一途に愛した悪役令嬢
私、それでも貴方が好きですわ。
初めまして、ご機嫌よう。私はイヴ・カペー。公爵令嬢ですわ。私、実は悪役令嬢になる予定ですの。
私には前世の記憶がありますわ。そして、その前世では日本という恵まれた国に生まれて、幸せに生きていましたの。そんな私の前世の趣味は読書。異世界転生モノをよく読んでいましたわ。そんな私は、不幸にも通り魔に襲われて気付いたらこの世界に生まれ変わっていましたわ。そして私はすぐに、この世界が前世で大好きだった乙女ゲームによく似た世界であること、私が生まれ変わったのは『悪役令嬢イヴ』であることを知りましたわ。
でも、私幸せですの。だって、ずっと大好きだった攻略対象者の一人、イーサン・ギレム侯爵令息と婚約者になれたんですもの!私、所謂ガチ恋勢でしたのよ!例え、いつか無慈悲に捨てられるとしても、それでも私幸せですの!
だから、私考えましたの。
―せめて今は、一途に彼を愛し美しい思い出をたくさん作ろうと!
幸いにして弟がいるので公爵家の跡継ぎは心配いりません。もし私がイーサン様に振られた後乙女ゲームの設定通り修道院に入っても問題ありませんわ。多少の迷惑はご愛嬌ですわ。
ということで早速、五歳の頃からイーサン様を愛で始めましたわ。病弱なイーサン様は大人しく、お外にもあまり出ません。ですから婚約者のわがままとして毎日一緒にお散歩していただきますの。
さらに好き嫌いの激しく栄養の偏った食事をされるイーサン様のために、毎日お料理を作り、手ずから食べさせて差し上げました。
そして、お勉強や読書が大好きなイーサン様に付き合って、前世の記憶をフル活用してイーサン様にお勉強を教えて差し上げましたわ。
魔法が大好きなイーサン様が思う存分魔法実験を出来るように、私の屋敷の広大な庭を貸し出したりもしました。これに関しては庭師と両親の説得が大変でしたが。
そして子供ならではの距離感の近さで思う存分ベタベタぺろぺろラブラブいちゃいちゃしまくりながら、たくさんの愛情を持ってイーサン様の成長を見守り続けました。挫折?トラウマ?私がしっかりとフラグを折りましたわ!病弱なためご両親から期待もされず愛されないことがイーサン様の挫折やトラウマですわ。ですから、毎日の散歩と手料理で健康体を目指し、その優れた学力と魔力をご両親に披露して、さらに私からもこれでもかというほど愛情を捧げばほら、問題ありませんでしょう?
ー…
イーサン様を愛で始めてから早十年。もう十五歳になってしまいましたわ。学園生活も始まりますし、そろそろ潮時なのかしら…。
「イヴ、何を考えているの?」
「イーサン様!すみません、少し考え事をしておりましたの」
「だめだよ。イヴは僕のことだけを見て、僕だけのことを考えていればいいんだ」
かっ…かっこいい!さすがイーサン様…!素敵!でも何故かしら?なんだかとてもヤンデレっぽいセリフだったような…?イーサン様は甘々溺愛王子系のはずよね?
「わかりましたわ」
「…よかった。じゃあ早速今日のお散歩に行こうか」
にこり、と微笑むイーサン様。ああ、まるで花が咲くようなその笑顔!愛しておりますわ!
「…ふふ、イヴは本当に僕の笑顔が好きだね?」
「はい!当然ですわ!その微笑みを独占することが出来るなんて感激ですわ!幸せですわ!」
「ふふ。嬉しいよ、ありがとう。僕もイヴのような可憐で愛らしい子が婚約者だなんてとても幸せだよ」
ああ、なんて可愛らしい方なのかしら!神々しいくらいだわ!例え振られる運命だとしても、私は最後まで貴方を愛し続けますわ!
…そして学園生活が始まり、物語は幕を開けました。ヒロインさんも入学してきましたわ。しかし、ヒロインさんは何故か全ての攻略対象者に言い寄っていますわ。おかしいですわね。この乙女ゲームは逆ハーレムルートはないし、何人もの攻略対象者と良い仲になると破滅エンドに向かうのに。もしかしてヒロインさん、なにも知らないのかしら?転生者にしろ、そうでないにしろこのまま行くと破滅しますわよ?
ただ、イーサン様は何故か他の攻略対象者の方々と違って、ヒロインさんに見向きもされなかったようですわ。何故かしら?もちろん嬉しいけれど。
そしてまあ予想通りというか、ゲームのシナリオ通りヒロインさんの悪い噂…男グセの悪さですわね、それはすぐに噂になりましたわ。それどころか、何股もかけていたためイーサン様以外の他の攻略対象者の方々からも蛇蝎の如く嫌われているようですわ。そして、何人もの婚約者のいる貴族令息に粉をかけたことを重く見た校長先生から退学処分を受けましたわ。
イーサン様以外の攻略対象者の方々とその婚約者様方は喧嘩になったり、婚約の破棄を申し出されたりと色々あったようですが、最終的に少なくとも表向きは穏やかに元鞘に収まったご様子ですわ。
「いやぁ、嵐のような女性だったね。退学処分になってくれてほっとしたよ」
「イーサン様も言い寄られてましたものね」
「僕には愛するイヴがいるから君とそういう関係になることはない。…とはっきり断ったんだけどね」
「イーサン様…!嬉しいですわ!」
「ふふ、本当のことだもの」
「イーサン様!大好きですわ!」
「僕は愛してるよ」
こうして学園内は平和になり、今日も今日とて私はイーサン様を愛でる毎日。幸せですわ。




