64話 群青嵐の大海蛇龍 その1
『ふんっ!』
大海蛇龍が大きく尾を振りかぶった刹那、手の中のアーリトーレが輝いた。
「させませんわっ!」
アーリトーレの放った魔力光は、正方形状の巨大結界を展開し、大海蛇龍を丸ごと包み込む。
その内部に水を練って生成した剣、槍、矢、斧などを展開し、大海蛇龍を取り囲んだ。
「串刺しにして差し上げますわ!」
「これがアーリトーレの結界か……!」
彼女は【精霊剣】となった今も、【聖剣】だった時の結界展開能力は保持しているらしい。
そしてその結界の能力は見たところ、結界内部に生み出した水を自在に操り、形状を武器などに変化させるものであると。
「これなら大海蛇龍も!」
マロンが言った刹那、結界内の水の武装が大海蛇龍に殺到した。
四方八方からの飽和攻撃、大海蛇龍が躱しきることは不可能……だが。
『大海蛇龍を前に水による攻撃など、あくびが出るわっ!』
大海蛇龍は体を大きくくねらせ、飛来した水の武具を体中の鱗と甲殻で弾き飛ばしてしまった。
その上、結界をも破壊して大きく飛び上がった。
「くっ、わたくしの結界を突き破るなんて!? 以前よりも成長したようですわね!」
『龍とは、常に成長を続ける強者故!』
遺跡の天井すれすれを旋回する大海蛇龍は、口腔に魔力をため出した。
ドラゴンの放つ奥義にして全てを無に帰す破壊攻撃、ブレスだ。
見るのは初めてだが、あんな超巨大な魔力の塊が噂に聞くブレスでなければ何なのか。
しかしこちら側も、そうやすやすと撃たせはしない。
「押し潰せ、ラプテリウス!!」
サフィアは【聖剣】ラプテリウスを抜き、大海蛇龍を結界内に閉じ込める。
すると超重力結界が権能を発揮し、奴を地に叩きつけた。
衝撃で遺跡の各所にひび割れが走り、部屋を大きく揺らした。
『ぐっ、小癪な小娘がァ! この我の動きを阻んで見せるか!!』
「大海蛇龍が何か! こちらは遺跡の内部にて、何度もドラゴンを討伐している身。S級冒険者【ミスリルの聖剣姫】の二つ名にかけて、貴様をこの場で叩き斬る!」
『面白い……! その【聖剣】、お前もこの時代の勇者かっ! 相手にとって不足なし、心踊るぞ勇者よ!!』
遺跡の床に叩きつけられていた大海蛇龍はあろうことか、その状態で強引にブレスを溜め、迷いなく斜め下へと放った。
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