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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
犯人捜索編
25/50

ですわ

 部屋に突如現れた、血塗れの死体。この光景には覚えがある。


 最初にソウカを見つけた森と全く同じ光景。


 とにかく早く戻らないと。その時の俺の頭にはそれしか無かった。

 しかし流石、不便で何も出来ないスライムの体。部屋の床にくっついてしまう。終いにはカーペットにもくっつきさらに動きが鈍くなる。


  …何か部屋に変な臭いが立ち込めて来る。スライムの嗅覚ですらハッキリと臭う、腐敗臭だ。


 早く戻らないと。何もかも手遅れになる。何もかも終わってしまう。そんな予感が頭の中を反復する。


 カーペットなんて気にしている場合ではない。俺は体を思いっきり伸ばして、引っ張ってなんとかソウカまで辿り着くことが出来た。カーペットから体を引き剥がし、ソウカの上に乗る。


 ソウカの顔を見てギョッとした。以前森で見た時より明らかに死体感とでもいえば良いのだろうか。以前は死んで数時間だったので、ここまで体の腐敗は進んではいなかった。


 俺は体を伸ばし、再び全身に浸透するように入っていく。


 俺が完全に体に入った所で、目を開ける事が出来た。


 立ち上がり、体を動かす。…特に問題はなさそう。


次に近くの鏡で全身を見る。服は血塗れだが、それ以外には先程の様な死体感は見られない。


 しかし、俺が出る前と比べると少し体が汚れている様に見える。まあ死体のような汚れではなく、思いっきり転んでしまった後の汚れみたいな感じだから洗えば問題ないだろう。


 それよりも問題と言える事がある。


 グランドだ。先程から声もあげず身動き一つしていない。


 青い顔で座り込んでしまっている。


 …まあ大方の予想はつく。端的に言えば、トラウマを思いだしたって所だろう。グランドはソウカを殺してしまった事を深く後悔していたし。


 俺はグランドの肩をポンと叩く。

「もう大丈夫だ。この通り俺はちゃんと戻れた」


 言ってみるけど、グランドからの返事はない。

「おい、大丈夫か」


 再度、グランドの肩を叩く。今度は少し強めに。

「…え、あ、ごめん。」


 フッと意識が戻ったようにグランドは言った。


 でも顔はかなり暗い。少し1人にしたほうがいいかな。


「ちょっと服を着替えてくる」


 それだけ言って俺はクローゼットから適当に服を取り、洗面所に行った。


 服を脱ぎ、体を見てみる。体にはどこにも傷1つなく、勿論胸に穴なんて空いていない綺麗な体だ。


 一応臭いも嗅いでみるけど、腐敗臭とかはしない。


 体に少しの汚れがあったので、部屋の風呂に入る事にした。


 大浴場に比べれば小さいけど、むしろこれが普通の大きさ。特に悪い所も無かったし、大浴場に人が多かったらこっちを使っても良いかも。


 汚れを落とし、服を変え。グランドの様子を見に行く。


 グランドはまだ部屋にいた。さっきと場所は変えてないけど顔の暗さは少し無くなったように見える。


 「大丈夫か?」

「…うん。ごめんね。変な事をさせて」

「いや、良いよ。それより分かった事があるんだ」


 「…何?分かった事って」

「ちょっとこれを見てくれ」


 俺はグランドの元にいってしゃがんで、服をめくって体を見せる。


 「わ!ちょっと」

グランドは何故か顔を赤くして手で顔を隠してしまった。


 「おい見てくれよ。胸がなんともないんだよ」

「え?」

そう言う、グランドは指の隙間からこちらを見る。


 「…やっぱり君の能力は意味が分かんないね」

「ああ」


 最初の時もそうだった。胸に穴が空いて、傷のある体だったのに俺が入ったらそんなの嘘の様に綺麗な体になった。


 それを、グランドに伝える。その上で

「で、なんでこうなると思う?」


 聞いてみる。


「分かんない。分かんないけどそれが君の能力の範疇なら、君は古代の魔法に匹敵する程の回復能力がある事になるよ」


 「なんでそんな物ただのスライムの俺にあるんだろうな」

「さあね。僕には分かりっこないよ」


 まあそうだろうなと思う。だって当の俺自身もさっぱり分からないもん。


 「それより…さ」

「どうした」


 グランドは床を指差した。それを見て思わず「あ!」と、声が漏れた。


 ぐちゃぐちゃのカーペットに血のついた床。

「これ誰かに見られたらマズいよな」


 「間違いなくマズイね」


 残りのその日は全て掃除に費やされた。


 今後、俺は安易にソウカの体から出ないと誓った。


 ――


翌日、朝食を終えた頃にグランドが部屋に来た。


 「や、おはよう」

「おう」


 「今日は君に、言っておかなきゃいけない事を言いに来たんだ」


 珍しく真面目そうな顔だ。俺は読んでいた本を閉じてグランドに向き直る。


 「なんだ?」

「明日、僕らは学校に到着する訳だけど」

「おう」

「そこで少なからず誰かとの交流を強いられる」

「…おう」


「君は今、女の子だ」


 なんとなくグランドが言わんとしている事がわかって来た。


「その口調。直した方がいいよ」

「…おう」

「違う!そこは、はいとかで良いんだよ」

「…はい」


 なんか変な感じ。


「よし、僕が喋ったことを言ってみてくれ」

「はい」


 「私は女の子ですわ」

「ですわ?」


 なんか気持ちの悪い喋り方だ。

「うん、ですわ」


 グランドの顔は大真面目だ。これは本当にですわと言わなきゃいけない流れ。


 「わ、私は女の子ですわ…」


 その後、グランドの指導は昼まで続いた。


 「さ!これが最後だよ。貴方のお名前はなんですか?」

「私の名前はソウカです。よろしくお願いします」


 「足りない!」

「よ、よろしくお願いしますわ」

「よし、完璧だね」


 完璧か?っていう声は心に閉まっておいた。


 「じゃ、これからはそういう口調で頼むよ」

「…わかりましたわ」


 やっぱ、言いづらいし違和感しか無いわ。この喋り方。



 

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