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66話 群青嵐の大海蛇龍 その3

「このっ……!」


 マロンの身体強化もあり、超人的な速度で立ち回りつつ、チョコの矢で牽制を仕掛ける。


『煩わしい、ちょこまかと……!』


「あたしも忘れないでよねっ!」


 流れ込む海水を抑えるサフィアに代わって、今度はミアが飛び出してきた。

 ミアはブロンズソードを構え、刺突で大海蛇龍シーサーペントの鱗の隙間を狙っているようだった。

 それに気がついた大海蛇龍シーサーペントは魔力で水の防壁を張るが、ミアの【抗魔力】スキルの前にそれらは即座に崩れ去った。


「ふんっ!」


 ミアの一閃が、大海蛇龍シーサーペントの巨躯に突き刺さった。

 奴の体が苦悶で跳ね上がった。


『グゥッ!?』


「入った!」


『貴様ァ!?』


 怒号を上げる大海蛇龍シーサーペントが体をくねらせる直前、ミアは刺さったままのブロンズソードを手放し、遺跡の床を蹴って大きく下がった。

 そして背後のシルリアへと手を伸ばし、一言。


「シルリアちゃん、次を!」


「どうぞっ!」


 シルリアは背負っている籠からブロンズソードを一本手に取り、ミアへと投げ渡した。

 そう、今回シルリアには、ミアのブロンズソードの予備を背負ってもらっている。

 ミアの機動力を損ねないための策だったが、悪くはないと見える。


「たとえ大柄なドラゴンでも、小回りならあたしの方が上よっ!」


『小癪な……!』


 続くミアの猛攻に、大海蛇龍シーサーペントも厄介と見たのか。

 大海蛇龍シーサーペントは口腔に魔力を貯め、次のブレスを放つ予備動作を取った。


「させるか……!」


 俺はクロスボウを構え、大海蛇龍シーサーペントの体を狙って三発の矢を放つ。

 いずれもまとも当たれば戦闘不能は必至なレベルの魔力矢だったが、大海蛇龍シーサーペントは体をくねらせ、水の防壁を操って全て避け切った。


「ラルド、ブレスが来るぞ!」


「主さま!?」


「くっ……!?」


 サフィアとアーリトーレの叫びにどうすべきかと冷や汗が流れた須臾、手の中のマロンが叫んだ


「ご主人さま、わたしを投げてください! 魔力噴出で大海蛇龍シーサーペントを押し倒します!」


「……っ!」


 言われたのと同時、俺は【精霊剣】ブロンズソードを投擲した。

 強化された身体能力を総動員して、大海蛇龍シーサーペントの胴を狙う。

 そしてマロンが奴の体に到達した刹那、その剣身から膨大な魔力を放って、大海蛇龍シーサーペントの巨躯を真後ろへと吹き飛ばしてしまった。


書籍版、全国書店にて発売中です。

よろしくお願いします!

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