48話 港町での合流
今回はあとがきにてお知らせがあります。
宿を確保した俺たちは、それからミアたちを探すことにした。
この港町を拠点にしている以上、冒険者たちは固まっていると思うので、すぐに見つかると思ったのだが……。
「おぉ〜! 美味しそうなお魚〜!」
「マスター、妾はあっちの貝柱焼きが美味そうだと思うぞ!」
……温泉街ガイアナの時と同様、チョコやプラムが目を輝かせてその辺の屋台を覗いていて、捜索どころではなかった。
「あらあら、二人とも大はしゃぎですね。……とはいえわたしも、少々つまみたいものがありまして……」
「マ、マロンまで……」
精霊三人はもう、屋台から漂う美味そうな匂いに引き寄せられていた。
「まあ、今回の遠征は旅行も兼ねているし、現地で美味そうなものを食べるのもいいかな。それでシルリアはどうする? 何か欲しいものは?」
「えーっと、それならわたしは……あちらの冷えた果実がいいです。あれ、わたしの故郷にも昔、売っていたんですよ」
シルリアの視線の先には、氷水で果実を丸ごと冷やしている屋台があった。
このあたりの気候は暖かなので、火照った体にはちょうどいいかもしれない。
「なら、俺もあれにしよっかな」
それから俺は、各々が欲しいと言っていたものを購入していく。
マロンはイカ焼き、チョコは魚の串焼き、プラムは貝柱焼き、シルリアは俺と一緒に果物と言った感じだった。
……港町だからか、精霊たちは海鮮焼きばかりだった。
「俺たちの住んでた街、周りに海はなかったし。ああいう海の幸はやっぱり気になったのか?」
精霊三人に聞くと、三人はもくもくと食べながら頷いた。
しかし三人が食べている焼き物、タレも香ばしそうで結構美味そうだな……後で俺も買ってみよう。
そう思いつつ、俺はシルリアと一緒に黄色っぽい果実にかぶりついた。
口に入れた途端、柑橘系の爽やかな匂いと、程よく冷えた甘い果汁が口いっぱいに広がった。
「……甘い! すっきりした甘さだな。ちなみにこれ、この辺じゃあまり見ない果物だけど、なんて名前なんだ?」
「シーウナって果物です。この国ではあまり馴染みがないかもですが、外国では結構盛んに作られているので、こういう港町ではよく見かけるんです」
「そっか、外国産なのか。そりゃ珍しいわけだ」
それから俺たちは小腹を満たし、今度こそミアたちを探しに行った。
この港町もそう広くないし、五人で探せばすぐに見つかりそうな気がした。
……けれど。
「……案外、見つからないな」
昼過ぎになっても、冒険者たちは見当たらない。
というか、一体どこの宿に泊まっているのか。
冒険者たちがまとめて泊まれるほど大きな宿なんて、限られていると思うのだが……。
それに冒険者が出払っているにしても、何人かは見かけてもいいだろうに。
困り果てていると、その時ふと、海の方から大きな声が上がった。
「おーい、船が戻ったぞー!」とか「補給物資を積み込むぞー!」とか。
そういう掛け声は、港町の方ではあまり珍しくもないかもしれない。
しかしその声音は、よく聞いたことのある類いのものに感じた。
「今の、もしかして冒険者の声か……?」
「力強かったですし、そうかもしれません。ご主人さま、向かいますか?」
「行こう!」
俺たちは冒険者を探していた町の中央から、海の方へと向かった。
それから見えてきた光景に、俺は足を止めた。
「おお! 冒険者の船がこんなにも……!!」
プラムが呟いたように、いくつもの大型船が港に現れていた。
そして船にはそれぞれ、各所に冒険者ギルドごとの紋章が大きく彫られていた。
「まさかギルドが船を持っていて、それで移動していたなんてな……」
第七遺跡アーリトーレとこの港町が少し離れているのは気になっていたが、まさか船を使って冒険者がいっぺんに移動していたとは。
それによく考えたら、アーリトーレは海沿いにある遺跡でもある。
「それで、肝心のミアたちのギルドは?」
少し見回せば、ギルド【風精の翼】の紋章……一対の翼の紋章が彫られた船が見つかった。
そこからぞろぞろと疲れた表情の冒険者が降りてくるが、その中に。
「う、うえぇ……。酔った、思い切り船酔いしちゃった……うぅっ……」
「ミア、しっかりしろ。ラルドがいたら笑われているぞ」
サフィアに支えられつつ、ふらつきながら下船してくるミアの姿があった。
「……そういえば、ミアって船に弱いとか前に聞いた気が……」
なんとも締まらない様子だが、無事なことに間違いはない。
俺たちはミアやサフィアの元へ、そのまま向かっていった。
【お知らせ】
本作『武器職人と精霊剣の無双譚』の書籍化が決定いたしました!
読者の皆さま、本当にありがとうございます。
レーベルさまなどは、また後日に改めて発表いたします。
書籍化が決定した本作を、今後も応援していただけますと幸いです。




