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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
犯人捜索編
26/50

到着

 「やあ、おはよう」

朝の支度を済ませた頃にコイツと会う。もうすっかり見慣れた場面だ。


 「おう」

今日は朝は食堂でとろうと部屋から出た矢先にコイツに出会した。


 でも今日は待ち伏せしていたという訳ではなく、本当にたまたまタイミングが被ってしまっただけのようだ。


 食堂に着き、近くの席に座る。その後思い思いの食料を調達しに席を立つ。


 朝はあまり食欲が湧かない為、パン1枚とスープ。それとコップ一杯の水だけを持って席に戻った。


 これを見た他の奴はせっかく豪華な食堂に来たのに、ただのパンとスープしか食べないの?


 と言うかもしれないが、それは逆だ。


 俺はせっかく豪華な食堂に来たのだからこのスープを選んだんだ。


 この食堂に並ぶ食材は全て高級品。それらで作られる料理は俺の口には少々合わない。かつ俺は朝は少食。


 そんな俺にしてみればどの品を使っても対して味の変わらないパンと、スープはむしろ朝食を最大限楽しめる最適解なのだ。


 席には俺しかいなかった。まあ俺は取るものが少ないから当たり前といえば当たり前だろう。別にアイツを待ってやる気もないので先に食べてる事にした。


 まずはスープで乾いた喉に潤いを。いつも通り美味い。


 でも少し熱かったから水で口を冷やす。


 そして次はパンをちぎってスープに浸して食べる。


たまにこの食べ方は邪道だとか言ってる奴を見かけるけど、俺はこの食べ方がスープとパンを楽しめる食べ方だと思う。


 「あ、もう食べてる。早いね」


 気づけばグランドも席に来ていた。


 「そして相変わらず朝は少食なんだね」


 それに、おう。と返そうとふとグランドの方を見てギョッとした。


 「…多いな」

そう。滅茶苦茶多いのだ。グランドの持って来た料理が。


 この食堂にあるトレーの中で1番大きな物を使い、そのトレーを全て埋め尽くす様に数々の皿を置き、その皿の上にも山盛りの料理が盛り付けられている。


 「まあね。ここの料理がしばらく食べられないと思うと、ついつい盛り過ぎてしまったよ」


 持って来たは良いが、そんなに食べられるのだろうか。


 いやそれよりも今なんて言った?


 しばらく食べられない。なんで?


「なんで、しばらく食べられないんだよ」


その問いに、グランドは首を傾げた。


「なんでって。だって今日でこことはしばらくお別れだからね」


 お別れ。つまり今日この船から降りるって事か。しかし俺の記憶では降りるのは明日じゃなかったっけ。


 「降りるのって今日だったか?」

「うん。今日だよ」


 ま、俺は記憶力にはあまり自身がない。だから降りるのは今日なのだろう。


 「だから、部屋に帰ったらすぐに本を返しに行くんだよ」

「おう」


 その後、俺はすぐにご飯を食べ終えた。量が少ないのだから当たり前だ。


 でもグランドは食べ終わってなかったので、しばらくは待つ事にした。


 そうしたら案の定と言うか。グランドが「もう、食べられない」とか抜かしやがるから俺はグランドの料理を半分食べる羽目になった。


 満腹まで食べ、重たくなった体で部屋に帰り、その足で本を返しに行った。


 それからは到着の時を、本を読みながらダラダラと待った。


 

 満腹になった影響か、少しウトウトし始めた頃に部屋の扉がノックされて、気を取り戻した。


 「入るよ」

「おう」


 「後1時間程で到着だからね。忘れ物のないようにしっかり準備を済ませておくんだよ」


 「おう」

言われて、俺は物をバッグに詰まる作業に移った。


 思い返すと、ここでの暮らしも楽しいものだった。

 最初こそ、入る方法がちょっとアレだったせいで、思う事もあったが、いざ過ごしてみると、立派な部屋に施設。美味しい食事に、本当にほとんど文句のない素晴らしい日を過ごす事が出来た。


 ここは体内だというのに変な臭いとかもしなかったし、揺れも無いしね。


 本当にしいて欠点を挙げるならば入り方くらいなもんだ。


 …そういや入り方はあんなんだったけど、どうやって出るんだろう。


 食べられる形で入ったのだから、そういう方向で考えるのならば当然出る方法は出る所からだろうけど。


 そんな事あり得るのだろうか。だって貴族とかのお偉い様達が乗る船だぞ。まさかそんな出る所から出るなんて。


 まさかまさか。そんな事は無いと信じたいけど。


 ………。


 いよいよ到着の時が来た。ここに来る時同様にそれぞれ荷物を持って、準備万端だ。


 しかし、そんな事よりも気になる事がある。


俺は意を決してグランドに尋ねる。


 「やっぱり、出る時は出る所からなのか」


 「…え?ああそういう事ね。出る時は君の想像している様な方法ではないよ」


 良かった。それを聞けて安心した。


 「じゃ、時間だしもう行こうか」

「おう」


 扉に手が差し掛かった所でグランドが振り返る。


 「の前に。忘れ物はないね?」

「大丈夫だと思うぞ。多分」


 「多分は怖いね。一応見ておこうか」

 「俺に信用は無いのか」


 「信用はしてるけど、忘れたらもう2度と手元には戻って来ないからね。ちゃんと見ておかないと」


 そういう訳で俺達は今一度、それぞれの部屋を隅まで見てから部屋を発った。


 廊下を渡り、階段を上り。また上り。上まで伸びている一本道の階段を登る。


 荷物のせいで歩くのが少しキツイ。


限界。と思った所で地上の光が見えて来た。


 その光を目指して歩き、ようやく地上に出る事が出来た。


 結果、出る方法とは入って来た所をそのまま登る。だった。


 「ね、君の想像とは違う出かただったろう」

「だな」


 地上に出て、少し伸びをしてまた歩き出す。少しして振り返ると、さっきまで乗っていた魚は大きく口を開けていた。その光景は、海に大きな洞窟が浮かんでいる様だった。




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