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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
学校生活編
27/50

犬から猫。猫から犬。

 都市グレードにある港に着き、あの巨大な魚と別れた後、俺達は魔法学校行きの列車を待っていた。


 のだが、

「…来ないね」

 時計をチラリと見て、グランドが呟く。


 そう。俺達の乗る予定だった列車の発射時刻からもう既に1時間は過ぎているのだ。


 「しょうがない。違うので行くとしようか」

「これ意外にも行く手があるのか」

「勿論。ここは何の移動手段もないド田舎じゃないからね」


 次に俺達が来たのは駅から徒歩15分の所にある駐車場。


 ここに、俺にとって馴染みのあるあの車があるという事で来た訳なのだが。


 「これで行くよ」


 グランドは目の前の生物を見てそう言った。


 そして俺も目の前の生物を見て思わずこう声が漏れた。


 「猫じゃん…」


目の前の車を引く生物は、全然俺に縁もゆかりも、馴染みもない。紛れもない猫だった。


 ま、別に猫に不満がある訳ではないけど犬に会えるかと思って来たから少しガックリきた感じだ。


 が、しかし俺のそんな気持ちは実際に犬車改めて猫車に乗ることで、綺麗さっぱりと無くなった。


 なんというか乗り心地が良いのだ。犬の荒っぽい動きと違い、猫は素早いが動きにブレがない。おかげで俺は全く酔いを感じず快適に乗り物を楽しめている。


 極め付けはこの窓。犬車には無かった窓。おかげで美しい街を見ながら快適かつ優雅に乗り物を楽しめる事が出来ている。


 これでは完全に猫は犬の上位互換である。俺は今日から猫派になろうと思う。


 「ね、お楽しみの所申し訳ないけど、ちょっといいかな」


「どうした」

「学校に着く前に君に言っときたい事があってね」


 なんだろう。あれかな船で散々言われた口調の事かな。


 「もしかしたら。っていうか。そうはならないかもしれないんだけどね」


「ん?」


 珍しく遠回りで話そうとするな。


「実はソウカって昔の魔法業界では有名人だったんだ」


「え、そうなの?」


「うん。最年少で上級魔法使いになった神童。てな具合でね」


 ソウカが魔法を使える事は知っていたけどまさかそのレベルで使えるとは思ってもみなかった。


 「だからね。もう数年前の事とはいえソウカの名を聞けば沢山の人間が君に話しかけてくるかもしれない」


 「…ああ」


「だから君には船で教えた口調に加えてソウカ自身の真似もしてほしいんだ」


「はあ」


 今、大事な事を話しているのはしっかりと分かっている。でもグランドには悪いけどほとんど俺の頭にその内容は入って来なかった。


 まさか俺の体の持ち主がそこまでの大物だったなんて。

それに神童だなんて。圧倒的な力で他を制圧する。それこそまさに全スライムの憧れだ。それを出来る奴がまさかソウカだったとは。


 「…て感じでお願いしたいんだけど。良いかな」


 気づけばグランドの話は終わってしまっていた。


「…ごめんもう一回話してくれないか。最初から」

「全く。聞いていなかったのかい?しょうがないからもう一回だけ言うけど、これが最後だからね」


「えっと、ソウカは魔法業界ではかなりの有名人で…」


「そこは聞いた。ソウカの真似くらいからもう一回話してくれ」


 「…分かった。君にはソウカの真似をして欲しいんだ。今から僕が真似をしてみるから君もその真似をしてみて」


 そういうとグランドの顔と雰囲気が一変した。


今までの好青年といった感じから無愛想かつ、周りに対して厳しい雰囲気。それと冷たく鋭い目をしている。


 「…顔と雰囲気はこんな感じよ」


 オマケに喋り方もかなりクールな感じだ。グランドが無理に女声で喋っているから面白くも聞こえるけど。


 「…さあ。やってみなさい」


 目を鋭く。見る人全てを軽蔑するように冷たい目。それを意識して顔を作る。そしてクールで低い声。


 「どうかし…ごほっ」


 慣れない低い声を出したせいで、咳き込んでしまった。


「大丈夫かい?」

 

 気を取り直してもう一度。意識して声を出す。


「…大丈夫よ」


「おお!」

グランドが感嘆の声を上げた。


「凄いよ。声は低いだけ。顔もただ睨みつけているだけで、本物のソウカとは程遠いけどそれらしさは完璧に出ているよ!」


 …本当に凄いと思っているのだろうか。


 「…これで大丈夫かしら」


「まあ、ソウカを知らない人達には大丈夫じゃないかな。知ってる人にはダメダメだけど、そんな都合よく知り合いがいる訳ないしね」


 「…そう」


「ま、基本は僕が話すからそんなに不安にならないでね。いざという時しか君は喋る事はないから」


「…了解したわ」


 そんな感じで話していると、車が止まり、前から運転手が話しかけて来た。


 「着きましたよ」


「行こうか。これから頑張って行こうね。ソウカ」


 そう言う訳で俺はここでは本格的にソウカとして生きていく事になった。


 俺達は運転手に礼を言って車から降りた。


 そして俺は猫達の元へ行った。猫達は今回の1番の功労者なのだ。1番の礼を言うならコイツらにだろう。


 猫はニャーンと鳴き、体をペロペロと舐めている。全く可愛い奴らだぜ。


 「ここまで走ってくれてありがとうな」


 俺はそう言って猫達の頭を撫でる。

…いや撫でるつもりだった。


 しっかりと労いの気持ちをこめて撫でてやるつもりだった。


 しかしいざ撫でようとすると、猫は態度を一変させシャーと甲高く声を上げ、俺は猫パンチを喰らった。


 顔面に。


 「あーあ。全く毛繕い中に撫でようとするからだよ。猫はそういうの嫌がるんだよ」


 へえ。そうなのか。いい勉強になった。もう2度とこれが生かされる場面はないけどな。もう猫なんかと会う事はないからな。


 俺は今から犬派になった。


 ――


 猫から降りた時。目と鼻の先にあると思っていた校舎は案外遠くにあった。


 門を通り、長めの登り坂。広すぎる広場を通って階段を登る。


 登る。登る。登る。登る。登る。


 …一向に着く気配が無い。もう100段は登ったはずなんだけど。


 「…なあグランド」

「はあ、なんだい…ソウカ。口調気を…つけてね。はあ」


 「この階段地獄はいつ終わるの…」

「…僕も分からないよ…」


 今一度いうが俺達は大荷物を持っている。それにここにくる道のりも猫車を経由したとはいえ決して楽な道では無かった。


 もう俺達の体は疲れで限界を迎えかけていた。


 「……は…」


 階段には他にも生徒と思しき人間はいた。しかし俺達にはそれを気にする余裕はなかった。恥も外聞も捨て、俺達は両手両足を使い、四足歩行になって階段をよじ登っていた。


 「あれなに?ヤダ恥ずかしい。見ちゃ駄目よ。」


そんな声が周囲から聞こえた気がするけどそんなのはもうどうでも良いのだ。


 「…はあ…あと少し…」


 もう目は本校舎を捉えていた。あと少しで辿り着く事が出来るのだ。


 「うおおお!」


 足を動か、手を伸ばし俺達は遂に、その頂きへとたどり着いた。


 気づけばどちらから共なく俺達は手を上げハイタッチをした。


 「…やったな。グランド」

「だね。…後口調ね」


 悪いなグランド。俺はもう四足歩行を披露してしまっているのだ。今更口調を直した所で手遅れだろう。


 校舎の扉。俺の身長10倍はあるであろうその扉を押し開ける。


 「…おお。」


 学校の中を見て、思わず声が漏れる。学校の外観は城の様に豪華で大きかった。その中はその期待を裏切る所か大幅に上回るほど、


 「綺麗だ」


 ただそれしか言葉が見つからない。この学校を見ればあの屋敷ですら霞んで見えてしまう。


 「失礼。いいでしょうか」


 見惚れる俺に、黒い制服をピシッと着こなした女生徒が話しかけて来た。


 「グランド•レブリカとソウカ•オーベル。それは貴方達で間違いないですか?」


 「はい、そうです」

 そういうと、グランドが背中をツンと突く。


 そうだった。基本はグランドが喋るんだった。


 「はい。僕がグランドでこちらがソウカです」

俺はペコリと頭だけ下げておく。


 「私は、本日校内案内を務めさせていただくベルと言います」


 俺達はベルの案内で校舎を回ることになった。


 エントランスから移動し、全体が丸で出来ているホールに移動した。


 丸で出来ている部屋。そのど真ん中にある大きな青い光の円。見たところ魔法陣だろうか。


 そこの前まで俺達は進む。


 ベルは魔法陣を手で差し説明をしてくれる。


 「このフロアは移動教室と言います。今見えます魔法陣に乗り、頭の中で行き先を言うとそこに連れていってくれます」


 「へえ。とても便利な魔法ですね」

笑顔。かつハキハキとした声でグランドは返事する。


 「ええ。便利で偉大な魔法です。世界各地に魔法学校というのはありますけど、この魔法陣を有しているのは我が校だけなんですよ」


 「それで、先程言った通り、これに乗れば行き先は自分で決められます。勿論、校外には行けませんけど。

 どこか行き先に希望はありますか?」


「…すいません。僕達この学校に詳しくなくて」


 「あ!」


 ベルは顔を赤くした。


「すいません。どうかしてましたね。失礼しました。


 この学校は15階建てになっておりまして、1階にはエントランスホールを始め、図書室。食堂。1年、2年を担当して下さる先生方の職員室があります。2〜6階は1年教室。保健室。7〜10階は2年生教室。実験教室。11階〜12階は3年生教室。それと3年生担当の先生方の職員室。となっております。」


 あれ、13階からその上はどうなってるんだろ。


 「なるほど。丁寧な説明、ありがとうございます。それで13階から上はどうなっているんでしたっけ?」


 良かった、同じ疑問を持ったグランドが聞いてくれた。


「13階より上は貴方達には立ち入る事を禁じられております。推薦者達の部屋ですので。」


 ……俺の記憶が正しければ、俺達はその推薦者じゃなかったっけ。


 「…あの。これを」


 グランドは申し訳ない顔で恐る恐る例の封筒を取り出し、ベルに渡した。


 「…?これは」

「中身を見てください」


 「あ!」


 ベルはまた顔を赤くした。


 そして頭を下げた。


「すいません、失礼な事を言いました」


「あ、いえこちらこそ言い出すのが遅くなり申し訳ないです」


 俺よく分かんないけどさ。こういうのって事前に上の人っていうか偉い人がキチンと伝えておくものじゃないのかな。


 それか伝えたけどベルがそれを忘れてしまうほどのうっかり屋なのか。


 ベルは自身の頬を小さくパシャリと叩いた。


 「…それで、どこから回りましょうか。希望がないのであれぼ私がルートを決めてしまいますが」


 「うーん。ソウカは希望とかあるかい?」


 特にないな。俺は首を振る。


 「そっか。では1階から順に案内お願いします」

「承りました。ではこちらに」


 俺達はエントランスホールに戻り図書室、職員室と回った。そこの先生達とも挨拶をして(主にグランドが)

 再び移動教室に向かう。


 「ではこちらに乗りましたら2階と頭の中で念じて下さい」


 「分かりました」


 


 

 



 


 

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