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姉カレン目線

短編版に無かったお話しを姉視点として追加しています。

「アイリ、君を妃に迎えたい。君こそ千年に一人の聖女だ」


 私はマリス王子の婚約者になるため、そしてお父様、お母様の期待に応えるために必死になって聖女になったのに…ところがマリス王子が選んだのは私が見下している妹のアイリ。


 どうしてアイリが千年に一人の聖女なの!? 聖女どころか、全く持って治癒魔法もない存在なのに。


 私はアイリを侮辱したことでマリス王子と喧嘩にまでなってしまった、今までの頑張りを否定された感じがして凄く腹が立ったからだ。私は好きで聖女をしていた訳じゃなかったのに。


 お父様、お母様の期待に応え、マリス王子と婚約することが目標だったのにそれが潰れた。


 私の存在価値って何なのだろう? 私なんて生まれて来なければ良かったのに。そう思っていると私の顔に拳が飛んできました。尻餅を付いてしまう私。


「この役立たずが!」


 この時、お父様に初めて暴力を振るわれました。急にお父様、お母様が私に態度を変えたのです。


「何をするのですか!? お父様!?」


「あんな無能のアイリなんかに王子様を奪られて! 情けない聖女だね、あんたは!」


 お母様にこんなことを言われたのです。そしてさらに


「王子様に認めて貰えないってことは足りないんだよ! お前の治癒魔法は! 王子様に認められたかったらもっともっと治癒魔法を使って庶民の治療をしな!」


 こんなお母様見たことありません。私は呆然としてしまいました。だって私はたくさんの庶民に貢献をしてお父様、お母様の自慢の娘を演じていたのに…。何故、私はこんなことになってしまったのかしら? 私は涙がたくさん溢れ出てしまいおさまりませんでした。


 私は悔しさのあまり、マリス王子に振り向いて欲しくて私は死ぬ気になって病気をしている庶民の方々の治療に当たりました。


 私は子供からお年寄りまでたくさんの人達に治癒魔法を使いました。数は数えきれないくらいでした。お父様、お母様に私の存在を認めて貰うまで…たくさんの庶民の人達の治療をしました。


 私が死ぬ気になってみんなの治療をすればさすがに王子様は私に振り向いてくれるはず。しかし治癒魔法の使い過ぎが原因で私の精神や体が持たなくなり、大きな病気をしているなんて全く気付かなかったのです。


 それでも耐えていれば何とかなるはず…。私は我慢していたある日、女の子に治癒魔法をかけていた時に言われてしまいました。


「お姉ちゃん! 凄く顔色悪いよ!」


「大丈夫よ、これくらい…」


 そこからこの女の子の治療をしている意識がないのです。気付いたらベッドの上にいました。そばにいたのはアイリとマリス王子。アイリが治癒魔法を使い私を助けたのです。


 でも散々私はアイリを虐げていた…こんな私なんて助ける必要なかったのに。結局、私はアイリの優しさに救われました。アイリこそ聖女に相応しいのでは? 私はそう思ったのです。


 子供時代の頃、まだアイリと姉妹仲が良かった時のことです。


「私、お姉様みたいになりたい。お姉様になってたくさんの庶民の人達の治療をしたい。それが夢なの」


 でも私の夢は聖女になることなんかじゃなかった。出来ればこの治癒能力、アイリにあげたかったのです。しかし成長するに連れて姉妹格差が始まるとお父様、お母様はアイリを無能だと罵り虐げていた。


 私は虐げられるのは怖かったから無理にでも聖女をしていた。一方の私は自慢の娘だとお父様、お母様から言われ続けてきたから庶民の病気が少しでも完治しなかったらどうしようという凄い重圧があった…期待に応えなければいけなかった。


 そして妹を虐げていた自分に情けなくなった…いくら私が治癒魔法で庶民の病気を完治させている優秀な聖女だからとはいえ、無能のアイリを見下して虐めて良かったのかと今更ながらに後悔している。


 それは私がお父様、お母様が怖くてアイリに優しく出来なかったから。こんな姉で妹には大変申し訳なかったと思う。


 だからこれからは私を助けてくれたアイリには感謝しなければいけない。優しい妹には感謝してもしきれない。ありがたく人生を生き続けていこうと思う。


 でも私はこれからもお父様、お母様のいいなりになって聖女を続けるのかしら? 私は…私の人生を歩みたい。聖女なんて止めてこれからは自由にいきたい。私は勇気を振り絞りました。


「お父様、お母様。私はもう聖女をやめて普通の人になる。私はあなた方の言いなりにはもうならない!」


 そんなことを言うと再びお父様の拳が飛んできました。尻餅を付いた私は今度こそ負けないとお父様、お母様に言ってやりました。


「女を殴るなんて最低ですね! お父様!」


「聖女しか取り柄がないお前が聖女を辞めたらアイツ以下になるだろうが!」


「アイリのこと? アイリをバカにしないで! 本当にバカなのはあなた達でしょ!」


「なんで聖女を辞めようとしているゴミクズにそんなこと言われないといけないんだい!」


 私はお父様、お母様から殴る、蹴るの暴力を受けました。私は恐ろしさのあまり、その場から逃げ出しました。


 行き場を失った私は遠く、遠く離れた地に行きました。隣国でした。ここなら私は新しく暮らして行けるかも…そう思った時のことです。人集りが出来ておりました。私が人集りの中に入って行くと王子様と見られる方が倒れていたのです。


「どうしました、しっかりして!」


 しかし苦しそうです。そうだ、私は聖女を辞めたと言っても治癒魔法はあるはず。この人の治療は出来る! 私は自分の持っている能力を使い数時間かけて王子様の治療をしました。


 最初見た時よりかは全然顔色は良さそうです。すると意識を覚ましたみたいです。


「大丈夫ですか?」


「僕は…一体何を…もしかして君が助けてくれたのかい?」


「は、はい」


「き、君はもしかして…聖女カレン?」


「は、はい」


又もや返事をしてしまいました。


「まさか、隣国であるこの国に来てくれるなんてびっくりだよ! 僕はこの国の王子ビクトル。カレン! 君に会えて嬉しい。君の噂はこの国にも広がっていたからね」


「そ、そうなのですか?」


「そこで突然で申し訳ないんだけど僕の妃になってくれないか?」


 私は驚いてしまいました。まさかいきなり初対面の王子様に妃になって欲しいと言われるなんて…。


「でも私は聖女を辞めております。こんな私があなたの婚約者になるなんて相応しくないと思いますが…」


「それでも構わない! 聖女じゃなくても良いから僕の妃になって欲しい!?」


「本当に…良いのですか?」


「もちろん」


 ビクトル王子はそう言ってそっと私を抱き締めました。私はこの隣国で幸せになれそう。全ては私を助けてくれた妹のおかげ。


 そうそう、アイリもマリス王子と結婚するみたい。手紙で知りました。だから私はビクトル王子と当日一緒に王宮に行き、妃のアイリとマリス王子を祝いました。


 アイリが本当に幸せそうに見えてとても良かったです。これからはアイリ、あなたが聖女として庶民のみんなを助けてあげてね。勝手な姉の思いです。


これにて終わりです。

このお話が面白かったなっと思いましたらブックマーク又は星(☆☆☆☆☆)をつけていただけましたら作者は大変嬉しい気持ちになります。よろしくお願いいたします。


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