶苦茶有名な人じゃないか」


「そうなの?」


「うん。古代の事が好きすぎるあまりに幼少の頃から1日23時間の研究を欠かさず行い。30歳の頃にその手の研究グールプに属し、45歳の今。教授として講演、本の出版もしている。古代の知識について彼の右に出るものはいないと言われる。古代の第一人者、ライ教授じゃないか」


 グランドは、早口で饒舌に、勢いよく。珍しく興奮しまくって。俺に説明してくれた。


 「いやあこんなのを用意してくれるなんて、校長先生は良い人だなぁ」


 グランドもまた、魔法研究大好きマンだ。その何とかっていう教授とも通ずる所があるのだろう。


 いうにもまして興奮してご機嫌なグランドだった。


 そんなこんなで俺達の明日は、午前中は講演会。午後は研究室の模様替えの為、家具を買いに出かける事になった。

 


 

 



 

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