1-6
「隣の町にはね、大きな樹があるの」
クヤはそう告げました。
コタは、へぇ〜と相槌を打ちます。
「その樹にはね、人になにかしらの力を与えてくれるの」
「木が、ちから?」
「そう、なんたって、わたしも貰ったもの!」
「え?なんのちから?」
「この森を守る力よ」
「え、なにそれ……」
「この森はね、昔凶暴な生き物がいて、生き物が殺されてたの。だから村人も近寄らなかったの」
「そんな話、聞いたことないよ」
「知ってるのはお年寄りくらいよ。それも、伝説みたいにね」
「ねぇ、きみ何歳?」
「れでぃにお歳を訊くものじゃないわよ」
「れでぃ……」
クヤは楽しそうに笑います。
コタは首を傾げるばかり。
「10歳のコタくんにも、力が貰えるかもね。そしたら、世界を旅することもお茶の子さいさい」
「クヤって所々しぶいよね……」
「れでぃ」
「はい」
コタも次第にわくわくしてきました。
「ぼくにも、世界をわたるちからが手に入る……!」
「まぁ、樹の気分次第だけどね」
「えっ……?ちょっと、これから旅立つって感じのとこで水ささないでよ……」
「あはは、冗談よ」
「冗談に聞こえないよ〜、まぁ、そうだね」
「ん?」
クヤが訊き返すと、コタは力強く頷きました。
「ぼくもとなり町の木に、ちからをもらって世界をまわるんだ!」
クヤは笑顔でコタを見ながら、呟きました。
「まぁ樹がどんな力を与えてくれるかは分からないけどね」