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スライム 人間になる  作者: 浅川 大輝
犯人捜索編
17/50

情報収集

 翌日。朝。俺は朝食を食べていた。これがないと一日が始まらない。これがないと頭もちゃんと働かないし体もちゃんと動かない。それが人間ってもんだ。


 「今日のご飯をどうです?」


隣に座る、目を赤く腫らしたミネラが笑顔で聞いてくる。


 「美味しい。」

「それは良かったです。」


――


 犯人を探すといってもまだ何も具体的な案は思いついていない。


 俺の中で犯人と思しき奴はいるにはいるのだが、そいつに辿り着く為の道筋が見えて来ない。すばり俺が思う犯人は例の結界を壊した危険人物だ。結界が壊れたのはいまから確か五日前。もしかしたらそれ以上前に壊されていた可能性もあるが、丁度同時期にソウカも死んでいるし、五日前に壊されたと決めつける。


 

 何せ情報が少ないすぎるのである程度は憶測で物事を保管していかなければならない。

 

 あともう一つの犯人候補があったのだが。一つはソウカの自殺。でもこれはナイフが死体から少し離れた場所にあったので却下。自分で胸を深く刺しその後すぐ抜いて遠くに投げる。そんな事が出来るとも思えない。


 なんとかこれ以上の情報を集めたい所だが、まだ俺の正体がバレてはいけない以上下手な事は出来ない。


 さてどうしたもんかな。


 と、思っていたが中々いい口実を思いついたので、これでミネラに聞いてくる。


 また嘘と無責任な言葉だが、これでソウカを殺した犯人が分かるかもしれない。


 仕事をひと段落終えたミネラを捕まえて部屋に呼ぶ。


 「それで何ですか?聞きたい事って。」


「あの。魔法に興味が出てきたから結界にも興味があって。」


「はあ。」


 「だから。オーベルの森の結界を張っている人に話を聞きたくて。」


「ああ。あー今はちょっと厳しいですね。」


 「なんで?」


「結界を張っているのは、ロクド様の所の魔法使いなんで。」


誰だよ。ロクドは。


 「誰だっけそれ。」


 「ソウカ様のお父さんですよ。」


ああ。お父さんって事は領主か。あれ?でも一回も会った事ないぞ。


 「…お父さんは今どこにいるの?」


「ここから遠く西に離れた、街ジュウオンですね。」

何で自分の街にいないんだよ。それで領主って大丈夫なのか?


 ともかく、結界を張った奴に会う事は出来なそうだ。結界を張った奴ならいつ壊れたとか、色々知っているかもと思ったが。


 「じゃあもう一つ質問。結界に入れる特定の人間って誰?」


 そう聞くとミネラは少し首を傾げる。


「なんでそんな事知りたいんですか?」


 「駄目かな。」


 「いや駄目じゃないですね。分かりました。」

というとミネラは教えてくれた。


「私達屋敷の人間は全員入る事が出来ますね。あとソウカ様のご両親とグランド様と。これくらいですね。」


 誰だよ。グランドって。今日は初耳の名前が多いな。

 

 「えっと…」

 俺の表情で察したのか、言い終わる前にミネラは答えてくれた。

「グランド様はソウカ様の時期婚約者ですね。将来の旦那様です。」


 へえ。ソウカは見たところ十代に見えるのに人間は早いんだな。獣族は四十代で結婚するのに。いやソウカ達貴族が異常なのか?


 「ソウカ様はグランド様の事も忘れているんですよね。きっとショックを受けますよ。」

 

 グランドなんて正直どうでもいいが、森に入れる数少ない人間だから一応もう少し調べておくか。


 「どんな人だったの?」


 「そうですね。とにかくソウカ様には優しかったですね。ソウカ様があそこに行きたいといえばすぐに連れて行ってくれて。最近ですと森の湖畔に行ったりとか。」


 「へー。」


ん?森?

「最近っていつ?」


 「一週間前くらいですね。」


おい。急にどうでもよくなくなったぞ。結界は外からでも中からでも壊せる。だから一応森に入れる人間も調べたが、そいつめちゃくちゃ怪しい。ってか犯人っぽいぞ。


「グランド様とは一緒に住んでいる訳ではないよね?」


「ええ。少し離れたグレンという街に。」


 「一週間前に森に行ったってことは帰ったのは……」


 「六日前ですね。」


もうこれ決まったんじゃないか。六日前に帰ったと見せかけて五日前にソウカを呼び出して殺す。これと結界と魔物の関連性はよく分からないけど、現状グランドが一番怪しい。


 「グランド様に会う事は出来る?」


 と聞いたらうーんと考える素振りをみせるミネラ。そして

「これから忙しくなるとかですぐに会うのは厳しいかもしれません。」


 ふむ。

「どれくらい早く会えるかな。」


 「私もグランド様の予定とか分からないのでなんとも言えないですね。」


 どうする。これで一ヶ月、いや半年、最悪年単位で会えないとか言われたら。


 いや、待てグランドが犯人だとして、絶対に会える方法が一つだけあるぞ。

「じゃあせめて手紙だけでも渡せないかな。」


 「それくらいなら大丈夫ですね。」


よし。手紙を送れるのなら勝ったも同然だ。ソウカの宛名で手紙を送ればグランドはこっちに飛んでこざるを得ない。何せ自分の手で殺したはずの人間から手紙が届いたんだからな。


 ――

 俺は早速手紙を書く事にした。手紙は屋敷の人間が街の配送屋に渡しに行くらしい。途中手紙を読んだりはしないだろうが万が一の事を考えて、そしてなによりグランドが犯人と決定した訳では無い。


 ので、あくまでもソウカからグランドへの手紙を装う。


 しかし俺はソウカの口調などを知らない。グランドは記憶喪失の事も知らないだろうし。


 …。

内容は適当に、また貴方と湖の湖畔に行きたい。また会いたい。とかにした。しっかりとソウカの名前を大きく書いて。


 その後手紙を屋敷のメイド(名前は曖昧)に渡す。本当は信用出来るミネラに渡したかったが忙しそうだったので断念。


 次に何か少しでも手掛かりを得る為オーベルの森に行こうとしたのだが、ミネラは作業中。他のメイドは何かソウカによそよそしいというか、冷たいというか。そんななのでミネラの作業が終わり次第行く事にした。


 生前のソウカは性格でも悪かったのだろうか。俺も少し態度悪くした方がいいかな。いや別に他のメイドと関わる機会はそうないし悪くしなくてもいいか。


 


 


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