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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
屋敷生活編
3/50

夢を叶えたからといってその後も上手くいく保証はどこにも無い

 少年は思わず、その光景に驚き、手に抱えるスライムを投げ飛ばしてしまった。


 「あ!」


後方に飛ばされるスライム。悲鳴を上げたい程の思いだったが、残念ながら声を出す機能はスライムの身体には無い。


 ぷにっと擬音を出しながら、スライムは見事とは言えない体制で地面に叩きつけられる。


 そして、少年のもとに歩き出そうとした矢先に、身体の一部。地面に面する部位に鋭い痛みが走った。


 何かが、身体に刺さった。瞬時にそう理解したスライムであったが、声は出せないし、助けを求める事は出来ない。


 少年―名をザディ。は死体の前で立ち尽くしてしまい、すぐには助けには来れなさそうだ。


 仕方なく、甘える事なくスライムは痛みに耐えながら、身体を前へと進める。


 更なる痛みに襲われる身体。それでも前に進むと、案の定というべきか。傷んでいた下部は抉り取られてしまった。


 スライムは心の中で痛みに、叫んだ。


 そこで、ようやくザディがスライムに駆けつけた。叫びは聞こえて無いだろうが、そこは流石相棒と言うべきか。ザディはすぐにスライムを抱え上げて、ナイフを遠くに投げ捨てた。


 スライムは口で言うかわりに、身体を捻りザディに感謝を伝えた。


 「いやいや。悪かったな急に投げちまって。」


「それよりも、これを見てくれよ。」


 ザディはスライムを抱えて、死体の前に行く。


「これ、使えると思わないか?」


 使える?


スライムはその言葉に数秒固まる。


そして何を言ってるんだコイツはと頭を悩ませる事、さらに数秒。ようやく、ザディの言葉の意味を理解出来た。


 そういえば、前にこんな会話をしたのだとスライムは思い出す。


 

 過去の会話に入る前に、一つ伝えておこう。


このスライムには、自身では能力と認知していない、特別な力がある。


 その力とは、「対象に入り込み擬態する」力。


 対象になり得る物は様々で、木や草は勿論の事。大抵の物質には擬態が可能だ。


 会話に入ろう。


 スライムは、ザディと共に自身の力を調べていると時があった。


 というのも、この力があればスライムの夢を叶える事が出来るのではと考えた為だ。


 調べていくうちに、擬態出来るもの。出来ないものが分かって来た。


 出来るものは上記の通り。出来ない物は、生物に入る事。


これは実際にザディに入ろうとして、出来なかった事から出た結論だ。


 しかし、生物に入られなければ困るという事で、何か手はないかと色々、試行錯誤、長い月日を掛けて、死体ならば入れる可能性があるのかも。


 という結論が出た。


だからザディは一見、変とも言える言葉を発したのだ。


 スライムはその言葉を理解して、すぐに実行に移した。


もしかしたら、これで夢が叶うかもしれない。これで、もう魔物や人間に馬鹿にされる日々からおさらざ出来るかもしれない。これで強さを手に入れる事が出来るかもしれない。


 それを願って、スライムは彼女の身体を、自身の広げた身体で覆い尽くして、浸透する様に身体に入り込んだ。


 

 後はご存知の通り。スライムは無事に人間になる事に成功した。


 スライムは夢を遂に叶える事が出来たのだ。


 初めて開ける人間の目。初めてその目で見る景色。


朝日で、紅く照らされた景色をスライムは今後一生忘れる事は無いだろうと、そう思った。


 が、感動するのも束の間。夢を叶えた次は、別れがスライムを待っていた。


 それを思い出し、スライムはザディを見る。


 ザディはニッと笑いながら、拳を突き出し言った。


「やったな、スライム。」


スライムは、その拳に自身の拳をぶつけ、慣れない笑みを浮かべた。


 


 

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