65話 群青嵐の大海蛇龍 その2
──奴の狙いはどこにある、単なる悪あがきか!?
そう感じた時には、ブレスによって開いた遺跡の大穴から、大量の海水が流れ込んできていた。
「この第七遺跡の付近は海! まさかこいつ、遺跡最奥部を水没させるつもりか!?」
「かかっ! 現代においても、人間は地上でなければ息が続かぬと見える。なればこそ、大海原の水攻めは苦しかろう!」
「おのれ……っ!」
サフィアはラプテリウスの結界を、大海蛇龍から外し、海水の吹き出す大穴へと向ける。
「サフィアさま、わたくしも!」
アーリトーレも元水の【聖剣】らしく、精霊の姿に戻ってサフィアの方へ駆け寄り、能力を行使して流れ込む海水を押し留めにかかった。
すると海水の噴出は結界によって押し留められたが、二人が完全に無防備になってしまう。
『友を庇い水を止めるか。しかし我の前で隙を晒すとは、それ即ち死を意味するっ!』
大海蛇龍の前足が大きく振りかぶられ、サフィアを狙う。
──そうはさせるか!
「頼むぞチョコ!」
「うんっ!」
俺はクロスボウの姿となったチョコを握り、大海蛇龍へと構える。
「大海蛇龍! ここから先は俺が相手だっ!」
大海蛇龍の前足に狙いを定めて引き金を引くと、超魔力の矢が放たれる。
ドウン! と轟音を響かせ放たれた矢は、咄嗟に回避行動を取った大海蛇龍の背の甲殻の一部を抉り、消滅させていた。
『ガアアァ!? なっ、二体目の精霊!? クロスボウ型の【聖剣】とは珍妙な!?』
「【聖剣】じゃなくて【精霊剣】だ! マロン!」
「行きましょう!」
右手にブロンズソードとなったマロンを握り、左手にクロスボウのチョコを握る。
同時、マロンの身体強化能力が発現し、俺の力を底上げしていく。
──反撃開始だ!
「ふんっ!」
『素早いっ! 武器を構えながらも、鳥のように軽やかに飛ぶとは!?』
地を蹴って、一瞬で大海蛇龍の眼前まで跳躍。
そのままブロンズソードで奴の顎を切り上げる……が。
「硬い……!? ログレイアの結界並みか!」
大海蛇龍の鱗は、あろうことかログレイアの結界を彷彿とさせるほどの硬度を誇っていた。
奴の体は衝撃で横倒しになったが、これは倒すのに骨が折れそうだ。
大昔、アーリトーレや他の【聖剣】までもがこのドラゴンを鎮めるために持ち出された訳である。
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