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~小日向さんちの、菜原さんっ!~ prologue

 

 朝のリビング――――――



 開け放ったカーテンから朝日が優しく差し込んでいる。



 「菜原さん、どう?学校は慣れた?」


 テーブルの目の前の椅子にちょこんと腰かけ、パジャマ姿のまま朝食のパンとイチゴジャムを手にニコニコしている女の子へ話しかけた。


 「うん!ぜんぜん大丈夫!みんな優しいし、ぜんぜん大変じゃないから!」


 「そう。それは良い事ね。」


 私こと―――小日向こひなた 結奈ゆいなは高校3年の新学期早々、成り行きで突然女の子と2人暮らしを始める事になってしまった。

 目の前でパンにイチゴジャムを塗りたくっている女の子は、菜原はなら 愛乃あいの。明るい茶色のふんわりした髪を普段は二つに結っている(今は寝起きなので下ろしたままだ)。小柄な割に元気いっぱいな風だけど、この子は隠れて一人、ひっそりと泣くタイプだった。現に最初に出会った時がそうだった。


 「今日は、ゆいなさんも学校、行くんですよね?」


 「ええ。行くわよ?」


 「じゃあ一緒に行けますね♪」


 歩いて10分掛からない距離にある学校なのだから、わざわざ連れ立って行く必要もない気がするけど、この子はどうやらヒヨコ的な性格で、誰かしらにひょこひょこ着いて行きたがるらしかった。


 「でね、昨日授業中ね―――――」


 ウキウキと意気揚々話を続ける彼女の手元を見た私は、ふと気づいた。


 「ちょっと待ちなさい。」


 「えっ、何ですか?」


 彼女がジャムの瓶に突っ込もうとしていたナイフを、手で制して止めた。


 「ちょっと!さっき開けたばかりのジャムがもう半分ないじゃない!!どうして使い過ぎ・・・・・」


 と、言う間にパンに乗ったイチゴジャムがでろ~んと彼女の白くて細い指に垂れた。


 「いつもわたし、これくらい塗ってるんだけどなぁ・・・・・・」


 シュンとなった彼女を見て若干の罪悪感を抱くが、今後の為に私は折れない。


 「いい??ウチでは節約しなさい。ジャムはスプーン"1杯"までよ。全く・・・生活費だって無限にあるわけじゃないんだからねっ?」


 「はーい。今度からスプーン"いっぱい"にしますね~~」


 家にあまり帰る事のない両親だったから、ここ1~2年は一人暮らしのような状態を続けていた。

 父さんからの仕送りはあれど、申し訳ないからと贅沢の類はしてこなかった。


 「いいから。早く食べ終わって支度しなさい?」


 「はぁ~~~い。」


 ダラダラ食事を続ける彼女を急かして、私は登校の準備を始めた―――――





 「・・・・・・。」


 遅い。洗面所に籠ったきり、あの子が出て来る気配がない。始業まで20分を切っている。


 「ちょっと菜原さん!遅くなるなら置いていくわよ!?」


 リビングから呼びかけると、「う~~~ん」と気のない返事が返ってくる。


 気になって様子を見に行くと、肩下まで長い髪をヘアアイロンで巻きながら、歯を磨いている最中だった。


 「あと、5分れ、いきまふぅ~~~~」


 「・・・・・・・早くしてね?」


 それから彼女が戻ってきたのは15分以上経ってからだった――――――




 「菜原さん、あなた――――・・・パジャマでどうやって外出るのよ。」


 「あっっっ!!!」


 そして玄関のドアを2人で出たのが、―――――――始業時刻丁度だった。






 ~~~~~―――――――~~~~~



 私学故に、高3は必要分のみ出席だけとれば、受験の為に授業のない学校だった。


 登校早々、手持ち無沙汰になってしまった私は、帰りに連れ立って誰かしらと駅前に遊びに行く事もせず(金銭的に交友費を節約しているだけ。友達ちゃんといるわよ?)、行く当てもなく構内をフラフラしていた。


 「(あいつのとこ寄ってみるか・・・)」


 ふと、顔の浮かんだ知り合いの所に顔を出す事にした―――――




 「ここの学校事務室で働いている女性―――――森宮もりみやかな子。年齢は20代前半で、菜原さんより更に小柄な体形をしている。しかし、誰にでも噛みつきそうな気の強い性格は、その見た目には可愛らしい外見からは推し量る事は難しかった。」


 「ねぇ、・・・誰に向かって話してるの?言葉にトゲがあるんだけど。」


 生徒手帳を紛失した、落とし物をした、新しい教材を受け取りたい等の生徒が何かとお世話になる事の多い学校事務室。お馴染みのドアを開けると、見慣れた顔が丁度よっこらよっこら資料の束を重たそうに、その小柄な体で運んでいた。


 「あんた、可愛い顔してんのに男子のファンとか詰めかけてきそうだけど―――――、そんな事ないわね。ガッカリだわ。」


 「あんね!今、授・業・中・・・!今ぶらぶらしてる方がおかしいの!」


 ウチの学校は元々女子高だったのが、少子化の影響で数年前から男子も募集を掛けて共学化を進めていた。

 反対意見も出るかと思いきや、長年女子ばかりでイマイチ新しい風が吹かない事に皆退屈していたのか、教員も生徒も喜んでこれに賛成した。しかし、いざ募集を掛けても漫画の様な”女子高に男子一人!(若しくは数人)”という境遇は現実には中々受け入れられず、そもそも進学校ではあるのだけど、男子の進学実績はゼロな訳で。人間関係や学業の観点から、男子生徒側からは嫌厭される傾向にあったようだ。


 「(今は男子も3割ちょっといるけど、もっと前は全然だったもんなぁ・・・)」


 別に色恋沙汰を期待している訳ではなくても、男子が混ざっていれば不思議と気持ちが落ち着いた。

 どうにも女子だけの人間関係というのが私は苦手だった。


 「ねえ!!人の話聞いてんの!!」


 「えっ?」


 考え事をしていたら、大きな声で呼び戻されてしまった。


 「わたし、仕事中だから。もう行くね?」


 「ああ、悪かったわ。引き留めてしまって。」


 「別に?あと、その・・・・・・・」


 「?」


 時折、小柄で気が強い様で押しの弱いこの女性、森宮かな子は何かを言いたそうにして口籠ってしまう事があった。こういう時は助け船を出してあげる事にしている。


 「何?また泊まりに来ないかって?」


 「・・・・・・。ぅ、ぅん。そう...なんだけど...。・・・・・・今日は?・・・来る?」


 彼女も一人でアパートに住んでいる。両親は別の所に暮らしていて、こっちの地元には父方のお爺さんが一人で暮らしている。

 人肌恋しくなる時があるのか、単に寂しくなるのか、変にどこかのヤサ男でも部屋に連れ込む癖を付けられては良くないと思い、時々泊まりに行く時があった。


 そうは言われても、今は菜原さんが家にいる関係で私は以前のように家を空ける事に後ろ髪引かれる思いだった。彼女の両親から宜しく言い伝えられているので、大事に育てられてきただろう彼女を粗末に扱う気は起きなかった。

 そして、その事をかな子も知っていて、どういう訳かそれを知らせてから機嫌が悪い。以前にも増して私に向ける言葉に混ざるトゲが少し割増しになった。


 「・・・・・・・それって、また菜原さんいるから?」


 「まぁそうなるわね。」


 「・・・あっそ。」


 ふいっとそっぽを向かれてしまった。私が泊まりに来ないと何故そんなに怒るのか。


 「じゃあ、ウチにあんたが泊まりに来ればいいじゃない。」


 「ええっ!?さ、さんにんで・・・?さ、んにん・・・!?」


 頭の中でどんなお花畑が広がっているか分からないが、顔を赤らめて目をパチクリさせている。


 「じゃ。もう行くから。」


 数年来の友人にちょっかいを掛けて満足した私は家へ帰る事にした。






 夕暮れの校舎――――


 2階の窓、明かりが所々落ちている校舎の暗がりから、校舎を出ていく生徒を見つめる人影があった。

 黒い長い髪、その前髪の合間から目を覗かせている。


 『.................。フフフ、キョウハ ダレガアソンデ クレル ノ カシラ』


 スッと窓際から離れる人影。足音もなく誰にも気づかれない。それは当然だった。


 その人影の足先に靴は履かれていなかった。裸足な訳でもなく、ただ単に―――――


 



 透明で見えない脚が足音を立てる事はない。それだけだった。

~あとがき~


 初めましての方、初めまして。初めましてでない方、こんばんわぁ~~♪


 みなみと申しますmm 普段はイラスト練習してたり、pixivに二次創作小説上げたりしていまして、最近になってもっと文字を書く練習をしよう!と思い立ちました。

 二次創作だとやっぱり内輪でその題材を周知しているファンの方が読者層って前提があるせいか、間口が狭い世界になってしまうなって感じました。

 以前別の題材を書こうと思って、ここの小説家になろう様にアカウント作っていたのですが、結局日の目を見ずにそのまま・・・。なので!昔に書いてそのままになっているお話をリファインして書き直してみよう!と。

 別に何かと戦ったり、派手な魔法が出て来る訳じゃなく、重い設定が隠れている訳でもなく。日常に流れる毎日をそのまま書いていくようなお話になっています。評判悪くなりそうで今からコワイっ笑


 このお話で普段とはまた少し違った雰囲気していますが、お暇な時にでも読みにいらして貰えたら嬉しいな~と思います。

 ではでは~~また次の更新で~~♪

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