61話 遺跡のケルベロス
俺たちは閃光で混乱するケルベロスをかわしながら、一気にその奥へと駆け抜けた。
「倒すならまだしも、足止めで済むなら楽チンだね!」
「うむ。しかし妾としてはガツンと一発かましたかった……」
駆けるミアに並走するプラムが、何やら不穏な言葉を発していた。
けれどその直後、首の一つがたまたま目をつむっていたのか、閃光弾を食らわなかった一体が後ろから追いかけてきた。
「仕方がない、プラム!」
「任されよっ!」
モーニングスターとなって俺の手の中に入ったプラム。
思い切り腕を振ると、モーニングスターの鎖部分が伸び、鉄球がケルベロスの胴にぶち当たる。
同時に【精霊剣】としての能力が発現し、鉄球と接触しているケルベロスの胴が爆ぜた。
『『『UOOOOOOONNNN!!??』』』
体を跳ね飛ばすほどの衝撃に晒されたケルベロスは、遠吠えのような悲鳴をあげながら倒れた。
しかしこのままでは、後ろから体勢を立て直した何体ものケルベロスに追われかねない……そこで。
「ふんっ!」
モーニングスターの鉄球部分を天井に打ち付けて爆破し、降ってきた瓦礫で通路を塞ぐ。
帰りは【転移】を使う以上、こうして通路を使えなくしてしまっても問題はないだろう。
「流石の早業だな……。手練れの冒険者でも、あそこまで素早く立ち回れない」
「【精霊剣】を使っているから、俺もこれくらいは頑張れるよ」
サフィアにそう返すと、彼女は「先を急ごう」と再び歩みを進めた。
それから先、魔物の襲撃は散発的に起こった。
オーガ、グリフォン、果ては遺跡内の泉から小さなクラーケンまで……。
出会った瞬間、サフィアのラプテリウスか、チョコの矢で遠距離から仕留めていったが、それでもまともにやり合えば激戦は必至だっただろう。
「この遺跡、強い魔物しかいないっていうのは本当だな……」
冒険者たちが攻略に手を焼く訳だし、こちらも人知を超えた【精霊剣】がなければどうなっていたか。
「でも、ラルド兄さんや精霊たちが一緒なら、あっという間に魔物も退けられるし。これなら、最初から一緒に来て貰えばよかったよ。そうなればあたしのブロンズソードだって、十本も折られずに済んだのに」
肩を落とすミアに、俺は苦笑した。
けれど実際、この遺跡に来ればブロンズソード十本を失ったというミアの話も納得できるというものだった。
むしろブロンズソード十本だけであんな魔物たちとやり合っていたミアの技量は、相当に高い方だろう。
「主さま。この先が最奥部ですが……ご注意を。凄まじい魔力ですわ、間違いなく遺跡の守護者が待ち受けているかと」
そう告げたアーリトーレは、【精霊剣】インディゴスピアーとなって俺の手に収まった。
全国書店にて本作の書籍版が発売中です!
本日もTSUTAYAランキングに載っていました、好評のようでとても嬉しく思います。
書店で見かけた際はよろしくお願いします!




